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幻影異変  作者: シラネ
オープニング
3/7

知らざる者

暗い。寒い。寂しい。


そんなことを覚えたのを最後、私は眠っていた。



―――。―――。




だれ?そこの人達はだれ?もしかして巫女様?


深淵へと潜っていた私に光が差し込み、徐々にその2人の会話が大きくなってくる。



そして、遂に



私は



闇から抜け出せたのだった。



「……。」

「……。」



目の前にいたのは私が探し求めていた巫女様ではなく、おしぼりを持った老夫と金髪の少女だった。



「ようやく起きたか。巫女様。」

「……え、ええっ……と?ここは?」

「ここは人里だよ!」


私が起きた事に安堵したかのような男と少女。


「しっかし、アンタは見つけてから5日は寝てらっしゃった。見つけた時も冷えきってたし、ダメかと思ったぞ。」

「い、5日……?」

「わたしとおやじでずっと看病してたんだ!」

「あ、ありがとう……。」


にこにこと笑いかけてくる金髪の少女。

ずっと暗い森を走り回っていたせいか彼女がまるで光を具現化させていたのかと感じてしまっていた。


「……さぁて、アンタも起きた事だし、忙しくなるな。新しい巫女様よ?」

「ねぇ、新しい巫女様って?私はまだ見習いなのだけれど……。」

「何言ってるんだ?アンタはとっくに巫女になってるぞ?」

「え?」

「さぁ、頑張れ。先代が遺した子。博麗の巫女よ。」
















「……。変な夢で起こされる日も増えたわねぇ。」


日に日に寒さは勢いを増し、日がまだ出ていないこの時間に外を見ると、雪が降り積もってる様子も確認出来るようになった。


「……。」


布団にくるまったまま移動してほんの少しだけ襖を開けてみると、暗闇に慣れた目には少し厳しい程の光が差し込む。我慢して台所がある方を見ると、トタトタと足音が聞こえると同時に何かの根菜を切っていたり、鍋を混ぜていたり、米を炊いていたりしている弟子がいたのだった。



寒いだろうに、本当にご苦労様。妖夢とか咲夜とかも同じような事をしているのかもしれないけれど、こういう存在は本当にありがたいわね。声に出して言うのは避けたいけれど。


