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31話「賢者の石と別に秘密じゃない部屋」

 六本脚を打ち倒した闇の民の少女に声を掛ける。


「あの、あなたが闇の民の巫女ですか?」

「まだ見習いやけどな! ウチはススーラや! よろしゅうな、御使い様!」


「う、うん・・・・・・よろしく。それで、私たちのことを迎えに来てくれたって事でいいのかな?」

「せや! 婆ちゃんとこに案内するから付いて来てや・・・・・・って言いたいとこやけど、後ろの子らはどないしよか?」


 ススーラの視線の先には、地面に腰を下ろしたクアナたちの姿。


「わ、私たちは・・・・・・大丈夫だから。」


 そう言ってフラフラと立ち上がるクアナだが、どう見ても大丈夫そうではない。

 何とか歩けはしそうだが、あの状態では時間が掛かり過ぎる。


「ススーラさんはそっちの二人を背負ってくれる? 私はこっちの三人を背負うから。」

「そら構へんけど・・・・・・二人もいっぺんに背負われへんで?」


「大丈夫、少し待ってて。」


 土に魔力を流し、ちょうど二人を乗せられるくらいの大きさの背負子を作り上げた。


「へぇー、そないなこと出来るんか御使い様は。」


 ススーラがそんなことを言っている間に彼女の背にクアナとドーチェを乗せ、土で固定具を作る。

 これで多少暴れても落ちたりはしないだろう。


「完了っと。どうかな、ススーラさん?」

「これなら行けそうやわ。」


「なら良かった。それじゃあ次は私の分だね。」


 同様に背負子を作り、ルエンを真ん中にしてフーエとフーケでその両隣を固めるように乗せて背中に担ぐ。


「ご、ごめんなさい、御使い様・・・・・・。」

「気にしないで。それより舌を噛まないよう気を付けてね。」


「御使い様も結構力持ちなんやな!」

「そっちもね。それじゃあ案内してくれる?」


「任しとき!」


 ススーラが地面を蹴るようにして飛び上がると、背中から悲鳴が上がった。

 置いて行かれないように脚に魔力を込めて地面を蹴る。


「ちゃんと付いてこれてるな。さすが御使い様や!」


 枝から枝へ飛び移っていくススーラを、同じ道筋を辿りながら追いかけていく。

 おかげで数日は掛かりそうな距離を数時間で踏破出来た。

 背負われていた子たちはもはや虫の息となってしまったが。


「ここや!」


 ススーラが足を止めた場所には小さな遺跡があった。

 石造りの小さな神殿だったようだが、長年風雨にさらされボロボロになっている。

 ススーラが垂れ下がっている蔦をかき分けるようにして中に入っていく。

 俺も続いて中に入ると、地下へ続く階段が伸びていた。

 やはりここでも地下に住んでいるらしい。


 地下へ降りていくと、広い空洞内に街が作られていた。

 しかし”外地”とは全く様相が異なっている。

 暗闇を照らすための街灯は手入れがされていないせいか、半分以上が壊れて停止してしまっているようだ。

 だが逆に道を歩く人の姿は逞しく、皆一様に黒い毛皮のマントをだけを羽織っている。俺の良く知る闇の民の姿である。


「婆ちゃん! 御使い様連れてきたで!」


 そう言ってススーラが一軒の家にドカドカと入っていった。

 流石に他人の家に勝手に入るのはと躊躇っていると、中からススーラが声を掛けてくる。


「何してんのや、はよ入ってきいや御使い様。」

「お、お邪魔します・・・・・・。」


 促されて中に入ると、いくつかの光を放っていない魔力灯が目についた。

 外と同じで魔道具の手入れがされていないらしい。


「おっと、そうだった。もう降ろしても大丈夫?」


 背中の子たちに声を掛ける。


「せ、背中に乗ってる、より・・・・・・マシ。」


 ルエンの言葉に皆がコクコクと頷いた。

 背中でのジェットコースター体験はお気に召さなかったらしい。

 背負子から皆を降ろしていると、奥から腰の曲がった老人が杖をつきながら姿を見せた。


「あんさんが御使い様でっか?」

「はい、そうです。あなたが闇の民の巫女?」


「儂が闇の民の巫女をやらせてもろとります、ポポネン言います。して、その背中の人らは他のとこの巫女様ですかいな?」

「えぇ、少し休ませてあげたいのですけど。」


「奥の方で休ませたって下さい。伝えなアカンこともありますから、儂が案内させてもらいます。ススーラは御使い様をイシ様のとこへ案内しいや。」

「わかったわ。ほな行きましょか御使い様!」


「はぁ・・・・・・あの、イシ様って?」

「見たら分かるから。ほら、こっちやで。」


 ススーラに付いて行くと、家の奥にはさらに地下へ続く階段があった。

 階段を下りていく彼女に続いて、俺も地下へと進んで行く。

 そう長くもない階段を下りきると、小さな部屋があった。

 部屋には祭壇があり、祭壇の上には黒い石が祀られている。

 あの石は・・・・・・闇の民が石化したものか?


「イシ様ー! 御使い様連れてきたで!」


 ススーラが祭壇に向かって声を掛けた。

 すると――


<いっつもうるさいねん! そないに叫ばんでも聞こえとるがな!>


 祭壇の方から若い女性の声が返ってきた。

 もちろん祭壇のところには人の姿なんて無い。

 あるのはあの黒い石だけだ。


「ねぇ、ススーラさん。今の声って・・・・・・?」

「イシ様の声やで。」


「イシ様って・・・・・・もしかしてその石の事?」

「せやから、石様言うてるやん。」


「えぇ!? じゃあホントにその石が喋ってるの!?」

<せや! 何を隠そうウチが”賢者の石”や! アンタが御使い様やな? 長いこと待っとったでホンマ。>


 いや、別に隠れてなかったし何なら初めて聞いたんですけど・・・・・・。

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第一章
DTガール! ~DT in ガール!?~

第二章
DTガール! ~がっこうにいこう!~

第三章
DTガール! ~BACK TO THE ・・・・・・~

削除された話については下記のリンクよりご覧ください。
20話「おなじおおきさ」
21話「慰めはいらない。・・・・・・いる?」

その他
「DTガール!」についての備忘録
外法士



― 新着の感想 ―
[一言] 背負子を作るときに手をパンと合わせてたら完璧だったかもしれない
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