共鳴の記憶:過ぎ去りし思い出
ユキさんの授業は魔法の授業だけじゃなくて、算数の授業や料理の授業、裁縫や後衛としての立ち回りの授業等、様々なジャンルで授業を行っていた。
ノイズが走った場面転換があるせいで、断片的にしか聞けなかったが、比較的わかりやすい授業だったと思う。
「別に気にしないで、私は教えるのが好きなだけなの…まあ、知識が広く浅いせいで、専門的な事は教えられないんだけど…取り敢えず掛け算割り算はわかったかな?」
「恩返しをしたいのなら、教わった知識を忘れないで欲しい…そしたら離れ離れになってしまっても、その知識がきっと再び繋がる縁となるから…と言うのはカッコつけすぎたかしら?」
「こうすれば、美味しい料理が作れるようになるよ、これを覚えておけば万が一お腹空いてもなんとかなるよ!」
様々なユキさんの言葉を聞いていく、フェルの視点はユキさんの顔をみたり、ノートを書くことに集中してたりと、忙しなかった。
そして授業を終える度に、ユキとフェルは周辺が花畑の所でティータイムを行っていた。
授業のシーンとティータイムのシーンが交互に切り替わるが、ティータイムが挟む度に様々なお菓子が目の前に並べられるのは結構な飯テロだ…ユキさんが作ったのだろうか?
あとある時を境にユキさんの装備が良い物に更新されて、白の統一感ある皮製の装備に変わった…腕のいい防具職人に一式揃えて貰ったのだろう。
そこで新たな登場人物が現れた…赤髪の男性で魔法で巨剣を浮かせて、背負ってる妖精だった。
真面目そうな表情で、急所だけ金属で覆われた胸当てがぴしっと決まっている。
「お二人共元気そうですね」
「あ、カギロイ、こんにちはーお散歩の時位はその剣置いていけばいいのに」
「いえ、この剣が側にないと、こう足が取れたような気分になってしまって、手放せないんですよ…ユキ様、それに私の使命は鍵を守ることです、武器として振るえる権利がある以上、手元に置いておくのが個人的に1番安全だと思うのです」
「相変わらずの答えね、カギロイもお茶を飲みませんか?以前の授業で色々と手伝ってくれたお礼もまだしていませんし、作りたてのお菓子もありますよ」
「ええ、いただきましょう」
そう、カギロイだ…あの修復した壊れた妖精門の鍵…火光の前の持ち主だ。
フェルはオオムカデに刺さってた金属片を見て、取り返したいと言っていた…今なら鑑定眼…いや、それがなくても鍛冶屋として分かる、オオムカデに刺さっていた金属片がカギロイの乗っている巨剣の一部だということに…。
「あらあら、集まって楽しそー私も混ぜてくださるかしら?」
「はい、勿論です!カギロイもいいよね?」
「ええ、フェルのお母様を拒む理由はございません」
フェルのお母さんもティータイムに参加して、4人で楽しげに談笑している、フェルの声が聞こえないのが残念だ。
だが見てて結構しんどいな…先が分からなければほのぼのしたシーンなのだが、フェルにとっては決して戻ることなき過ぎ去りし思い出だ…。
ザザザと再び視界にノイズが埋め尽くし、場面変化する、夕焼けに照らされた花畑、そこで椅子に座ってユキさんが目標を掲げていた。
「私は学校を卒業したら教師という仕事に付きたいの…まあ、報酬安いし、休みが殆どない、酷い職場しかないって、噂しかきかないのだけど…それでも私は物事を教えるのが好きなの…応援してくれる?」
夕日に照らされて白い髪がオレンジ色に見える。
写真として残したくシーンだった。
フェルならきっと、応援します!ユキさんなら絶対になれます!教師という仕事に!とか言いそうだな。
「まあ、教師になるならフェルが博識になるくらいに沢山教えないとね?」
そう微笑むユキさん、その後ザザザー!と視界にノイズがはしり、ユキさんの姿は見えなくなった。
そうして、自分の前にシステム画面が現れた。