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君はその言葉を知らない  作者: 三日月と饅頭
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2話 偽善者



「なんだ、なんだ・・・。銃・・・、銃声だよな・・・、今の・・・。」


 そう、座り込んだ鈴音の横に俺は駆け寄った。

「何が、起きているんだ・・・・、この仮想空間で・・・。」


 俺は、外に走り出してドアを思いっきり開けた。そして、銃声が聞こえたところに走っていく。窓から見えるくらいのところだ。近い。今、俺は自分でもよくわからない感情にむしばわっている。


 あぁ、なんだろう。俺はその場所につくと、こう、声に出した。


「おかしい、おかしい。なんで、なんで・・・。」


 そういって、その場にある、最悪のものを抱えた。それは、目に焼き付けたくない、見たくもない瞬間だった。


ーーーーー人を・・・殺してる・・・。ーーーーーー


 目線の先にあるものは頭を撃ち抜かれた一人の少女。俺はその光景を見てはいけない気がした。なぜだろう。何か、吐き気がする。何なんだ。


 行き場のない怒り、それが俺を襲った。知っているわけもないが、なにか片隅に残る、顔。ただひたすらにもがく、その瞬間、少女の意識は途絶えた。


 黒の服を着た男たちは、行くぞ、そういい、その場を立ち去っていく。振り向きもせず立ち去る男たちを見て、あいつらが・・・。そう、察する。少女を抱え、地面に血が広がり、排水口に流れていく。


ーーーーー怖い、怖い怖い怖い怖い・・・。ーーーーー


 そう、心のなかで怖がってしまう。怖いという感情と、なぜこいつを助けようとしているのかという感情が滲むようにして、心にしみる。だが決して、その2つの感情は混ざることはなかった。


 このとき、俺は普通であれば考えられるようなことを考えられなかった。


ーーーーーその時だったーーーーー



「協力者がいるぞ。その女の協力者だ。そいつも殺せ!。」


「え・・・。」


 そう、雄叫びのような声で叫ぶ人がいた。そして、泣き叫ぶ子供も。その子供は繰り返し、あの女の子・・・、怖い。そういった。


 そして、周りの人の殺気がすべて俺に向いているのがわかった。見つめられている、いつもだったら嬉しい(変態ではない)はずだが、今日の視線は、感じるだけで死にたくなるようなものだ。


 俺は気にしなかった。いや違う、気にする暇がなかった。ただ、目の前にいる人間を救いたい、その一心で行動をする。


 こいつが、犯罪者でも、一般人でも。これは、偽善なのだろうか。俺は、偽善者なのだろうか。なぁ、教えてくれよ、かみさまぁ。


 そう思いながらも大声で、


「今すぐ、救急車を・・・。」


 まだ生きているその確証はない。死体なのかわからない。だが、少女は妙に冷たくなっていた。その時・・・、


「達也、やめて!その子を、離して!。」


「鈴音・・・、嘘だろ・・・、お前までそんな事言うのか!。」


 優しさとは何なのだろうと、そう考える。それもそうだろう。鈴音が、こんな事を言うのだから。普通であれば、こいつは助ける選択肢を選ぶはずだ。なのに・・・。


 そして気づく。誰もこいつを救おうとしていないことに・・・。 この雰囲気からして、こいつは犯罪者なのか・・・。来ている白衣に血が滲む。犯罪者、それでもこんな事する必要はないはずだ。


