修復せよ妖精門の鍵!
スタート押すと体から力が抜けると同時に、一気に部屋の温度が上がる…そして熱されてるせいなのか、元からなのか分からないが、白交じりの蒼い金属が金床に運ばれてきた、近くに居るだけで体が焼けそうだ…。
「リジェネレート、フェアリーウィッシュ、スリップガード、パワーアップ、エレメントブースト!」
「ハイパーエール!リジェエール!バイタルエール!ヒートエール!」
「フレイムガード、ハンドアップ、ヒールサークル」
自分のHPバーの下に大量の強化アイコンが並ぶ、自分の下にあるリーダーさんのHPバーの下にも、一部の強化アイコンが並んでいる。
フレイムガードなどはリーダーさんが唱えてくれたやつだ…。
足下に魔法陣が展開されているが、リーダーが使ったヒールサークルの効果だろう。
「行くぞ!」
ハンマーを振り下ろすと蒼い火花が飛び散る…現実ではあり得ない光景に何だが笑えてくる、何故かどのくらいの力でハンマーを振るえばいいのかわかるのだ…こんな金属見たことないのに。
しかしさっき一振りで腕がビリビリきて、反動ダメージかHPバーが半減になった…だがサポートのお陰でぐんぐん回復していく…。
一定の速度で打ち込んで行けば、HP全損して失敗する事は無いはずだ。
なら後は強く武器の形をイメージするだけだ、望む形は刃物…金属を切り分けるくらいに鋭い刃…。
「くう…」
「フェル、大丈夫?」
「大丈夫です、リオア達のサポートがあるのでまだ作業できます!それに相性が悪い分近くで魔力を込めないと、失敗するので離れるわけには行きません!レンナさんはレンナさんのやるべき事に集中してください!」
自分と同じ位の距離で金属に魔力を注ぐフェル…かなり厳しいみたいだが、完成を早める為にハンマーを振るう速度を上げる訳には行かない…。
速度を上げたら自分がハンマーを振った反動ダメージで倒れて、鍛冶が失敗してしまう。
というかジリジリと肌が焼かれている気がする…。
「ちょっとレンナ、炎が二人を包むほど凄いんだけど大丈夫!?ポーションかけた方がいい!?」
「なんとか!ポーションは金属にかかったらだめだから投げないで!」
リオアの声が聞こえるが、自分がどう見えてるかは分からない、今叩いてる鍵から目を逸らすと、失敗すると鍛冶屋としての直感があるのでひたすらハンマーを振るう。
早すぎたら、ハンマーを振るう反動でHPが尽きる、遅すぎたら叩く回数が少なくなって失敗する…現実の鍛冶とは全く違う、タイミングがシビアな作業だ。
だが、だんだんと金属は剣のような形に近づいてきた…。
体が熱で焼けて、精神が消耗されてきて、頭が真っ白になりかけるが、気合を入れて再び形作る武器を思い描く…鋭い刃物、金属を切り分ける鋭さ…折れぬ強さ、形は片手でも持てそうな剣…!
「レンナさん!最後の一手は本気で!」
「わかった!これでどうだ!!」
全力の一振りを放つ、命を吹き込むように、フェルの努力を無駄にしないように、決して二度と鍵が壊れないように…。
「フェル……をお願いします、私の欠片で守って…」
すると知らない男性の声が聴こえた…その声は懇願の思いが強く込められていた、誰かはわからない…。
もしかしたら破損した妖精門の鍵の持ち主の声だったのだろうか?声は一言しか聞こえてこなかった。
その後仕上げアイコンが出てきたのでタッチすると全身から一気に力が抜ける…HPバーは一気になくなるが、0にならず1で止まり、自分の周辺に謎のバリアが数秒展開された…バリアが消える頃にはHPバーは満タンになっていた。
「あ、ファイナルターミナルが発動した…こういうの時でも使えるんだな…」
リーダーさんがそうつぶやく。
どうやらまだ海賊の宝の入口でかけてもらった魔法が生きていたみたいだ…便利だな…ファイナルターミナル…。
「フェル大丈夫…?」
「は、はい…凄く熱かったですけど生きてます…」
フェルの無事を確認する…オオムカデ戦と違って、火傷をしている様子はない…良かった。
金床の上には、刃が透き通った赤い水晶で出来た、片手で持てる剣…武器の種類で言うとファルシオンが完成していた。
自分はなんとか倒れずに、妖精門の鍵を修復する事に成功したのだった。