第2話 さすが女神様!私は信じてたよ。
草木が風に揺れる音と鳥の囀る鳴き声に気づいてゆっくりと目を開けてみると、目の前に見渡すかぎりの草原が広がっていた。
「こんな場所に放り出されてどうしろっていうのっ!? せめて近くに人が住んでる街とかがある場所にしてよっ!!」
私は溜息をついた後、ゆっくりと後ろへ振り返った。
後方には草や木々が生い茂る深い森が広がっていた。人の気配は感じられない。
「はあ......。とりあえずミリアーヌさんが言ってたステータスを確認してみようかな。」
チカが「ステータス!」と叫ぶと、目の前に透明なディスプレイ画面が出現した。
「おーっ! ゲームみたいで少し楽しいかも。えーと、これを見ればいいんだったよね?」
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名前:山川知佳
LV:1
種族:人族
職業: -
ミリアーヌの加護(創造改変)
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「──えっ? これだけ?」
あっ、どこかに触れれば詳しくでてくるのかな? 詳しく見れるようになってるって言ってたもんね。だ、大丈夫だよね?
私はステータス画面に向かって手を伸ばすが、伸ばした手はステータス画面をすり抜けて空を切った。
「──なにも変わらないんだけどっ!?」
あのあとしばらくステータス画面で色々試してみたけど、なに一つ変わることはなかった。
「だましたなっ!! あの駄女神めぇ~!!」
◆◇◆◇
「はあ......。これからどうしよう......」
水も食料もない。それどころかなにも持ってない。加護もよくわからないし。近くに街も見えなければ、ここがどこなのかもわからない。完全に迷子だ。
「確かこの世界って魔物とかもいるって言ってたよね......」
私は慎重に周囲の様子を窺った。
茂みから突然何かが襲い掛かってきたりしないよね? 映画とかでよくあるパターンだ。
「と、とりあえず進んでみようかな。草原と森どっちにしよう」
少し考えたあと私は草原を進むことにした。
はじめは草原で魔物に出会っちゃったら逃げられないじゃん! って思ったけど、よく考えたら森でも逃げられる気がしない。
自慢じゃないけど私、小さい頃から足が遅いんだよね......。学校とかで持久走とか短距離走とかあったけど、いつも後ろから数えたほうが早かったし。
「あ、そうだ。手頃な大きさの木の枝を森で取っておこうかな」
私は森を軽く探索して、手頃な長さの棒を拾ってから草原に向かって歩きだした。
「これはもう、こわい魔物がたくさんいるところや街が近くにない場所に送られてないことを信じるしかないかな」
ミリアーヌさん適当そうだったからなあ。すごく不安だ......。
──お願いします。どうか近くに街がありますように!
そう思ってた時期が私にもありました。
「喉渇いた......。お水が飲みたい。つかれだぁー。ほんと全部あの駄女神のせいだっ!」
だんだん日が沈みかけてきた。あれからどれくらい歩いたんだろう? 時計もないから時間すらわからないない。
「夜になる前に街か休憩できるような場所をみつけないと、かなりまずいよね......」
いまのところ魔物には出会うことなく進めているのは本当に助かる。どんなのがいるのか分からないけど、日本にいるような熊みたいなのだったら木の枝じゃ餌になるしかない。それに水と食料がないのも本当にまずい。
「自動販売機とかあればなー。あっお金がないや......」
──ドガッ!!
「えっ?」
私の目の前がカメラのフラッシュのように光ったかとおもうと、突然目の前に自動販売機がでてきた。
「えっ!? な、なにこれ!」
突然の出来事に困惑しつつも、ゆっくりと自動販売機に近づいてみる。
どこからどうみても自動販売機だ。それも私が好きな飲み物ばかりが並んでる。
「ってお金がないじゃん!」
試しに購入ボタンを押してみたが、なにもでてこなかった。うん。やっぱりお金は必要だよね。......でもなんで急にこんなものが?
私はふとミリアーヌさんが話してたことを思い出した。
──『チカちゃんのために加護をあげちゃう。特別なものなのよ?』
「確かステータス画面に、ミリアーヌの加護(創造改変)ってあったけど。これはもしかして......」
欲しい物をなんでもを作りだせちゃいますよ!みたいなやつなのかな? もしそうだとしたらどんな世界でもイージーモードだ!
「よーし......」
チカは一度ゆっくりと深呼吸をして心を落ち着かせてから、
「お金でてこーいっ!!」
期待に胸を膨らませながら思いっきり叫んだ。
はいっ!なにもでてきませんでしたー!
なにがダメなんだろ。もっと具体的にするべき?
「んーと。じゃあ100円硬貨2枚ほしいなー!」
──チャリーン。
再び目の前が光ると100円硬貨が1枚でてきた。
「えっ。なんで1枚だけ??」
そのあと何度か試してみたけど同じ硬貨を2枚だすことはできなかった。なぜか全部1枚づつしかでてこない。試しにすでに手もとにだした硬貨と同じ硬貨をだそうとしてもだせなかった。
「まっ、ジュースを買えればいっか♪」
喉が渇いてたからほんと助かったー!今回だけはミリアーヌ様に感謝だね。さすが女神様! 私は信じてたよ! ......ほんとだよ?
「さーてと、どれにしようかなー♪」
──カチャン......カチャン......。
「えっ?」
いれた硬貨が音をたてながら、おつりの返却口におちてきた。
「こうゆうことあるよねー。でも大丈夫! こうゆう時は別の硬貨をいれればいいんだよ」
私は気を取り直して今度は500円硬貨をいれてみた。
──カチャン......。
「えー。また? さすがに勘弁してよー。なんで2回も落ちて.....。あああああああああっ!!」
電気がないじゃんっ! そりゃお金もはいらないよ!
「はぁ......。 どうしよう。あっ、そうだ。もしかしたら! この自動販売機を開ける鍵がほしいなー!」
チカがそう言うと、目の前に小さなカギが出現し地面に落ちた。
ふふふっ。まさに発想の転換と言うやつだね。わたしは天才かもしれない。
チカは自動販売機を開けて飲み物を取り出すと、栓を開けて口元へ運んだ。
「ぷっはぁーっ! 生き返るぅー♪」
飲み物も手に入れたので、ここで少し休憩することにした。歩き疲れたしね!
飲み物はぬるかったけど、すごく喉が渇いていたので美味しくいただきました。
ごちそうさまです。
◆◇◆◇
天界 ミリアーヌ視点
「プリンおいしいー!! チカちゃんいいセンスしてるじゃない♪ それにしてもステータスをみたときのチカちゃんのあの反応っ! うぷぷっ!」
私はニヤける口元を両手で押さえながら、草原を歩いていくチカちゃん方へ視線を向けた。
そういえば魔物がいない場所に、適当に転移させたちゃったけど大丈夫そうね♪
「さすがわたしだわっ! 街まですこしだけ遠い場所になっちゃったけど、まあー、あの辺りなら強そうなのもいないし大丈夫かな? 街につけば私の加護があるからこの世界の言語も問題ないしねー♪」
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毎日1話更新予定
★この作品の第一部の結末は、1話を書いた時点である程度決まっています。どうか考察しながらお楽しみいただけると幸いです★