第七話
キンッ キンッ シュバッ ドッ
三日月と朝陽が剣を切り結び、向日葵が太陽光のような矢を放つ。
朝陽は防戦一方で、反撃しようとする度向日葵の矢が邪魔をし、向日葵を倒そうとすれば、すぐさま三日月魔法をのせた斬撃で妨害してくる。
「っ!」
向日葵の矢が朝陽の頬を掠め、一瞬の隙を作る。三日月は軍刀に魔力を込め、魔剣技を放つ。
魔剣技 シャドウスラッシュ
闇の魔力をのせた、空間をも切り裂く斬撃が朝陽に迫る。ザクッと音がして、朝陽の左肩が少し深めに切れた。
「っぐ!」
「…おい、今の何故避けなかった。わざと食らっただろ。」
「…。」
「もしかしてだけど、負けようとか、思ってないよね?だめだよ~。朝陽ちゃんは本気を出すか、死ぬしか選択肢無いんだから。」
魔弓技 ホーリープリズン
向日葵の矢が肩を押さえうずくまる朝陽の周りに突き刺さり、光の檻を作り出す。
「はぜろ」
三日月が剣の切っ先を檻に向け、炎魔法で爆発を起こす。
「がはっ!」
朝陽は魔法で盾を作り、爆発を防ぐが、防ぎきれず食らい軽く吹き飛ぶ。
「さすがだね!私の檻の中は、魔法が使いにくいのに。」
「はぁー。…さっさと本気を出せ。死ぬぞ。」
朝陽はボロボロの体で立ち上がり、向日葵と三日月を、いや、正確にはその後ろでこちらを見ている学長を見ていた。
学長は朝陽の目をじっと見ると、小さく頷いた。
合図だ。許可は出た。
『癒やせ』
朝陽の左肩の傷が治り、所々にあった火傷も消える。ついでとばかりに、騎士服も修復され、汚れも無くなる。
「えー、うっそ。結構深い傷を治しといて、服も直すの?」
「魔力切れの片鱗さえ無いか、とんだ化け物だな。」
向日葵と三日月の言葉を無視し、朝陽はトワイライトの切っ先を空に向け、高く掲げる。
『“武器解放”』
朝陽が唱えると、トワイライトが白と黒の魔力に覆われ、輝く。
「わお。武器解放と来ましたか。限界突破では無いけれど、少しは本気を出してくれたみたいだね。」
「らしいな。だが、少しまずいな。武器解放となると、強力な魔剣技が来るぞ。」
三日月が言ったそばから、朝陽はトワイライト掲げたままで、魔剣技を放つ。
魔剣技 メテオストライク
トワイライトを地面に振り下ろす。すると、惑星が落ちて来たような衝撃波がはしり、向日葵と三日月は見事に吹き飛ばされた。
「…まだ、やるの?」
朝陽は何事もなかったかのように、立っている。
「…いや、もういい。お前の魔剣技が見れただけでもいいことだからな。」
「そうそう、本音を言えば限界突破を見たかったけど…。」
「なら、帰る。」
朝陽は踵をかえし、帰ろうとする。が、向日葵に引き留められる。
「ねえ、朝陽ちゃん。…さっきの魔剣技なに属性?」
「…。」
「答えないなら、当ててやる。あれは、誰も使えない星属性じゃないのか。」
「…そうだと言ったら?どうするの?」
朝陽の静かな声に、向日葵と三日月は押し黙る。朝陽は二人を横目で一瞥し、歩き出した。
「…あれは、誰も使えない。私専用だから。」
「「…え?」」
朝陽の呟きに向日葵と三日月は困惑するが、朝陽はそのまま歩き去った。
「朝陽ちゃん、あなたはどれだけの秘密を抱えているの?」
向日葵の声は黙ったままの三日月には聞こえたが、問いかけた本人には、届かなかった。