 俺は一度少女を地面に置き立ち上がるあたり一面血の海だ。何が起きているのか正直理解できなかった。鈴音は、俺の手を強く握りしめる。


 次の瞬間、鈴音は状況が理解できない俺を強く引っ張り、家まで強引に連れて行った。


「何するんだ!鈴音!人が死ぬかもしれないんだぞ!お前は、それをほっとけとでも言うのか!」


 そう俺は、怒鳴り散らした。普段は冷静沈着な俺が、急に切れだして、鈴音も少し動揺している。すると、俺には理解できない言葉を、鈴音は呟いた。


「もうやめて・・・、やめて・・・。」


「は?」


 思わずそう口に出してしまった。そして、俺は強く拳を握った。そして言う。そう、鈴音に。


「お前は、人を見殺しにするのか!」


 鈴音は、ドアの前で俺を止めるように大声で


「死にたくない、まだ、達也と一緒に生きたい、生きたいから・・・。お願い・・・。もうやめて、私はいいけど、達也に死なれたら、私どうしたらいいかわかんない・・・。だから、だから、もう、やめて・・・。」


 こいつは何をいっているんだ。俺はそう、心のなかで思う。俺だって死ぬ気はない。死ぬような動作もしていない。更に、まだこいつとずっといるつもりだ。死ぬまでかもしれない。なのになぜ、こいつはそう口にしたのか理解ができなかった。


 だが、俺は一つある可能性を考える。もしも・・・。いやそんなこと、ありえるはずが・・・。

 そう考えていたその時だった。俺は・・・、今まで感じてこなかった死を、その場面を見て、感じた。可能性が当たってしまったのだ。何もかも・・・。



ーーーーーバァンーーーーー


 ドアが強引に開かれた。二人で真剣に話していたため、玄関にいたのにも関わらず、家の前に人が来ていたことに気が付かなかった。その人とは、黒い服を着た・・・、さっきと同じやつだ。あの少女を殺したやつと同じやつだ。


 そして、もう一度考える。その可能性に・・・。そして俺はこう、声に出した。


「詰み・・・、かよ・・・。こりゃ、無理ゲーだな。協力者、そうか、そうか。協力者かぁ。」


 俺は鈴音の方を見る。


「はぁ、ゴメンな。鈴音。こんなことにも気が付かなくて。」


 上をむいて俺は絶望した。だが、決してその感情は外には出さなかった。周りから見ると、ただ上を向いているだけだと思われるな、これ・・・。


「こうなるって、普通だったらわかるよな。ハハハ、ハ、ハ、ハハ・・・。」


 男たちの中の一人が、銃を上に向け


「柊達也、そしてその隣りにいる、達也に守られている、女。世界の平和のために、いま、ここで、射殺する。」


 さて何人いるだろうか。黒い服を着た男たちは、みな銃を構えている。その中のひとりが、上に向けていた銃をおろし、俺たちに銃口を向けた。


「あぁ、ひどすぎるにも程があるだろう。こんな、か弱い二人を相手に、ゴツい武装をした人たち八人で、いや、九人で攻め込んできて・・・。しかも銃かよ・・・。」


 悟った。俺の死を。もうわかっている。俺がここで死ぬことなんて・・・。ここで、俺が正直にしてない、そう答えても、嘘だとか命乞いだとか言われて終わりだろう。少しは調べてくれればいいものの。急に、乗り込んできて、あの感じは協力者だろうと、今考えてみるとめっちゃ理不尽だ。でも、不思議と生きたいとは思わなかった。それは、もう詰んでいるから。もうこの状況からぬけだすのは無理だ。


 ただし、それは俺限定だ。鈴音には少し可能性が残っている。ならば、鈴音が、今後も元気に生きられるように俺が、相手を誘導するだけだ。


 舐めるなよ。


ーーーーーー1度世界一の頭脳と呼ばれたこの俺をーーーーー


「達也、私達・・・、死んじゃうのかなぁ。」


「大丈夫だ。鈴音。少なくともお前は。生かせるからな、お前を・・・。」


「なかなか、仲がいいじゃないか。イイね。まぁ、ふたりとも死ぬんだけど・・・。」


 そして、俺は男の方を向いた。


「まるで悪役、いや、悪役だな・・・。少しお願いがある・・・。2つお願いがある・・・。」


 男は、少し顔を歪ませて


「何だ。まぁ、死ぬ前だし聞いてやろう。そしたら、容赦なくお前らを射殺する。」


「ありがとう。それだったら、こいつは撃たないでくれ。こいつは、友人でも、家族でもない。あの現場を見ていた人だ。」


「え!」


 鈴音がそういうのが視界の端っこに見える。


「聞いただろ、ドアの向こうで口論になっていたの。それは、こいつがなんであいつを助けたんだって乗り込んできたんだよ。まぁ、正確には助けられていないんだがな。はっきりといってやったよ。あいつの協力者だって。そしたら、お前らがやってきて、こいつは怖がってしがみついた。そうゆうことだ。」


