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閑話;河村童児

男の娘河童、河村童児こと通称カワちゃん視点の閑話です。ちなみに、鏡夜と舞はこの会話の時既に寝ています。

オイラの名前は河村童児。こんな可愛い見た目でも正真正銘の男である。まあ、オイラ的には男でも女でもどっちでもいける口だから勘違いされる分には全然構わないのだが。

突然だが、オイラは人間が大好きだ。それはもう愛してると言っても過言ではないくらい。

ただ、昔からそうだったのかというと少し違う。オイラが産まれたのは確か江戸時代くらい(これでも妖怪ではかなりの若手っスね!)だったが、子供のころはオイラは両親にさんざん人間に近づいてはいけないと言い聞かされていた。それもそのはずで、当時オイラは河童の中でもかなり力の弱い一族の出で人間に襲われれば勝ち目がなかったからだ。

しかし、近づいてはいけないと言われたらつい近づきたくなるのが本能ってもんだろう。少なくとも、オイラはそうした。オイラは、以前から時々滝壺に訪れては修行をしていた坊主頭の男に近づき、徐にその男の前に姿を現した。

その男との出会いが、オイラの人生を大きく変えることとなった。

その男は、突然現れたオイラを見て始めこそ驚いた表情を浮かべていたが、オイラが何もせずその男の様子を見つめていると、なんと河童のオイラに向かって話しかけてきた。

「お前・・人間の言葉は分かるか?」

今度はオイラが驚く番だった。まさか、人間の方から自分に話しかけてくるとは思わなかったのだ。これは後から分かったことだが、その男は引退した陰陽師だったらしい。その男が直接オイラに教えてくれた。というのも、オイラはその後も頻繁に男に会いに行き、元陰陽師であるその男に妖術の使い方を教えてもらったりしたからだ。そのお蔭で、オイラは普通の河童より何倍も強くなることが出来たし、男と一緒に修行をする過程で人間に化ける術も覚えた。ただ、その時化けた人間の姿は、何故か女のような姿になってしまった。しかし、男がその姿を可愛いと褒めてくれたから今でも変化する時はこの姿にしている。あー、今思えばオイラこの時から男も好きになり始めたんだったけなー。

男は、話をするのが上手かった。自分の陰陽師時代の経験などを面白おかしく語ってくれて、オイラはそれらの話の全てが新鮮で楽しかった。そんな話の中でも、オイラが特に興味を持ったのは『寺子屋』の話だ。寺子屋は、同じ年くらいの子供たちが集まって色んなことを学ぶことができるらしい。オイラは、そんな寺子屋に自分も通いたいなと思った。

だから通った。思い立ったら即行動!これ河童界の常識ね?・・いや、こんなことする河童はオイラだけか。最初は正体がバレルのではないかという不安もあったが、男と一緒に修行をして会得した変化の術はかなり高度なモノだったらしく、正体がバレルことは全くなかった。

そして、オイラは『寺子屋』・・つまり『学校』というものにハマってしまった。妖怪は、寿命だけは腐るほどにある。ただ、その長い寿命を謳歌するには強くなければならない。そうでないと、誰かに殺されてしまう。オイラの両親は人間に殺された。しかし、それでオイラが人間を恨むことはない。弱ければ死に、強ければ生き残る。それだけの話だ。

幸い、オイラは強かった。だから、糞ほど長い寿命を学生生活を送るためだけに費やした。江戸時代は寺子屋に通い、学校というものが出来始めてはそれに通い卒業したら関係者からオイラに関する記憶だけを消して再び新入生として別の学校に通うことの繰り返し。

オイラは、学校の雰囲気が何よりも好きだった。学友たちとのたわいもない会話、新しい知識を教えてくれる授業、そして時折恋もしてみたり・・そんな青春臭いことのできる学校が好きで好きでたまらなかった。いつまでもそんな日々が続くと思っていたある日のこと、オイラは運命の出会いを果たした。

それが、今オイラの目の前に居る晴明先輩と“ご隠居”先輩との出会いだ。


▼▼▼▼▼


「童児、お前頼んでいたものちゃんと持ってきてくれたか?」

「もちろんっスよ!先輩の頼みをオイラが忘れるわけがないじゃないっスか!」

オイラが鞄からファイルを取り出し、晴明先輩に手渡すと、晴明先輩は“ご隠居”先輩と顔を並べて真剣な表情でファイルの中の資料を読み始めた。

実は、オイラが今日この店に来たのは依頼をするためではなく、晴明先輩にこの資料を持ってくるよう頼まれたからだ。そのことを彼女(・・)に悟られないように、前から少し困っていたぬり壁達を追い払うことを名目にしたのだ。

・・それにしても、あの二人いつも思うけど距離近すぎじゃないっスか?あれで夫婦じゃないっていうんだから驚きっス。

そんな内心は顔に出さずに、オイラは晴明先輩に一応注意を投げかける。

「晴明先輩、それ一応流出させちゃいけない個人情報っスからね?くれぐれもオイラが警察署から持ち出したってことバレないようにしてくださいよ?」

「ああ、もちろん分かってるさ。サンキューな童児。もしかしたらこれからも時々こうして頼むかもしれないが、その時はよろしく頼むぞ?」

「もちろんっス!大船に乗ったつもりで任せてほしいっス!」

「泥船じゃなければいいのじゃがのう・・。」

晴明先輩からの感謝の言葉に思わずテンションの上がるオイラに“ご隠居”先輩が不安そうな目を向けてくる。だけど、そんな“ご隠居”先輩の少し冷たい態度にも少しテンションが上がってくる。

オイラが今回大学で出会ったこの二人。一人は、オイラが初めて出会った人間の子孫。もう一人は、その式神。

オイラは、今回だけは晴明先輩が死ぬまでは学生巡りを辞めて同じように年を重ねていきたいと思うのだ。

・・ところで、晴明先輩は、轢き逃げ事件の被害者の個人情報なんかを知ってどうするつもりなんだろうか?まあ、何となくは分かるけど、今度ちゃんと理由を教えてもらいたいものである。

次は、一旦しょうもない日常パートを挟む予定です。

その後は、いよいよ第一章のラストパートに突入します。

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