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3 ギルド職員

ギルドの案内役。

私はギルド職員の、クライヒ・リーデベルンと申します。

本日は当ギルドにおいでいただき、誠にありがとうございます。本日は見学に来られたと言うことですので、緊急の案件がない限りは内部をできるだけご案内致します。


当ギルドでは、冒険者と呼ばれる自由市民の方々にその日限りの職を提供させていただいている場でございます。稀に季節一つなどに及ぶ場合もございますが、その場合は事前にそれを契約の内容に組み込みます。


はい、ご質問でしょうか?なるほど、他国から来たためにご存知なかったのですね、自由市民のことを。


自由市民とは、姓を持たぬものです。彼らは我々固定市民と違い、住む場所が得られません。自分の家を持てないのです。また固定市民とは違い、国境を越えるにはある程度の審査がいりますが、それは大して手間ではありませんね。


ここクリストア統治領では、自由市民が姓を得たいならば固定市民と結婚するなり養子になるなりして、縁を結ぶしかありません。また、冒険者を続けることはできません。


自由市民が職を得られるのは、冒険者と奴隷業、傭兵などだけですから、なかなか需要と供給が噛み合わないのが実情です。家の姓を捨てることは難しくありませんので、それも関係しているでしょうが、なかなかに数が減らないのも事実です。


ギルドは確かにギルドぶんの税を納めておりますが、自由市民の金には誰もが手をつけられません。要するに税を取られないのです。しかし、その収支は全く計算されずに盗難にあっても自己責任になります。


怪我・病気などであっても、固定市民ならば定額を支払うだけで済みますが、自由市民は怪我の度合いに応じた金額の請求をされますし、その後の生活に支障が出る怪我をしたところで、その後の生活が保障されることはないです。

国を救った英雄級ならば、貴族などの厚意で救ってもらえる場合もありますね。ただ、本当にごく稀な話ではありますので、滅多にないこととお考えください。


おおよそわかったでしょうか?

自由が欲しい場合は自由市民を。

安定と保障が欲しければ、固定市民を。

固定市民から自由市民になるのは簡単ですが、固定市民になるのは難しいということです。


では、お話を元に戻させていただきます。


冒険者ギルドの主な仕事は、

・依頼の受注

・依頼の斡旋

・依頼人への報告

・依頼の正当性の調査

・冒険者同士の諍いの仲裁

・冒険者と固定市民との諍いの仲裁

などなどです。そのほか細かいものをまとめれば、さらに多岐に渡ることになりますが、おおよそは、依頼を受けてくれて、それを適切な冒険者に提示してくれるということですね。いわば、仲介職です。


また冒険者に対して、補助を行う運び屋などを斡旋するのも当方の仕事です。が、彼らに対して失礼な言動をとったりするものは少なくありません。

そのため、素行が悪ければ即刻冒険者ギルド名簿から名前の抹消を行い、商人連合や宿屋協会から情報を集めて、干上がるようにいたします。


縮み上がらなくても結構でございますよ。我々はすべき説明をしているに過ぎませんので、あなたにそれが降りかかると言うわけではございませんので。


おおよその業務の時間は朝早く、夜早いというのがほとんどですよ。稀に夜中に襲って来た魔物、あるいは魔物の狂種による大規模襲撃などの討伐で緊急招集があるのですが、それは稀と言えましょう。

それから、当方では新人に対する講習などは一切行なっていません。何度も提案はしているのですが、金銭的な問題によってそれは現状不可能ですね。そうすればもう少し運び屋の方等々の負担が減るのですけれどもね。


以上が冒険者ギルドの概略になります。

何かご質問はありますか?


ふむ、あの受付嬢の方ですか。

彼女はパム族と言います。北東方向の遠方の国に住んでいるそうで、ハーナー宗主国と。

はい、その通りですね、首から下がモヤのようになっていて、首と手がまるで浮いているように見えますが、れっきとした人間です。

見たことがなかったでしょうが、あれが彼女らにとっては普通です。


彼らは頭から薄いヴェールを被り、そして口元にも同じような薄手の布をつけるんです。そして、そのヴェールの縁には、黒の糸で編んだレースをつけるのです。


夜中にもし会ったとしても、お化けでも見たような顔はしないであげてください。

あれでもなかなかに優秀な職員ですから。


この場所での仕事の賃金ですか?

一概には言えませんね。一番安いのは、受付嬢をしている方たちでしょう。冒険者に合いそうな仕事を斡旋したりするだけの彼女らは、一月にだいたい棒銀10ほどですね。


そして、次点が事務職です。彼らは膨大な量の計算を一日にこなさなければならないので、我々とは違ってかなり残業なんてのもあるみたいですよ。給料は棒銀15ですね。


一番高いのが、派遣調査員。彼らはあらゆるところに行って、依頼内容が怪しく無いかを精査します。簡単なものであれば一日ほどで終了します。ですが、暗殺者などを警戒する貴族が相手だと殺される危険があったり、また夜中に森を抜ける必要があったりするので、魔物にも襲われやすく、その代わり方銀が三枚ですね。

冒険者上がりが多いです。


おおよそですが、これでよろしいでしょうか?

え、私の業務は何なのか、でしょうか?ふふっ、当ててみてくださいな。初めてでは当てられない人が多いですから。


それでは、実際に業務を行っているところを見ましょう。ちょうど先ほどのパム族のディキ・ヘルヘアが受付の業務を始めましたので、行って見ましょう。


「セディアさんですね。今日の薬草採取はどうでしたか?」

「あ、はい。採取の仕方はきっちり教わって、メモも取ってあったんで、大丈夫でした。こっちが依頼の品です」

「品質は……問題なさそうですね。他の点についても、大したことはなさそうです。同時に何か討伐はなされましたか?」

「いえ。その辺りは全く」

「何か強力な魔物がいた痕跡はありましたか?」


冒険者の方が、ひたいに親指をグリグリ押し当てて、ふっと下から見上げるようにディキさんを見つめています。こういう時は急かさないのが一番なのですが、彼女でなければおそらく急かして記憶違いのことを喋らせたかもしれません。

情報の正確さは、スピードよりも重要視されることですから。


「スニの木が、少しかじられていた気がします」

「スニの木が?……ダズウォークさん、間違いありませんか?」

「ああ。間違いねえ、スニの木『だけ』がやられてたな」

「そうですか。火急の案件になるような気がしますね……報告ありがとうございました。今回の依頼において情報の提供がなされたので、ひと束方銅貨五枚に棒銅貨三枚を追加しておきますので」

「あ、ありがとうございます!」


ああやって、森にいつも入っている冒険者から情報を得て、ダンジョンの冒険者からはダンジョンの情報を得ます。そして、その違和感をきちんと精査して、ギルド側で緊急依頼を出すかどうかを決定するのです。


今回スニの木だけがかじられていたのは、魔物学者のヴォルヴォン・ドアン・ヘンリエッケさんに尋ねて見なければわかりませんが。

彼はギルドの相談役ですね。主に魔物のことについて、その習性から討伐すべきかどうか、どう倒すべきかなどを判断します。


さて、おそらく今のやりとりで緊急招集がかけられますので、私もそろそろ向かわねばなりません。

当ギルドへの就職をご希望であれば、ぜひまたお越しください。何度でもお待ちしておりますよ。

お読みいただきありがとうございます。

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