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九州大学文藝部 追い出し号 『生前葬』

つづく

作者: 藤野遠子

そこで寝ちゃ駄目だよ、君は気を抜くとすぐに尻尾が出ちゃうんだから




三月の君の目標:①お布団で ②眼鏡はちゃんと外してから ③寝る!




ハムスターみたいだね 君 夜更かしとほっぺにごはん詰め込むのが好き




難しい顔で何度も頷くね おいしいものを食べた時には







不可解な生物として我を見るどこまでも科学者の眼差し




読み止した文庫のようにひらかれる あとがきさきによんじゃだめだよ







夕焼けが君の眼鏡に光るから後部座席で恋に気づいた




「待った?」ってふいに敬語を崩すから裡なる海が溢れてしまう







新しい青のサンダルつっかけて虹の端っこ探しに行こう







ひらがなの響きのままであのひとは雨の降るたびにじみひろがる




あなたより先に死んだら雨のなかあたしのための鈴を鳴らして




催涙雨 僕を愛してくれる人だけを愛して生きていけたら




傘閉じて見上げれば 空 神様の約束 空の果てまで続く







「そう言うが君は愛する辞書よりも僕の言葉を信じるだろう?」




"「どこからが恋なのでしょう」


「どこなんて思い始めた時にはとうに」




夏が終わる 君の蔵書は散逸し藤村だけが取り残される




失えば取り戻せない潮風に髪を曝して晩夏の自傷







愛されて育った人が「おはよう」と同じ温度で「信じろ」と言う




お砂糖と苺、透明になるまで煮詰めて 彼とどうなりたいの




サヨナラに強くなれない僕たちの僕たちの後ろ手に握り締めてる二月







みんな水の容器で一輪の花を投げて誰かに挿さったら恋




その人は言葉でできているジェンガ 透き通っては不意に崩れる




本が増える 棚を溢れて海になる どうかわたしを愛してください




あなたからもらうきらきらかえしたいのにかえされてくれない かなしい




気をつけておいでね 彼の遺伝子を抱いて哀しき生命体よ




信じたし さう呟きて目を閉ぢた君が願ひはうつくしけれど




決して僕を愛することのない人の笑顔に今日も救われること







#tanka どこかにあのひとがいる幻はまだ消えなくて




作品にならないことを知っていて涸れた泉を抱く小説家




散文のための白紙は広すぎて僕は途方にくれてしまうよ





解釈をしても良いけどわたしにも他の人にも話さないで、ね




こう見えて冬は一人で海に行くし人に見せない歌だってある




名歌とか秀歌とかってなんだろね 僕には「好き」と「すごい」しか分からん







好きな人に好きと言ってもらえなくても自分の歌を好きでいたいよ







すぐ傘をなくす君のままでいなよ 虹に愛されてる証拠だよ

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