 そして、言う。


「こいつは何も関係ないんだ。なぁ、無意味な殺生は嫌いだろ。」


 男は、黙り込み、数秒立ってから、不快な笑みを浮かべていった。


「しょうがない。その願い、聞いてやろう。まぁ、その理由に文句ない、そういったほうがいいな。・・・、もう一つはなんだ・・・。」


「あいつ、あの少女は、なんの罪を起こしたんだ・・・。」


「おい、みっともないぞ。今になって、私、何も知りませんアピールか。くだらない。そんなのに答えても意味がない。その答えはお前が一番わかっているからだ。」


「そうか、じゃあ、殺せ。俺を。間違っても、こいつは殺すなよ。」


「達也・・・、何をして・・・。ん。」


 俺は鈴音の口を人差し指で軽く押さえた。


(今はちょっと静かにしてて。大丈夫だから。)


 そう小声で言うと、鈴音は目から大量の涙を流した。


「じゃぁ、早く殺せ。あんまりこの感情を味わいたくないんでな。」


 そして男は俺に銃口を向けた。


「また、あの世でな・・・。柊・・・。」


 そして、男は、引き金を引いた・・・。


ーーーーーバァァァァァァァンーーーーー


  俺の顔に血が散る。バタン。そういう音がした。今日で人生が終わりだと考えると泣けてくる。


 なんとなく撃たれるときに目をつぶっていた。死んでみて初めて感じた。意外と痛みを感じないのだと。


 ・・・、いや、これ、本当に撃たれているのか。そっと目を開ける。

 

「倒れてない・・・。」


 そっと、体を触る。


「撃たれてない・・・。」


 じゃぁ、この血は、どこから・・・・。その時、俺の脳は最悪なことを考えた。ふと、横を見る。


「鈴音?・・・・。おい・・・・、嘘だろ・・・。鈴音!、返事、返事、してくれ・・・、よ・・・。」


 そこには、鈴音の死体が転がっていた・・・。何度も、何度も。何度も、何度も揺さぶる・・・。だが、返事はない。俺の心から、押さえきれない怒りが飛び出してくる。 


 拳に力をいれ、なんとか俺が暴走しないように抑え込んだ。

 

ーーーーー貴様、貴様、貴様、きさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ーーーーーー



「おい、おい、おいおいおいおいおいおいおいおい!!!!!」


 嘘だ、嘘だ。俺はそういうことしかできなくなっていた・・・。


「おい、おい、おい、嘘だ!絶対に嘘だ!」


「その事実を目の当たりにしてもか。」


 男が言う。流石にもう怒りが押さえられん。もういっそのこと、そのまま、銃で・・・。まぁ、運命はどっちにしろ同じなんだけど・・・。


 目の前を見る。すると男は・・・、ゲラゲラと笑っていた。


「おい、何してくれてんだ!や、約束と違うじゃないか!」

 

