現実での会話、妥協と理想
お昼ご飯を食べた後、妹の友奈に問い詰められた。
「で何があったの?随分と難しそうな顔してたけど、どんな無茶振りナンバークエストが来たの?」
「あーまあ、フェルに絶対言わないと誓うならナンバークエストの事を教えるよ…というかなんで分かるの?」
「言わないよ、兄妹喧嘩なんて勘弁だし…なんで分かったかは…顔見れば丸分かりだよ」
頷いた友奈にユリが居なくなって、リオアがいた間の状況とサードクエストの事を教える。
どうするか悩みすぎて、頭が回らないが、なんとかサードクエストの事を伝える。
「フェルの方針と反するナンバークエスト…厄介だね、失敗ペナルティがないけど、実質フェルの知り合いが人質になってるようなものだし…お兄ちゃんが隠し事なんて、ナンバークエストもかなりの無茶振りをいうね」
「…まあ、普段隠し事殆どしないからな…隠し通せる自信はない、でもフェルの知り合いは助けたい…だから可能なら、ナンバークエストの事を知らせたくない」
くそ、成功報酬が変えがきく物だったら、喜んで全部フェルに伝えるんだが…。
「うーん、最初はフェルとの仲に軋みを生まないために全部言ったほうが良いと言おうとしたけど、フェルの知り合いも助けるとなると…まずはフェルに納得してもらう事が大事だよ、フェルは鍵を3つ作る事を提示したのなら、他の方法で行ける事を伝えてしっかり納得してもらわないと…」
「難しいな…フェルは自分の強さで故郷を襲った化け物と戦い、負ける可能性を危惧している…あの口調からして、そもそも今の強さで故郷に行く事は消極的かもしれない」
そういうと友奈は難しい顔をした。
「なら妥協したほうが良いかもしれないよ、仮に失敗条件を一切に満たさずにフェルの故郷に行ったとしても、死んだ場合のリスタートを私のホームから変更できない影響で、一人で絶対に死ねない戦いになるんでしょ?はっきり言って生産職特化がやる難易度じゃないよ?」
そうだ、そこが最大の難点かもしれない、リーダーさんが中級生産職とは思えない強さとクエストで評価してもらえたが、あくまで中級生産職としての強さだ…過信なんて出来るわけない。
もしもフェルの故郷を襲った存在が上級クラス前提の強さだった場合、妖精火門で倒せる可能性はあっても極めて危険な戦いだ…。
「妥協か…」
妥協するとしたら何処だ?他のプレイヤーを連れて行くか…妖精門の鍵を作って自分の力を高めるべきか…。
少なくともフェルにナンバークエストの事を伝えるは、妥協しなくて良いはずだ…。
「まあ、じっくり考えたほうがいいよ…お兄ちゃんのナンバークエストは難易度高そうだし…」
「ああ、そうする…今回のナンバークエストに時間制限があるわけ…いや、どうなんだ?フェルの故郷にNPCが居るのは確定してるんだよな、時間をかけるほどヤバいのかな?」
「お兄ちゃん、また理想を求めてるよ、多分だけどそこら辺は気にしてたら、どうしょうもないよ…ゲームにのめり込むのもいいけど、程々にね?まあ、お兄ちゃんをゲーム世界に招いた、私が言えた事じゃないどね」
そう言って、友奈はやりたい事があると自分の部屋に戻っていった。
……はっきり言って、このまま部屋で考えていても考えは纏まる気がしない…。
「おーい錬那!ちょっと手伝ってほしい事があるんだが」
「今いくー!」
父親の声が聞こえる、丁度いい気分転換に、親の手伝いをするか…。
単調な作業をしたり、鉄を叩けば少しは考えが纏まるだろう。
その後父親の手伝いをしたのだが、トラブルが生じた結果、忙しくなり、夕御飯まで手伝って、今日の午後以降はファンタジーフリーダムをせずに、疲れで眠る事になった。
疲れ果ててしまったが、少し頭がスッキリした…。
とりあえず強くなろう…他のプレイヤーに頼りすぎるのは良くない気がする…。
万が一離れ離れとかされた場合、最終的に必要なのは自分の力だからな…。
それにカギロイからフェルを守って欲しいと意思を託されたのに、他者に頼りすぎるのも駄目だよな。
次の鍵を作るかどうかはレシピを見直した後で考えよう。
そう考えを纏めながら、自分は眠りに落ちた。