ケーキ
内山晶太
「ショートケーキを箸もて食し生誕というささやかなエラーを祝う」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ケーキ」
ハルカは、女の子だ。つまり、甘いものが大好きだということだ。加えて、ハルカはいちごが好きだ。なぜなら、女の子だから。そういうわけで、いちごが乗ったショートケーキはハルカの一番の好物なのだ。実に少女的で、ハルカは可愛らしい。
ハルカは、箸を持った。大好物を食べるためだ。ハルカは女の子だから、箸で食べづらいケーキだってとても上品に食べられる。でも、可愛い女の子は箸でケーキを食べるだろうか。
ハルカは、真っ先に上に乗ったいちごを食べた。好きなものを先に食べてしまうなんて、そんな素直さが実に可愛らしいではないか。ハルカは女の子なのだから、可愛いのは当然だ。だが、女の子は愛されてるはずではないのか。ハルカは誕生日なのに、独りケーキを頬張った。
ハルカは、缶のチューハイに口をつけた。ハルカは酒に弱いから、これを半分くらいしか飲むことができない。でもこれが、女の子らしいということだろう。可愛らしいだろう。そのはずだ。ハルカは、不味い汁を少し啜った。ここ最近、毎日ハルカはそうしていた。
ハルカは、顔を上げた。自分の部屋の、カーテンが見える。ピンクで、白い水玉のカーテン。ハルカと一番仲が良い女の子がくれた、カーテン。可愛いらしい、女の子らしいカーテンだ。それ以外には何もない。ただ、それ以外には。しかしてハルカは、カーテンをじっと見ていた。
ショートケーキを箸もて食し、生誕という、ささやかなエラーを祝う。
ハルカは、今、何を考えているのだろう。私には分からない。決して、分かることはない。しかし、ハルカは産まれたことは、後悔してないはずだ。そのはずだ。きっと、そうなんだ。
内山晶太さんの
「ショートケーキを箸もて食し生誕というささやかなエラーを祝う」
でお話作らせてもらいました。
うーーーん、これは、セクシャルマイノリティの話かもしれないし、そうじゃないかもしれないですね。