 俺はそう、鈴音を抱きしめながらいった。


「その反応だと、俺の予測は、正しかったようだなぁ。ハハハ・・・。」


「なに・・・、を・・・。な・・・。」


「ハハハ。ハハ。世界最高の犯罪者の仲間を、そう簡単に殺すわけ無いだろう。最高の悲しみを与えてやったまでだ。ハハハ。ハハハハハ。世界、最高のだ!ハハ。」


 そして、ニヤッと男は笑う。そして、その結果はお前が一番、その結果はお前が一番知っていたくせに。そして言う。


ーーーーーー愚かだなーーーーーーー



「どうだ、お前の大切な人を殺された感覚は!ハハハッ。これは、俺からじゃない。世界からの復讐なんだよ!バーカ。」


 目の前が、真っ白になった。どうせ殺されるんだ。そして、俺は男の方を見る。すると、何か少し悲しげな、いや、苦しいような顔をしている。そして、男は、歯ぎしりをした。 


 ガリガリ、その音が止まると、まぁいい。そう男は言って、鈴音を直視した。ゴミを見るような視線で・・・。


 「狂ってる、なんて狂ってるんだ!こんなにも狂ってるんなんて!なんで・・・、世界は・・・、こんなにも・・・、狂っているんだ・・・。」


 男は俺を見ていった。その視線は、鈴音を見るときと同じく、ゴミを見るような視線・・・。


「この世界が狂ってるんなんて、俺が生まれる前からだ。とても理不尽で、クソな世界。今気づいたのか。ハハ。まぁ、いいさ。お前なら、もう気づいてると思ったんだがな・・・。フフ。俺の任務は、お前を殺すこと。・・・、お前たちか・・・。まぁ、いい間違えにこだわってるわけじゃないしな。ハハ、十分に楽しませてもらったぜ・・・。ハハハッ。笑いが、止まらないぜ・・・。」


 そして男は、俺に銃口を向ける・・・。


「最後に・・・、一つだけいいか・・・。」


「何だ?命乞いなら無用だ。お前は殺す。」


「いや違う・・・。一つ聞きたいことがあってな・・・。」


 男は、銃を両手持ちから片手持ちに変え、髪の毛を掻いた。


「何だ。早くいえ。俺は、お前を殺すことが任務だっていったよな。」


「あぁ、そうだな・・・。だったら、なんで、あんな、さっき・・・。虚しい・・・、いや、悲しい、何かを失うような顔をしたんだ・・・。」


 男は、頭を抱え、お前にそれを話すメリットがない。そういって、次のようにいった。


「ハハ。メリットもなけりゃ、リスクも有る。フフ、話すわけ無いだろう。ってゆうか、その理由はお前が一番・・・、わかっているさ・・・。」


 そういって、銃を、両手で持つ。


「まぁ、その理由が知りたい、その一心で神様にお願いすれば、幽霊にしてくれるかもな。死んだら好きなだけ俺を呪え・・・。」


 俺は、はぁ、そう大きなため息をついた。


「おぉ、こんな状況でため息かい・・・。生意気だね・・・。」


 その時、俺は自分が泣いていることに気がついた。しょっぱい・・・。口に入るくらいだ。顔は無だが、心は無じゃないってか・・・。


 なに泣きなんだろう・・・。死が怖いから・・・、いや、そんな単純ではない・・・。だったら・・・。


「あぁ、お前を・・・、呪ってやるよ・・・。いつまでも・・・、どこまでも・・・。この涙の意味がわかるまでな!」


「ハハ。生意気な。できるなら、やってみるがいい。せいぜい天国でもがくんだな。ハハ。」


 そして男は、銃を強く、握りしめた・・・。


「さよなら。柊・・・。」


ーーーーーバァァァァンーーーーー


 その瞬間、男の持っている銃からは弾丸が打ち出され、俺の顔に近づいてくるのがわかった。


ーーーーー次の瞬間、俺の意識はシャットダウンしたーーーーー


 死んでみて、気づいたことがある。痛い。今までに感じた痛みの中で、一番、死の痛みは痛かった。舐めてはいけないなぁ・・・、死を・・・。まぁ、今はもう全く・・・。


 何が間違っていたのだろう。最初っから、俺は違う、そう言っとくべきだったか。俺にはもうわからない。もう二度と。


 だが一つだけわかったことがある・・・。


ーーーーーこの世界は・・・・、狂ってるーーーーー


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