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黄昏の暗殺者  作者: 尾野チエリ
2/7

第二話

 

 「あなたが、市街地に現れたはぐれ魔剣士?」


 朝陽は、目の前にいる男にこう言った。

 捕縛指令を受け、すぐさま転移すると捕縛対象であるこの男の真上に朝陽は転移したのだ。なぜ、真上かというと歩いて探し回るのが面倒だったからだ。ただ、それだけ。

 だが、この男は理解が追いついていないようだった。完全に腰を抜かしている。

 朝陽が、落下した衝撃で男のフードが脱げていた。

 男は珍しい外見をしていた。黒髪に目は黄金色、顔は朝陽から見てもなかなか整っていた。背は、朝陽が小柄ということもあるが結構高いだろう。


 「あなたが、市街地に現れたはぐれ魔剣士?」


 もう一度、朝陽は男に聞いた。


 「え、あ、えっと。そうだけど…。」

 「そう、よかった。あなたには、捕縛指令が出ている。

私と一緒に来てもらう。」


 男が肯定すると、朝陽はすぐさま拘束しようとした。だが、そこでようやく男は自分が捕まりそうになっていることに気づいた。

 男は足に魔力を込めて、大きく後ろに飛んだ。


 「いきなり、何すんだよ!」


 朝陽は、きょとんと首をかしげ言った。


 「何って、さっき言った。あなたには、捕縛指令が出ていると。」


 男は朝陽のどこか抜けた態度に、毒気を抜かれて一瞬黙った。


 「だからって、はい、そうですかって捕まるわけねぇだろ、普通に考えて。」

 「なに?抵抗するの?」


 朝陽がそう言った瞬間、背筋が凍るような寒気を感じ、男はその場を動けなくなった。

 朝陽の殺気だ。


 「抵抗するなら、容赦しないけど。」


 無表情にそう言って、朝陽は腰に下げたトワイライトの柄に手をおく。

 

 「ああ、するさ、全力で抵抗させてもらう。」

 

 男は、簡素な剣を構え朝陽に向ける。

 朝陽も男に合わせるように、シャッと音を鳴らしてトワイライトを抜く。

 

 「そう。私の殺気をうけて、そんなに元気な人は初めてだから、少し付き合ってあげる。」

 「そうかよ、それは嬉しいな。」


 男はそう言って、足に魔力を込めた。地面を蹴る。

 男は朝陽から遠ざかるように、朝陽のいない逆方向へ疾走した。


 「ごめんな、俺、勝てない勝負には興味ないんだ!」


 そう言って、男は路地裏の外、市場の方へと消えていった。

 路地裏に一人残された朝陽は、男が消えていった方向を眺め、呟いた。


 「私、暇じゃないんだけど…。」


 ため息をついて、転移魔法を発動する。

 路地裏には、白ネコとリンゴだけが残された。




 「はあ、はあ、…はあ。」


 男は観光名所となっている古代遺跡近くの広場で立ち止まった。いつもは、子ども達で賑わっているはずなのに誰もいない。

 息を整えるために、噴水の縁に座り休憩する。


 「ったく、なんなんだよ、あいつは。化け物じゃねぇか。」

 

 自分も教育を受けていないわりにはなかなか強いと思っていたが、剣を構える前に感じた殺気は正直ヤバかった。よく、声が出たなっと、自分を誉めたいほどだ。

 それに、剣を構えたときは死さえ感じた。

 それほどの、化け物だった。だが、あれほどの実力者になぜ自分なんかのはぐれ魔剣士の捕縛指令を出したのかわからないことがあまりにも多かった。

 男が考え込んでいると、足元の地面に影ができた。


 「人を化け物呼ばわりするの、やめて。」


 そう言う声が聞こえたときには、もう、男の体には光の縄が巻き付き身動きがとれなくなっていた。


 「なっ!?何でお前がここにいるんだよ!さっき、撒いたはず…。」

 

 そう男が言うと、朝陽は首をかしげて無表情で言い放った。


 「何でって…。転移魔法であなたの座標に飛んだだけ。」

 「転移魔法!?だけど、あそこの近辺には鏡はなかったはず…。てか、座標ってなんだよ!?」


 男は驚愕して、朝陽に問う。朝陽はほんの少し呆れたような表情をして答えた。


 「鏡なんか無くても転移魔法は使える。…でも、なぜか私しか出来る人がいない。座標は簡単に場所、私の魔眼は魔力を直接見るだけじゃなく、物体の正確な位置を座標として見ることができる。」

 「……。」


 男は朝陽の技量を見誤っていたことを反省する。ていうか、魔眼って言った?魔眼って人間は所有することができないはずでは?

 そう考え、こう思った。やっぱ化け物、こりゃ、無理だ。と。

 

 「はぁ。わかったよ。大人しく捕まりますよ。で、あんたの名前は?それだけは、教えてくれない?」

 「……夜闇…朝陽。」


 案外良いやつなのかもなと思い、男は笑顔になって言った。まあ、諦めの笑顔であるが…。


 「俺は、エイジ、魔城まじょうエイジだ。」


 これが、朝陽とエイジの出会いの瞬間であった。

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