そのように思いながら襖をゆっくりと閉め、先ほどまで横になっていた敷布団に移動するのだった。


「……巫女様?なに布団にくるまりながら移動しているのですか?まるで大きい芋虫みたいになってますよ。」


朝から通常通りの霊奈。朝ですよ~。と言いながら障子を開けていくのは恒例だった。

外を見ると空は少しずつ黄色くなり始め、もうそろそろ日の出という時間だった。









「……辛い。」

「え、そんなにですか?」


食えない程ではない。むしろ美味しいとは思うが、何か微妙に塩辛いのだ。

なんとなく、霊奈のこの少し辛めの朝食で目が覚めるのも恒例と化してきている気がするが、霊奈は首を傾げながら焼魚をほじる。




朝ご飯を食べ、幾らかの家事をした後は各々の自由時間となる。

大抵の私の行動は縁側に座ってお茶を飲んで日々の暇な時間を過ごすことが多いのだが今日は違った。


「巫女様、お願いします。」


幣を構え、私と向き合う博麗の巫女候補様は修行として私と手合わせしたいと願ってきた。


「……仕方ないわね。さっさと次の世代に仕事任せたいからやるか。」


針を数本掴み取り、既に飛ばされてきた御札を穿ち、相殺させる。

針は砕け、塵となった紙片が二人の間でゆっくりと地面に落ちる。


そして、霊奈との修行という名の戦闘は始まるのだった。




少しの間地上で針と御札がぶつかり合うだけだったが、戦いながら様子を伺っていた霊奈が飛び上がり、空中戦となる。



「……行きますよ、巫女様!」

「さっさとやりなさいよ。」

「『霊符 封魔符乱舞』!!!」


飛ばしてくる御札の量が更に増え、己の身の周りに球状に御札を羅列させていく。そして、私に近づき攻撃を更に激化させるという大胆な行動を取ってくる。


私の『夢符 退魔符乱舞』とは名前は似ているものの霊奈の使ってくるそれとは性能が違う。

私が使うのは退魔の力がある御札を凝縮しそれを前方の敵に飛ばして爆発させるというもの。本当の意味でのボムみたいなものだが、霊奈のそれにはそういう効果はない。

しかし、距離が十分に離れていない戦闘を続けるというのは中々骨が折れるものだ。


「……半人前の癖に厄介なものを持ってるわね。」

「こうでもしないと勝てる気配はしないので。」


今まで相殺させていたのが徐々に捌ききれなくなり、幣で弾いたり、かすったりするのが出てきた。このままではらちが明かない。


「『夢符 封魔陣』!!!」

「ッ!」


霊奈の足元に展開させた魔方陣から結界を立ち上げさせ、中に居るモノを浄化させる。

本来ならば妖怪などに対して用いるものだが、結界の範囲が広いこともあって私のスペルの中でも使用頻度が高いもの。

大抵の輩はこれだけで戦闘不能になるのだが……霊奈は違っていた。


「結界が壊された……。」


封魔陣の効力が無くなり、結界から出された霊奈自身はほとんど無傷。変わったのは封魔符乱舞の影響で発生していた球状に並んだ御札が消えていたことと息が絶え絶えなところぐらいだった。

封魔陣の攻撃は全て霊奈の封魔符乱舞が肩代わりするような形で受け止められていたのだった。


「攻撃の数は増えるわ、ダメージは肩代わりするわ……。アンタ、どこでそんなの覚えたのよ?」

「巫女様だって先代様から全てを模倣していた訳では無いでしょう?そういうことです。」

「……先代様は私にはあまり教えてくれなかったから。ほとんど覚えているものと思い付きよ。……それよりも修行、再開するわよ。」

「いや、これ以上はちょっと……。」

「何よ。」

「……封魔符乱舞って消費が激しくて……もう力が出せないんです。」

「終わるの早くない?」

「……すみません。」


どうやらさっきの奴は強い代わりにそれなりの代償があるらしい。封魔符乱舞が解除されてから霊奈の攻撃と言えるようなものはなく、私が放つ針を相殺させるのが限界らしい。

修行としてはこれ以上続けても意味がなくなってくるので、切り上げることにした。時間的にはそんなに経ってはいないが霊奈の体力は高くはないために無理をさせてはいけないからだ。





地上に降り立ち、ふらつきながらも竹箒を手に境内に散らばった針の残骸を片そうとする霊奈を止め、うわんに任せ、霊奈を自室に戻らせた。

霊奈は博麗の巫女としての能力は十分に持ち合わせているかと言われればそうではない。行使する力が彼女の肉体や精神、技術などの能力に追い付いていないというのが現状。

力を使いすぎて壊れてしまうのが一番いけない。あの子の能力を伸ばすためには限界まで努力してしっかりと休む事が大事。

実際に私がやったことだから。

少し前の私の状況を思い出してしまったが、過去は過去。いつまでも囚われる訳にはいかない。

そんなことを思いながら今日は私が掃除に炊事を行うことにした。




昼前、先の修行で針を飛ばしすぎたと後悔している。霊奈の御札は発火してなくなるから良いものの、私の針は自然に消滅するような代物ではない。


「……今度から勝手に風化する針でも使ってみようかしら?」


そんな言葉が出るほどに境内には針や欠片が散らばりまくっていたのだ。


「あら、随分と自然に優しそうなものを使おうとしているのね。」


……今、厄介者の声が聞こえた気がしたが構わず掃除することにした。


「……ねえ、無視は酷くないかしら?」

「……そちらこそ、こんな真っ昼間から外出して保護者に怒られないの?徹昼なんかして。」

「昼夜逆転生活なんて前々からよ。」


そんな極めて健康そうな生活リズムをとっている彼女、レミリア・スカーレットは日傘をさしながら空から降り立った。


「……この神社の階段やら石畳やらがあるのがバカらしくなってくるわね。」

「霊夢がそれを言うの?」

「それよりも何しに来たのよ。」

「……。」


私は管理者だから良いのだ。参拝客の為にいつも掃除している道が使われないことが悲しいだけ。日々の苦労も分かってくれないこいつに腹が立ちそうだったが、なんとか抑えた。


