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ヒヤシンス


北原白秋

「ヒヤシンス薄紫に咲きにけりはじめて心顫ひそめし日」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ヒヤシンス」



 ヒヤシンスが、咲いていた。蕾の群れの中一つ、淡い紫で。玄関を開いてすぐの、下駄箱の上で。光の加減で青白く見える、硝子の花瓶の中で。ヒヤシンスが、咲いていた。




 萌には幼馴染と呼べる男がいる。名は、尚輝という。昔から親ぐるみの付き合いで、今年の四月から同じ高校に通うことになっている。

 今日、制服が届いた。二人は親に言われるままに、一緒に真新しい制服で写真を撮った。ちょうど三年前、つまり中学に上がる頃は、二人は大の仲良しだった。それで、今日と全く同じで、あの時も写真を撮らされた。満面の笑みの二人は、今も家のタンスのどこかに眠っているはずだ。

 だが今日はどうだろう。二人は、どこかぎこちなく笑った。オトナになるにつれて、二人の仲はよく分からないものになっていた。ただ、学校で尚輝が遠巻きに萌のことを、ふと見るばかりであった。


 好きだ。尚輝はそう伝えた。写真を撮った後、二人は久しぶりに萌の部屋に来ていた。萌は、戸惑った。少し疎遠になっていたとはいえ、もちろん尚輝のことは昔と変わらず萌も好きだ。だが、それは恋愛のものなのだろうか。萌には自信が無かった。萌は、尚輝への返事を先延ばしにした。

 尚輝が帰って、萌は一人考える。尚輝について、萌はずっと考えていた。ずっと、ずっと。ずっと、ずっと。


 電話が鳴った。萌は、飛び上がるほど驚いた。心臓が、耳の近くにあるようだった。




 萌は、病院から帰ってきた。尚輝は萌が考えている間に、車に轢かれた。ほとんど、即死だったそうだ。萌は、重い玄関の扉をなんとか開いた。


 ヒヤシンス、薄紫に咲きにけり。

 はじめて心、顫ひそめし日。


北原白秋さんの

「ヒヤシンス薄紫に咲きにけりはじめて心顫ひそめし日」

でお話作らせてもらいました。


本当に関係ない話なんですが、平野紫耀さんがジャニーズだということを今日初めて知りました。

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