トンネル
内山晶太
「ひよこ鑑定士という選択肢ひらめきて夜の国道を考えあるく」
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「トンネル」
少しふらつく足取りで、ヨウイチは帰り道を行く。大学の仲間と呑んだ帰りだ。近頃肌を少し刺すようになった風が、ヨウイチをからかった。
季節の変わり目で、ヨウイチは半袖で。楽しかった夜には必ず、その後、嫌なことを考えてしまうものだ。ふと、自分の将来を思い浮かべてしまった。一年後には就活が待っている。
別に将来やりたい事なんて何もない。何もしたくない、働きたくない、できれば家庭も持ちたくない。なんの責任も無しに、一人で勝手に死んでいきたい。ただただ、そう思った。
思えば昔から親の言いなりだった。親の言うように勉強し、努めて、そして我慢した。今の大学だって、ここ以外は親が認めてくれなかったから、必死に勉強して入ったのだ。今はそれらが、全て馬鹿馬鹿しかった。
自分の将来について、ヨウイチは考える。本当は考えるフリをして、それから考えるフリをしただけだ。ヨウイチは空っぽだから、それは土台無理な話だった。ヨウイチが今生きているのだって、ただ、死にたくないという理由だけなのだから。
ひよこ鑑定士という選択肢ひらめきて、夜の国道を考えあるく。唐突に閃いた時、ちょうどヨウイチは国道脇の短い地下トンネルに差し掛かったところだった。
トンネルは夜とは思えないほどいやに明るかった。ひよこ鑑定士は儲かると聞いたことがあるし、ヨウイチは昔から動物が好きだ。可愛らしいひよこを見てお金がもらえるなら、なんていい職業なのだろう。ヨウイチはよく調べもしないまま、ひよこ鑑定士になった自分を想像してニヤついた。
どうやら、少し立ち止まっていたようだ。ヨウイチは、また少しふらつきながらもトンネルを行く。いつものトンネルが、とても、とても長く感じられた。
内山晶太さんの
「ひよこ鑑定士という選択肢ひらめきて夜の国道を考えあるく」
からお話作らせてもらいました。
ボコボコに酔いながら書いたので、面白いかどうか分かりません。
しかも、何故か今日は2つあります。