「……散歩したかったのよ。」

「へぇ。前はウチに入り浸っていてようやく解放されたと思ったらアンタの妹がやってきて?よっぽどアンタら吸血鬼って暇なのね。」

「ま、たまには家族総出で神社にお参りしたくなったからこうして来てあげたわけ。」

「そうそう。お姉様の言うとおり。この神社は参拝客を突っ返すの?」


レミリアの事をお姉様なんて言いながら歩き、一礼して鳥居を潜ってきたたのはレミリアの妹、フランドール・スカーレットだった。


「あら?アンタの妹はちゃんと歩いて鳥居を潜ってるじゃない。お姉さまが手本を示さなくて良いの?」

「私は良いのよ。手本を見せるのはフランの方だわ。」

「ん?どういうこと?」


確かにフランは律儀に鳥居を潜る前に一礼をしており、石畳の横を歩いている。破壊や遊ぶことしか考えない本来の彼女ならばそんなことは絶対にしない。


「……?ねぇ、フランの横に誰かいるの?」

「よく気づいたわね。もうバレちゃってるらしいから出て来て良いわよ。」


フランの横にかすかに妖気を感じた私は疑問を覚え、レミリアに問う。そんな問いにレミリアは素直に答え、フランの横に隠れている人物を呼んだのだった。


「……!」


レミリアが呼んだ途端に透明な色をした蝙蝠がフランの横に集まり、人の形を作る。

そして出てきたそいつはフランにしがみつく形で私の様子を伺っていた。


「……お姉様。……お姉ちゃん。」

おどおどしながら姉と呼んだ二人の顔を確かめるその子。

初見で思った感想は、かわいいだった。


「紹介するわ。この子はリヴァ・スカーレット。私の弟よ。」

「え、アンタら弟なんていたの?」

「これが居たのよ。可愛いでしょ。」


身長も体格もさほどこの吸血鬼二人と変わらないこの子は端から見れば女の子のようにも見える。銀と水色が混ざったような髪色が凄くキレイだった。


「リヴァ、霊夢にご挨拶して?」

「は、はじめまして……リヴァ・スカーレットです……。」


フランの背中から顔だけを覗かせてこちらに挨拶してくる吸血鬼の姿は見た目こそ姉二人に劣らないものの行動はまるで異なり、初見の私は不覚にも可愛らしいと思ってしまった。


その後、フランがお手本を見せるような形で参拝し、リヴァがそれを倣うというような形でお参りした。

なんで吸血鬼が神社に?とかの疑問は鼻から無視し、レミリア達と少し話してから彼女ら家族は帰っていった。


大抵、あの姉妹がやって来ると面倒な事が起きたりするものだが、今日は何も起きなかったのでひとまず安心した。

にしてもあの男の子は姉二人に似つかわしくない程に大人しかったと感じた。

レミリア・スカーレット

紅魔館の主であり、吸血鬼。少食。

吸血鬼異変や紅霧異変を引き起こした人物。日光には弱いが十字架には強い。

武器として有名なのはグングニル(本物ではない。)

(東方Project作品キャラクター)


フランドール・スカーレット

レミリアの妹。よくフランと呼ばれる事が多い。

破壊欲望が強い。(もしくは力の自制が効かずに破壊してしまう。)

翼が特徴的で蝙蝠のようなものではなく色とりどりの結晶が幾つかぶら下がったようなもの。

武器として有名なのはレーヴァテイン(本物ではない。)

(東方Project作品キャラクター)


リヴァ・スカーレット

フランドールの弟。

姉二人と比べると大人しい。

翼が特徴的で蒼く鱗がある。

(オリジナルキャラクター)

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