第5話 ブランコ
「リラは普段何をしているの?」
ルーシィ様の何気ないこの質問に私は何を答えるべきか悩んでいました。なぜなら私は特に趣味がないからです。
「そうですね。強いて言えば読書ですね。見聞を広げる為にもいいですから。」
「どんな本がオススメかしら?」
どうやら興味を持ってくれた様なので一安心します。そして私は本棚へと向かいお勧めの本をルーシィ様へ渡すのでした。
「これは童話かしら?」
「ええ、面白いですよ。」
「意外だわ。もっとしっかりした活字を読んでいるのかと思ってたわ。」
「もちろんそういうのも読みます。ですが、童話は疲れた心をほぐしてくれる様な心温まる物が多いのです。今のルーシィには良いと思い選びました。」
「あら、リアには私が疲れてる様に見えてるのね。」
「ええ、少し……お疲れの様に思えます。」
婚約破棄したあの夜から3日でルーシィ様の環境は大きく変わりました。これは私からの少しの気遣いの様な物……ルーシィ様は少し不満げな表情をしていましたが、本を開いて読んでくださいました。
内容は恋愛の童話。好きな子に好きと言えず別れてしまい後悔する子が再びその子に会いに行くという童話です。少し長いので私も隣で本を読む事にします。
「ねぇ、リア……」
「なんですか?」
「これ続きは?」
「もう読み終えたのですか?続きはありませんよ。そこでお終いです。」
「えー!勿体ない。ようやく会えたのに。」
「会えたから良いんじゃないですか?会えないまま終わるより会えて終わった方がいいじゃないですか。」
「そうだけど!なんかこの後2人はどうするのか気にならない?」
「それはもちろん気にはなりますが……でもそこは読者の想像にお任せしているのでしょう。」
「私は本当にハッピーエンドならこの2人の結婚式まで見てみたかったわ。」
「ルーシィ、これはあくまでも童話です。童話は読者にいろんな可能性を広げさせてくれるものです。100人読んで100人の結末が作られる。そういうのを想像するのも童話の楽しみでございますよ。」
「そういうものかしらね?まぁでも面白かったわ。他にどんな本があるのかしら?」
「そうですね。この冒険譚とかはどうですか?」
私は次の本をルーシィ様に渡すのでした。
こうして半日を過ぎる頃ルーシィ様は急に本を閉じて立ち上がりました。
「あの……いかがなさいました?」
「いえ、少し体が凝ったのよ。ずっと同じ体勢で本を読んでいたものだから。」
1つ伸びをしながら話すルーシィ様。私も本を閉じて少し伸びをします。
「それでしたら少し庭を散歩しませんか?」
「いいわね。案内はよろしくね。」
「もちろんです。」
そうして私たちは外へと出ます。外はよく晴れていて。庭の緑も青々としていました。
「暑いわねー。」
「ですね。木陰で休みますか?」
「まだ歩き出して数分も経ってないわよ。休むわけないでしょ?」
「ふふふ。そうですね。」
それからルーシィ様と歩きながら他愛のない話をします。先程読んでいた本の感想やルーシィ様の両親を説得した時の話などなど。ルーシィ様がずっと話しているのでした。聞いてるだけでも楽しいのですが。そこは言葉のキャッチボールです。私も反応して話をします。
「あっ……」
ふいに声を上げたルーシィ様に私はルーシィ様の方を見た。そしてルーシィ様は真っ直ぐ何かを見ていた為、私はその視線の先へと目をやるとそこにはブランコがありました。
「乗りますか?」
「……私もう19歳よ。そんなのに乗る歳じゃ……」
「では、私が乗るので押して下さい。」
「なっ!」
私はルーシィ様が有無を言う前にブランコへと走って行きます。後ろから待ちなさいと聞こえましたが、聞こえないフリをしました。後で怒られるかもしれません。
「では、押して下さい。」
「リア……覚えてなさい。」
悪態をついても私の背中を押して私はブランコを漕ぎ始めます。そして後ろで押してくれながらルーシィ様が話しかけてきました。
「このブランコは手作りなの?」
「はい、私が小さい頃に父上が作ってくれました。」
「そうなのね。良いお父様ね。」
「はい。自慢の父上と母上です。」
そして私はすぐにルーシィ様と交代するのでした。
「はい、次はルーシィ様の番ですよ。」
「えっ?私はいいわよ。」
「ダメですよ。私は今押して貰ったので次はルーシィ様の番ですよ。」
「そ、そこまて言われたら仕方ないわね。」
ルーシィ様は気づいてない様ですが結構目が笑っていました。最初にブランコを見つけた時からやりたそうだったのは分かっていたのですんなりと座って頂けました。
「それでは押しますよ。」
そうして私は座ってるルーシィ様の背中を軽く押しました。
「おぉー……」
「ブランコは初めてですか?」
「ええ、いつも遠くから見てたの……なかなか友達と呼べる方もいなかったからね。」
「では、私が初めての友達ですね。」
私がそう言うとルーシィ様は目を丸くされた。そしてクスクスと笑い出します。
「ふふふ。そうね。それなら初めての友達が初めての親友に、そして初めての私の彼女となるわね。」
「し、親友はいいですが、まだ彼女になるとは言ってません!」
「ふふふ。可愛いわね。本当に……」
私はあからさまなふくれっつらをしました。絶対こちらの心が見えない様に。でないとゲームとして面白くないのだから。
それから少しの時間私たちは交代でブランコに乗るのでした。
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