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00049話「合流」

 大きくなっていく勇者騒ぎに、他の兵士たちも何事かと様子を伺いにやって来た。

 丁度良い、この間に抜け出してしまおう。


「それじゃあコレットちゃん。私は行ってくるね。」

「えっ・・・・・・ぁ、待っ・・・・・・。」


 みんなの視線がキシドーに集まっている隙に、俺は警備の目を潜り抜け、外へと飛び出した。


「ちょっとキミ! 外に出ちゃ・・・・・・あ、危ない!」


 さすがに全員の目を盗むことは出来なかったが、外に出てしまえばこっちのものだ。

 博物館に近寄ってきていた一体のゴブリンを、彼の銃弾より早く魔法の氷の槍で貫く。


「見ての通り私は大丈夫ですから、中の人たちをお願いしますね!」

「い、一体キミは何者――」


 彼の問いかけを最後まで聞くことなく、身体強化と触手を駆使して街の上空へと翔け上った。


「まずはカレンさんたちと合流しないと・・・・・・方角的にはあっちか。」


 彼女たちと別れた地点の方角へと向かい、屋根を伝って走る。

 抱えているものは無いので足取りは軽い。

 あまり速度が落ちない程度に道中で数十体ほど間引いたが、これくらいじゃ焼け石に水だろう。


「居たっ、あそこだ!」


 ほどなく、見覚えのある集団を発見した。

 別れた時よりも、その規模は大きくなっているようだ。

 道すがら襲われていた人を助けたのだろうが――


「マズいな、囲まれてる。」


 集団の規模が大きくなってしまったせいで、より多くの魔物たちの目を惹いてしまったのだろう。

 今は何とか応戦できているが、使っている魔導銃の魔力が切れるのも時間の問題だ。そうなれば彼らでは一溜りもない。


「助けるにしてもとにかく合流が先だな、よっ・・・・・・と!」


 屋根の上から大きくジャンプし、集団の真上から彼らの中心に着地した。


「キャーー!!」「な、何だなんだ!?」


 一瞬、集団の中に混乱が起きる。


「アリスちゃん、無事だったのね!?」


 彼らをかき分け、マレルが抱きしめてくる。

 柔らかいものが顔面に押し付けられ、少し息苦しい。


「ア、アリスちゃんッスか!? 良かった、これで助かったッス~!!」

「情けねえこと言ってんじゃねえぞ、ゼスタ!」


 ガムア隊長たちも大きな怪我はなく、健在のようだ。

 そして、カレンは――


「よう、早いじゃねえか。友達はもういいのか?」

「はい、博物館に預けてきました。」


 俺の返答を聞いて、ガムア隊長が首をひねった。


「預けてきた? どういうことだ?」


 俺は彼らに事情をかいつまんで説明する。


「なるほど、テルナ商会が動いてるのか。そいつはありがたいな。」

「って言ってもどうするんッスか、この状況!? このままじゃ博物館なんてたどり着けないッスよぉ!?」


「気合で何とかするんだよ!! なんて言える状況じゃねえのは分かってるよ。すまねェが・・・・・・また頼まれてくれるか、嬢ちゃん?」


 潔く頭を下げるガムア隊長に、頷いて返す。


「任せてください。」


 敵は数十体。数えるのも嫌になる数だが、ここを突破しないことにはどうにもならない。

 襲い掛かって来るゴブリンたちを迎撃しつつ、作戦を立てる。

 そして二つのチームに分かれ、俺は進行方向の露払いを、残りで背後の防衛を行うことに。

 ぶっちゃけ作戦と呼べるような作戦ではないが、この状況では取れる手段が少ないのも事実。


「い、いいのかそれで? 嬢ちゃんの負担が高過ぎやしないか?」

「これくらいなら問題ありません。それより、作戦に移る前に魔導銃を少し預からせてください。」


「あぁ、それくらいなら構わねえが・・・・・・。」


 受け取った魔導銃を調べると、やはり魔力がかなり減っている状態だ。

 あと数回戦闘を行えば空っぽになってしまうだろう。

 充填器に手を触れ、魔力を流し込んでいく。

 カレンに持たせている魔導銃のような改造は即席では出来ないが、魔力の補充程度なら十分可能だ。

 満タンまで魔力を充填し、魔導銃をガムア隊長に返す。


「こ、こいつは・・・・・・魔力が充填されてる? そうか、あの時も嬢ちゃんが助けてくれてたんだな。」

「秘密にしておいてくださいね。」


「ガハハッ、命の恩人の事だ! 墓まで持って行くとも! 儂だってこんなことが出来ても黙っておるしな!」

「それじゃあ、交代しながら魔導銃の充填をしていきましょう。指揮をお願いしますね、ガムア隊長。」


「それくらいお安い御用だ! 手の空いてる者はこっちに集まってくれ!」


 それから戦線を維持しつつ、仲間たちが使っている魔導銃の魔力を回復させていく。

 これで突破作戦の成功率も上がるだろう。


「よし、これで全部だ、嬢ちゃん!」

「分かりました。」


 最後の充填を終え、ついに準備が整った。

 魔物の数はさらに増えているが、俺にとってはまだ誤差の範囲だ。


「損な役回りばかりさせてすまないな、嬢ちゃん。」

「終わったら一杯、じゃなくていっぱい奢ってくださいね。」


「ガハハッ、何ならゼスタの財布も付けるぞ!」

「な、何言ってんスか、隊長!? ・・・・・・まぁ、命にゃ代えられないッスからね。お手柔らかに頼んまスよ、アリスちゃん。」


「すっかりお前の方が稼ぎ頭だな。ま、後ろはアタシらに任せて好きにやりな。もう誰も止めやしねえよ。その代わり・・・・・・その、ケガすんじゃねえぞ。」

「はい、カレンさん。」


「よし、やるぞお前ら!!! もうひと踏ん張りだ!!!」

「「「おう!!!」」」


 そして、新たな戦いの火蓋が切られた。

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第一章
DTガール! ~DT in ガール!?~

第二章
DTガール! ~がっこうにいこう!~

第三章
DTガール! ~BACK TO THE ・・・・・・~

削除された話については下記のリンクよりご覧ください。
20話「おなじおおきさ」
21話「慰めはいらない。・・・・・・いる?」

その他
「DTガール!」についての備忘録
外法士



― 新着の感想 ―
[一言] > 新たな戦いの火蓋が切られた。 そして作業ゲーに( ˘ω˘ )
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