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00032話「大会まであと」

 俺が未来にやってきて、早いものでもう一ヶ月が経過している。

 大金を得たと言っても、それほど生活に変化は出ていない。食事が一品増えた程度だろうか。


「・・・・・・よし、できた。キャサドラ先生、終わりました。」


 出されていた課題を終え、先生に提出する。

 課題を受け取ったキャサドラ先生は受け取った用紙に目を通し、小さく頷いた。


「よく出来ていますね。」

「ありがとうございます。」


「ですが、この箇所は何故このようにしたのですか?」

「えっと・・・・・・忘れてしまったので。でも機能としては問題無いはずです。」


「・・・・・・・・・・・・そうですね。問題は無いようです。」


 魔法陣の課題も、セオリーさえ覚えてしまえば簡単なものだ。丸暗記はさすがに無理だったが・・・・・・。

 消費魔力の抑制、魔法陣に効率よく魔力を行き渡らせるための分散制御など。自分のために作る魔道具にはやはり必要のない知識だ。

 これらの魔法陣を組み込めば多少扱いやすくはなるだろうが、そのスペースが必要な分、魔道具自体が大きくなってしまうのである。

 だが、使える魔力が殆ど無い未来の人たちには必須と言えるだろう。彼らの生命線であるマナノキから供給される魔力も無限ではないのだ。

 先生から花丸を貰った課題を返してもらい、自分の席へ戻る。


「ぁ、あの・・・・・・アリスちゃん・・・・・・。」

「どうしたの、コレットちゃん? また分からないところでもあった?」


「う、うん・・・・・・。」

「分かった。教えるよ。」


 自分の机を少し動かし隣のコレットの席とくっつけると、こちらを頬を膨らませて伺うローレッドと目が合った。


「むぅ~・・・・・・。」

「ローレッドちゃんも分からないとこあるの?」


「な、ないわよ・・・・・・ふん!」


 そっぽを向かれてしまった。

 少しは仲良くなれたと思うんだが、まだ彼女のことは分からないな。

 コレットの課題を手伝いながら過ごしていると、終業の鐘が鳴り響いた。


「ふぃー、終わったー。それじゃあ支度して部室に行こうか。」


 コレットは特訓を始めてから、少しずつ魔力量が増えている。

 とは言ってもまだほんの少しだ。

 キャサドラ先生くらいになるまではまだ掛かりそう。


 部室に入ってカバンを置き、部活の準備を始める。

 俺は戸棚から魔力測定器を取り出し、コレットは小さな紙を手に持つ。


「そうだ、一度コレットちゃんの魔法も測定してみようか。」


 この一ヶ月間コレットには魔力測定器を使わせず、地味な特訓を続けさせていた。

 これだけ魔力量が増えれば、最初のころよりは良い結果が出せるだろう。


「そろそろどれくらい成果が出たか、コレットちゃんも見てみたいでしょ?」

「う、うーん・・・・・・。」


 だがコレットはあまり乗り気では無さそうだ。


「どうかしたの?」

「わ、わたし・・・・・・アリスちゃんに特訓・・・・・・してもらってるけど、全然、ダメだから・・・・・・。」


 なるほど。どうやら自信が無いらしい。

 でも彼女の眼には視えてないのだし、それも仕方ないのかもしれない。


「ダメなんかじゃないよ。ちゃんと成果は出てるから、騙されたと思ってやってみて。」


 しぶるコレットの背中を押し、魔力測定器の前に立たせる。


「それじゃあ、風の魔法撃ってみて。」

「う、うん・・・・・・”風”っ。」


 コレットの声と同時に、魔力測定器へ向けた手のひらから魔法が放たれる。

 見た目に変化は無いが、魔力を帯びた風は確実に魔力測定器へとぶつかった。

 魔力測定器の針が少しだけ振れる。・・・・・・0.6。一目盛りはいかなかったが、数値だけ見れば一ヶ月前の3倍だ。

 フラフラで倒れそうなコレットを椅子に座らせる。


「すごいよ、コレットちゃん。この間より増えてる!」

「ほ、ほんとう・・・・・・?」


「ほら、見てみて。」


 魔力測定器をコレットの前に置き、測定結果を見せる。


「ご、ごめんね、アリスちゃん・・・・・・わたし、全然ダメで・・・・・・。」


 だがその結果はコレットを落胆させるものであったらしい。

 俺としては十分に結果を出せたと思うんだけどな。


「そんなことないって。ちゃんと成長してるし、まだまだこれからだよ。」

「・・・・・・うん。」


「それじゃ、今日も練習はじめようか。」


 コレットの練習メニューは、魔力の続く限り風の魔法で小さな紙を浮かせ続ける。

 魔力が切れたら魔力回復薬を飲んで、同じことの繰り返し。

 応用しようにも、基礎的な魔力が備わっていないとどうにもならないからね。


 そして俺の練習メニューは、あらかじめ決めた数値にピタリと止まるように魔力測定器に魔法を当てるというものだ。

 これが中々難しい。距離が開けばその分魔力が減衰し、ズレが生じるのだ。

 まぁ、本番だとデカい数値を出せばいいだけなんだけどね。


 壁に貼られたポスターに目を向ける。

 その本番までは、あと二ヶ月といったところだ。


「ア、アリスちゃんは・・・・・・やっぱり出るの? 大会。」

「うん、その先に目的があるからね。」


「アリスちゃんなら、で、出来るよ・・・・・・。」

「そうかな? ありがとう。」


「その後は・・・・・・ど、どうするの?」

「その後?」


 大陸大会で優勝すれば、魔法学院の学長と直接話すことが出来る。

 そこからレンシアか他の魔女に繋げてもらって、その後は――


「・・・・・・や、辞めちゃう、の?」

「そ、そんなことはない・・・・・・よ。それより練習続けよう、コレットちゃん!」


 そして大会へ向けて頑張っていた矢先に、事件が起こった。

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第一章
DTガール! ~DT in ガール!?~

第二章
DTガール! ~がっこうにいこう!~

第三章
DTガール! ~BACK TO THE ・・・・・・~

削除された話については下記のリンクよりご覧ください。
20話「おなじおおきさ」
21話「慰めはいらない。・・・・・・いる?」

その他
「DTガール!」についての備忘録
外法士



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