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不愛想なあなた(ミリア視点)

 領地から戻ったルシアンは凄く冷たい……。

 私を毛嫌いしているような口調で凛としたあの美しい碧眼は……私を冷めたように見る。


 でも、私は気づいたわ。あんな言い方をしながらも優しく抱きしめてくれる。

 訳はわからないけれど、美男になったルシアンは彼なりにかっこよくしているつもりかもしれない。

 となると、かわいい.....。

 冷たくされても、私には効かないわ。だって、私は冷たい令嬢よ。素直になれない気持ちは痛いほど分かる。



 けれど、私まで冷たくしていたら、私達が近づく事はない。ならば私が甘えるしかない……で 出来るかしらそんなこと。もっとルシアンに触れたい、たくさんおしゃべりしたいのに……。



 今日はお母様とお茶の後は何も無いから書庫へ行ってみよう。

 ルシアンは朝から堅苦しい儀会へ行ったし、私も将来役に立つよう知識を詰め込まなくちゃ。



 古びた木の扉を押すとギーと音がする。これ油差したほうが良いわ。


 窓からの日差しが光のカーテンのように差し込む。壁一面に敷き詰められた本は圧巻。反対側も。

 そういえば、ルシアンは学園の中庭でよく恋の掟みたいな本を読んでいた。

 よくあんな恥ずかしい題名の本を持ち歩いていたわね。


 年季の入った机にぽつりと置かれたままの本がある。

 誰か読んでいたのかしら。ん?魔術の記録って、そうかお母様もルシアンも魔術師の呪いをかけられた子孫だから。

 私は机に向かい椅子にかけ、その本を開く。

 あら?誰かが折り曲げていたページが自然と開いた。ブックマーカーとか無かったのかしら。

 ページを折るなんて……。


 そう思いつつもそのページの見出しにハッとした。

 ――――言葉を失う呪いを解くには?

 心とは裏腹の言葉を発するまたは、言葉自体を失う呪を解くには

 銀の器に――――


 もしかして、ルシアンはまた呪いを?!


「何をしている」


 ルシアンの厳しい声が響いた。

 そうよ、私は甘えなくちゃ。


「ルシアンっ。本を読みたくなって……勝手に入っては駄目でしたか」


「いや、勝手にしろ。私には関係ない。」

 と知らんぷりをするルシアンは、書庫を出るわけでも無く本を見る訳でもなくじっとしている。

 窓からの光に黄金の髪を煌めかせ、涼しい顔で……少し眉間にシワを寄せて、眩しいのかしら……カッコいい。


 私はゆっくりと彼の前まで歩み寄る。

「ルシアン」

 何を言ったら良いかわからず結局ただ私は抱きついた。


「離れろ、今すぐ私から離れなさい。何をしている」


 でも、ルシアン……そんな力強く抱きしめられたら離れられないわ……おかしな人。


 結局抱き合ったまま私達は話をする。


「明日カイセルが宮殿に来るようにと。私達二人を呼んでいる」

「……え 何かされやしませんか。どうしよう」

「知らない。自分の身は自分で守れ」

 と呟いてルシアンは私をぎゅっと強く抱きしめた。

 お願い、もしこれが呪いならば……私を包んでくれるこの優しい腕は奪わないで。

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