夢……そして現実
気がつくと、私は『学校』にいた。
どうやら入学式の直後のようだ。
大学か、専門学校なのだろう。
周りにいるのは子供ではなかった。
どこかで見かけた人、昔の友達、世代もバラバラ。
何故か分からないが、『看護』の学校のようだ。
賑わいに溢れる教室では、誰も先生の言うことを聞いていない。
新生活をどうするのか、サークルはどうするのか。
それはもう、楽しそうに話している。
みんなは僕を知っているような、知らないような、そんな雰囲気を醸し出しつつ、会話には参加させてもらえた。
話しているうちに、吹奏楽部に誘われることになった。
もう何年も楽器は吹いていない。今の自分にできるだろうか。
そこで、不意に場面が切り替わる。
学園祭? ステージが見えた。
そこでは誰もが知っている、ルパン三世の曲が奏でられていた。
スカパラも真っ青なくらい、超絶に上手い演奏だった。
そのステージの真ん中で、バリトンサックスをノリノリで吹いている私がいた。
おかしい、バリトンサックスなんて吹けるわけがないのに。
ちょっと憧れはあるけど……。
また場面は切り替わる。
今度は授業を受けていた。
これは……介護の授業?
とんでもないことに、先生はいかりや長介だ。
トイレの便座に座り、立ち上がる高齢者を自ら実演していた。
こういうとき、どのように介助すればいいのかを、生徒を指名して答えさせている。
トンチンカンな答えをする生徒に対して、だめだこりゃ、と言っていた。
クラスはどっと沸き、私も思わず笑ってしまったが、こんなのありえない。
いったい私は何をしているというのか。
再び場面が切り替わる。
そこは職員室、目の前にいたのは、昔お世話になった恩師。
耳は聴こえないけど、こちらの話すことは口を見ることで理解できる。
その恩師に、自分の置かれた状況を必死に相談した。
恩師は面食らった顔をしていたが、うんうんと頷き、まずは帰ろうと言ってくれた。
そしてまた場面は教室へ。
そこはもうカオス。
サークル活動が、なぜか教室で行われている。
吹奏楽部が楽器を吹き鳴らし、ど真ん中ではバレーの試合。
後ろではキャッチボールをしている人もいれば、隅っこで卓球をしている人もいる。
でも、なぜかみんな私のことを認識していない。
誰に話しかけても、そこに私がいると分からないようだ。
やはり、ここは私がいる世界ではないのでは……。
ふと時間を見ると、もう間もなく夜中の十二時になるところだった。
やばい、ここがどこか分からないが、こんな時間じゃ終電もバスも無くなっている。
なんだか、これではまるでシンデレラだな。
とにもかくにも、私の席――と思われるところから荷物を抱え、教室を飛び出した。
おかしい、そんなことあるか。
コンクリート造りの真新しい教室から出たら、そこは古びた木造の階段だった。
降りても降りても一階にたどり着かない。
永遠に続くと思われる階段を降りていたら、途中に薄暗い教室があった。
夕日を浴びながら、恩師が私に手を振っていた。
夜中じゃなかったのか……?
でも、恩師の顔はとても優しく、温かい笑みだった。
そして、私は現実に戻った。
やはり、これは夢だったのだ。
枕元に置いてあるスマホには、午前七時と表示されている。
ああ、良かった。帰ってこれた。
ベッドから立ち上がり、あたりを見回す。
そこで、大変な現実を目の当たりにした。
掃除されていない、洗濯物が山になっている、食器も洗ってない、ご飯も炊いていない!
もうすぐ! 彼女が! 帰ってくる時間なのに!
そして、再び私はベッドで目覚めた。
ああ、良かった、夢だったか。
スマホを見れば、午前八時。
部屋も綺麗だし、洗濯物も干してある。
流しはとても綺麗だ。良かった、これで一安心だ。
目覚めのコーヒーを飲みながら、ふぅと一服つける。
そこで私は、恐ろしい現実に直面した。
『ご飯炊いてない……』
ご飯は慌てて炊きました(●´ω`●)