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00045話「夜の街を駆けて」

 玄関まで忍び足で歩き、扉に張り付く。

 外から聞こえてくる魔物たちが暴れる音とサイレンの騒音が混じり合って更に煩い。


「3つ数えたら外に出ます。良いですね?」

「あぁ・・・・・・って、お前が先に出るのかよ?」


「剣だと援護しにくいですし。」

「それはそうだけど、ガキを先に行かせるってのもなァ・・・・・・。」


「それこそ今更でしょ。今はここを切り抜けましょう。」

「・・・・・・分かったよ。お前の背中は死んでも守ってやる。」


「いや、死なれたら後々手続きとかが面倒そうなので、程々でお願いします。」

「ハッ、言ってくれるじゃねーか!」


「それじゃあ行きますよ。1、2・・・・・・3!」


 合図と同時に扉を開け放ち、外へ飛び出した。

 俺の姿を捉えたゴブリンたちは俺へと目標を変え、飛び掛かってくる。


「はぁっ!」


 繰り出される攻撃を躱し、反撃を叩き込んだ。胴と首が離れたゴブリンの身体が地面に転がる。

 そして出来上がったもの言わぬ死骸を、ゴブリンたちが競い合うように貪り食う。


「まったく気持ち悪いなコイツら。」


 カレンがぼやきながら群がるゴブリンたちを撃ち抜いていく。

 ゴブリンたちは、まるで食欲だけに突き動かされているようだ。かなり痩せ細っているし、やはり飢餓状態なのだろう。

 だがそのお陰で統率も取れておらず、動きも直線的で御しやすい。数で言えば今の方が劣っているはずだが、森で戦った時の方が苦戦したくらいだ。

 そしてそれほど時間を掛けることなく、家の周囲の掃討は完了した。


「そういえば、コイツら魔導銃を持ってなかったな。」

「確かにそうですね・・・・・・。」


 道理で楽に戦えたわけだ。

 そして魔導銃で武装していなかったから街への侵入を許してしまったのだろう。

 防衛隊の使っている魔物探知機が”魔導銃の波長を探知する”とかいうほぼ欠陥品みたいな代物だからである。森で罠に掛けられた時と同じ理屈だ。


「これからどうしましょうか。どこかに立て籠もるにしても普通の家じゃ強度が不安ですし。」

「確かにそうだな・・・・・・。」


 俺とカレンが思案していると――


「無事だったか、お前たち!」


 声がした方へ振り返ると、魔導銃を携えた男が二人、こちらへ駆け寄ってくる。


「ガムア隊長に、ゼスタ? どうして此処に?」

「カレンさんたちを助けに来たんッスけど・・・・・・必要無かったみたいッスね。」


「しかし凄い数だな・・・・・・お前がやったのか、カレン?」

「大半はコイツだよ。」


 そう言いながらカレンが俺の頭をワシャワシャと撫でてくる。


「アリスちゃんが? こんな時になに冗談言ってんスか、カレンさん。」

「冗談でも嘘でもねえよ。コイツが居なきゃ多分やられてたさ。」


「ふむ、まぁその話は道すがら聞くとしよう。とにかく此処から移動するぞ。」

「どこへ行くんですか?」


「ウチらの行きつけの店で、今のカレンさんの職場ッスよ。」


 その場を離れ、お互いの情報を交換しながら夜の街を急ぎ足で進んでいく。散発的に魔物の襲撃を受けたが、脅威にはならなかった。

 ガムア隊長の話によると、彼らの所属する傭兵団があの定食屋を拠点にして周辺の救助を行っているらしい。


「あそこのオヤっさんも、元は防衛隊だから話が早いんッスよ。」


 なるほど、こんな緊急時だし元防衛隊なら頼りになるだろう。

 そしてその防衛隊だが・・・・・・どうやら街の外に現れたゴブリンの大軍と交戦中のようだ。

 そいつらは魔導銃で武装しており、防衛隊はまんまと釣り出されたのである。

 つまり、ゴブリン側は精鋭部隊を囮に使い、方法は分からないが丸腰のゴブリンたちを街の中へ送り込んできたのだ。

 戦い慣れていない街の住人を殺す程度なら、丸腰ゴブリンでも戦力過多になりそうなくらい身体能力の差はハッキリとしており、住人を守るためには防衛隊の戦力を割くしかない。

 だが防衛隊を街の方へ回そうにも人員が不足しているらしい。予算削減のためのリストラの弊害がこんな所で起こっていたようだ。

 防衛隊が街の外に出てなければ手はあったかもしれないが・・・・・・今となっては後のまつりである。


「しかし・・・・・・まさかこの時勢に剣なんざ振り回すヤツが居るとはな。」

「しかもめちゃくちゃ強いじゃないッスか、アリスちゃん!」


「だがコイツもあって困らないだろう。型落ち品だが持っておけ。」


 そう言ってガムア隊長から拳銃型の魔導銃を受け取る。

 防衛隊のものとは少し違うが、問題なく扱えそうだ。


「ありがとうございま――っ!!」


 反射的に受け取った魔導銃を構えて引き金を引いた。

 魔力弾はこちらを襲おうとしたゴブリンの額を貫き、絶命させる。


「銃の扱いも悪くはないようだな。」

「拾ってもらった時に散々撃ちましたから。」


「ガッハッハ、そう言えばそうだったな!」

「隊長! 今のヤツ、魔導銃持ってるッスよ!」


 ガムア隊長が、ゴブリンが持っていた魔導銃を取り上げる。


「ふむ・・・・・・コレはウチの傭兵団で使ってるものとも防衛隊のものとも違うな。おそらく、別の傭兵団のものを奪ったんだろう。」


 元々街の中にあった銃で武装してたってわけか。

 つまり、時間が経てば経つほど街の中にも魔導銃を持ったゴブリンが増えていくということになる。

 街の外は魔導銃の総力戦、街の中は魔導銃の争奪戦になりそうだ。


「マズいッスね・・・・・・魔導銃が魔物どもの手に渡ったらもっと被害が増えるッスよ。」

「急ぐぞ、早く仲間と合流しなければ。」


 俺たちは頷き合うと、闇に染まった街を再び進み始めた。

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第一章
DTガール! ~DT in ガール!?~

第二章
DTガール! ~がっこうにいこう!~

第三章
DTガール! ~BACK TO THE ・・・・・・~

削除された話については下記のリンクよりご覧ください。
20話「おなじおおきさ」
21話「慰めはいらない。・・・・・・いる?」

その他
「DTガール!」についての備忘録
外法士



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[一言] 駆逐しないと……
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