第四十六話:第一次ディベート大戦④
Windows10となったうちのパソコンにまるで夏休みデビューした幼馴染に対するような感覚を覚える今日この頃。
さて、私の質疑パートが終わったところで、いよいよディベートも大詰め、反駁パートとなる。否定側第一反駁を担当するのは、顔面に口しかパーツのないいかにも口がよく回りそうなお歯黒べったりだ。
このお歯黒べったり、やはりなかなかの強者だった。
「えー、まずアンタらの立論で、昔は人間と妖怪が共存できていたから今もできるみたいな主張してたと思うんだけどー、質疑で裂けちんが言ってたように今と昔じゃ人間の思考も文明レベルも全然違うわけじゃん?それなのに同じことが言えると考えているなんてホントWhy?って感じだわー。」
「次、もし人間のなかに妖怪を受け入れてくれる奴がいるとしても、それってごく少数だと思うワケ。多くの人間はたとえ表面上は受け入れたふりをしても差別意識は絶対残るから妖怪と人間が平等な立場で互いに利益を得るなんて無理ゲ―。だって人間って同じ人間同士でさえ差別して争いあってるじゃん?種族からして違う妖怪を受け入れるはずないじゃん。」
「そして、アンタたちの立論では、人間に恨みを持っている妖怪たちについては全く触れていなかったよね?もしプランを導入してそんな妖怪たちが人間と関わったらアンタたちのだーい好きな人間が死んじまうぜ?そんな危険を孕んでいるようなプランはそもそも導入しない方が吉だと思うんですけど?」
などと言った反駁を超高速で捲し立てていった。それはもう口が回るわ回る。私はフローを取りながら思わず「お前は外郎売か!」と突っ込んでしまったほどだ。・・・落語分からない人はごめんね。
てか、早すぎて途中からほとんどフロー取れなかったし。そして、この超高速&的確な反駁に真っ青になったのは肯定側第一反駁を担当することとなったカワちゃんだ。
「・・晴明先輩、オイラ今無性に腹が痛くなってきたので代わりに出てもらっていいですか?」
「そうか。それならお前に代わりに第二反駁をやってもらうことになるがそれでもいいか?」
「・・・・・。」
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「それでは、肯定側第一反駁担当河村童児、前に出るのだ!」
閻魔様の声が響き渡り、どこか吹っ切れた様子のカワちゃんが怖いくらいの満面の笑みで立ち上がった。
「ハーイ♡ちくしょうやってやらぁぁぁぁ!!!!」
「おい河村。若干素が出ておるぞ。」
“ご隠居”はそんな状況でもクールにツッコミは忘れない。私も、心の中でカワちゃんにエールを送った。・・え?直接言えって?ははは、冗談。今のカワちゃんに話しかけるような勇気一般ピーポーの私にはないですわ。だってあの子目がイっちゃってるもん。
ただ、カワちゃんには本当に頑張ってもらわなければならない。先ほどの否定側第一反駁では、プランの実現可能性を徹底的に叩かれ、そもそもメリットが成立しないみたいな感じにボロクソ言われていた。この反駁に再反駁をしなければ、そもそもメリット事態がなくなってしまう危険がある・・そう晴明に言われた。私はお歯黒べったりの反駁をほとんど理解できていない。だって私途中からフロー取れなかったんだもの。まあ、ディベート初めてなら仕方ないよね?そう晴明に言ったら殴られました。なぜだ。
さて、そうこうしているうちにカワちゃんの反駁が始まった。結果的に言えば、カワちゃんはよく頑張った。お歯黒べったりの反駁に対し、「立論でも実際に今妖怪を受け入れている人間の例を挙げているっス!」や「差別意識は確かになくならないかもしれないが、争いになる立証はないっス。それに、このプランで利益を受ける妖怪は人間に恨みを持っている妖怪ではなく人間に好意を持っていて住処をなくしている妖怪っス。」などとメリットの規模は少し小さくなったがメリットが発生する筋道だけは死守した。しかしながら、否定側立論に対する反駁は時間がなくて「質疑で確認した通り、人間と妖怪の間で争いが起きるというのはあくまでそちらさんの憶測でしかなくしかも規模すら分からない非常に曖昧なものっス!」とだけしか言うことができなかった。まあ、しかしながら二分という短い時間内でよくここまで言えたと褒めるべきであろう。私は、晴明と“ご隠居”からのダブルラリアットを受けて昏倒するカワちゃんに手を合わせておいた。
一方、相手側は既に勝利モードでニヤニヤとした笑みを浮かべながらこちらの様子を見ていた。実際、今はあちらが優勢なのは事実なので、私は何とも言うことが出来ずとりあえず睨みだけはきかせておいた。
その時、やけに青い顔をしているぬり壁の姿が目に移った。
「さあ、いよいよディベートも最終局面であるな!フハハハ!両チームここまでなかなかいい試合を魅せてくれているぞ!おかげで先ほど舞にもらったポップコーンは既に空だ!実に美味であった!よし!では否定側第二反駁担当、チームリーダーぬり壁!前に出るのだ!」
「おおお、おう!」
ぬり壁は、先ほどよりもより一層真っ青になった顔のまま、お立ち台へと歩き始めた。その様子を見たチームメンバーたちが心配そうな声をあげる。
「・・おい、これぬり壁姐さんやばくね?手と足が両方同時に出ちゃてるんですけど?」
「姐さん案外緊張しいだからな・・。まあ、そんなとこも可愛いんだけど、今はマジヤバめだわ。」
「・・姐さん、実は私より震えてたの。本職の私よりよっぽどぶるぶるっぽいの。」
そんなチームメンバーの不安は的中し、完全にあがってしまったぬり壁は先ほどのお歯黒べったりの反駁を繰り返すだけでロクな第二反駁は出来なかった。その様子を見たうちのチームの頼れるリーダーは、口元にいつもの不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「こんなのは第二反駁とは呼べない。鏡夜、よく見ておけ。俺が本当の第二反駁ってもんを見せて勝利を掴んでやる。」
次回、このディベートシリーズは終了します。晴明の華麗な第二反駁をご堪能あれ!




