誕生日から始まる新たな始まり
カンカンカン、熱く吹きすさぶ火が間近で吹きすさぶ中、ハンマーを振るい、真っ赤な鉄を叩く、少し離れた所に父親が真剣な表情で見つめていた。
「よっと…」
ジューと鉄を冷やし、焼入れを済ませ、研磨をする…その結果一つの包丁が出来た。
長年父親の技術を見てきて、真似てきたがだんだん様になっているはずだ…?
「確認おねがいします」
「………」
父親は黙って包丁を見て、持ち上げる。
自分は黙ってそれを見ていた。
「65点位だな」
「まだまだか…」
父親の言葉に落胆する、それを見た父親は苦笑した。
「いや、高校生でこれはなかなかだからな?そう簡単に職人の領域に来られたら、父親として立つ瀬がなくなるんだからな」
「早く家業を継げるようになりたいんだけどな…」
「高一で高望みし過ぎだ…全く、家業を継いでくれるのは嬉しいが、学生の内はもっと遊んでいても良いんだぞ?」
自分は鍛冶屋の父親と漫画編集者の母親の元に生まれた長男、錬那だ、幼い頃から父親の仕事に憧れを抱き、鍛冶屋を目指している。
「何はともあれ、今日はここまでだ…今日は友奈の誕生日だろ?プレゼントの準備はできてるか?」
「一応新しいアクセサリーは作ってあるよ…」
友奈は自分の妹だ、どちらかといえばクール系で口数は少ない子だが、世間一般的には美少女と分類されていて、優しくて可愛い、自慢の妹だ。
兄妹仲は良好で、友達に嫉妬される位だ…まあ、その友達は姉が暴君というか、気が強くて尻に敷かれているという感じだが…。
そばにあった自作のアクセサリーを手に取る、星をテーマにしたデザインで、割りと自信作だ。
「…本当、鍛冶屋よりは装飾の道の仕事の方が向いてるんじゃないか?」
「こっちは趣味だよ、少しやる程度ならいいけど、毎日は勘弁だ」
そういうと、父親は鍛冶屋のほうがしんどいと思うんだがな…と不思議そうにつぶやいた。
30分後、家で妹の誕生パーティーが始まった。
友奈が誕生日ケーキの火を消して、それぞれプレゼントを渡す、両親は化粧品、新しい服をプレゼントしていた、最後に自分が渡す番になった。
「はい、誕生おめでとう友奈」
「ありがとう………あの、お兄ちゃん…後もう一つ欲しいものがあるんだけどいいかな?」
「うん?珍しいな、友奈がそんな事言うなんて、何だ?言ってくれ」
友奈はあんまりこっちにわがままを言わない子だ、なら叶えてあげたいと思ったのだ。
「………ゲームでその腕振るって!」
「????????????」
兄妹として珍しい形だが、友奈はゲームをするが、自分は殆どゲームをしない…故に頭の中は?で埋め尽くされた。