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第四十三話:第一次ディベート大戦①

このディベート、立論はおそらく全部書きますが、反駁とかは多分一部しか書きません。ご了承くださいませ。

「それでは、只今より、地獄を統べる覇者こと、偉大なる余、閻魔大王主催のディベート大会を行う!フォーマットは立論4分、質疑2分、第一、第二反駁共に二分の若干短縮バージョンなのである!それでは、両チームの選手、前に出るのだ!」

椅子の上に立ち偉そうに無い胸を反らして仁王立ちする閻魔大王の声に合わせ、私達はお互いに向き合った。私達は五人いたので、ぬり壁達はこれで初めて誰がディベートに参加するのかを知ることとなった。案の定、私達四人の姿を見たぬり壁は余裕そうに鼻で笑ってこんなことを言った。

「ふん。陰陽師に妖怪にオカマね。まあ、後ろのピンク髪がメンバーに入ってたとしてもウチらの敵じゃないッショ!」

そのいかにもこちらを見下したような言葉に、一瞬場の空気が凍り付く。

はわわ!これもしかして晴明さん激おこ?なんかすごい無表情なのが逆に怖いんですけど!?“ご隠居”も間違いなく切れてますわー。だって隣に立っているだけで寒気がやばいもん。表情がどうなっているかとか怖すぎて見れないわ。

「何っスかアイツ!オイラのことをオカマ呼ばわりして!ムカつくっスね!ぶっ倒してやりましょう先輩方!」

そんな空気を打ち破るように、河村の明るい声が響く。そんな後輩の言葉に応えるように、晴明もいつもの不敵な笑みを口元に浮かべていた。

「当り前だ。この試合、必ず勝つぞ!」

「「おう!」」

舞も含めた、私達の鬨の声が響き渡った。

さて、気合も入れなおしたところで、私達はあらかじめ“ご隠居”が用意した長机に向かう。その途中、私は先ほどの凍てつく空気を見事取っ払ってくれた河村にお礼を言うことにした。

「河村さん、さっきはありがとうございます。」

「え?ああ、別に礼を言う必要はないっスよ。ああいうのも後輩の役目っスからね。・・あ、でも、礼の代わりにオイラのことをカワちゃんって呼んでくれないっスか?オイラ本名男くさいから先輩たちにもそう呼んでくれって言ってるんスけど全然呼んでくれないんスよ。」

そんなことなら簡単だ。私も、見た目は女の子みたいに可愛い河村さん相手に河村とか童児とかって呼ぶのは違和感があったんだよね。

そんなわけで、今から私の中で河村さんはカワちゃんと呼ぶことにする。

そんなことをカワちゃんと話しているうちに、こっちもぬり壁達も準備が終わった。そのことを確認し、ジャッジ担当閻魔様は一番手“ご隠居”を呼んだ。

「よし、準備が整ったようだな!では、肯定側立論担当“ご隠居”、前に出るのだ!」

閻魔様に呼ばれ、“ご隠居”は椅子から立ち上がりディベート用のお立ち台へと向かう。その途中、「頑張って!」と声をかけたら、にぱっと笑みを返してくれた。可愛い。

「肯定側立論、時間は四分間である。準備はいいか?」

「おーけーなのじゃ。」

「では、はじめ!」

閻魔様の合図で、晴明チームVSぬり壁チームのディベートバトルの火ぶたが切って落とされた。


▼▼▼▼▼


「肯定側立論。人間と妖怪が共存することによるメリットは一つじゃ。それは、『得られる利益』。現状では、妖怪は昔に比べると徐々にその存在が排他されてきておる。それ故に、住処や食料を求め人間を襲う輩も増えてきておるくらいじゃ。しかしその一方で、人間と共存する道を選んだ妖怪もおる。彼らの中には、ただ単純に人間が好きなだけの奴もおるが、その多くは人間と暮らすことで利益を得ようとする者達じゃ。彼らは、人間の作る食べ物、道具、芸術などを共存することで受理している。さらに、共存することで利益を得るのは妖怪だけではない。人間もまた妖怪によって得られる利益があるのじゃ。実際に、トンネル工事などでは工事を行う前に必ず祈りをささげるという風習がある。それは、その地に住まう妖怪の存在を信じるからこそできる行為。そして、祈りをささげられた妖怪はその人間たちのために安全を確保する。また、特殊な例じゃが、サキュバスなどは快楽を与える代わりに精を奪う。これも互いに利益を受理しておる良い例じゃろう。さて、このプラン・・人間と妖怪が共存するというプランを導入すればどうなるか。まず、もちろんそれまで人間から隠れるように暮らし生きるのに困っておった妖怪たちは助けられるじゃろう。また、人間も妖怪と関わる機会が多くなる分得られる利益は大きくなる。しかし、こんな現実味のないプランを本当に実行できるのかとも思うかもしれん。しかし、先ほども言ったように人間たちの中には妖怪の存在を信じ理解を示す者達がおる。また、過去には妖怪と人間は共存できておったのじゃ。それ故、『人間と妖怪が共存する』という決まりを作ってしまえば問題なく十分に実現できるものじゃと考える。したがって、妖怪はこれまでの閉鎖的な生活から逃れ人間の文化の益を得、また人間もまず妖怪に襲われないという点でも得になるのに加え、さらに副次的な利益も期待できるこのプランを導入することは、大変重要じゃ。これで、肯定側立論を終了する。」

“ご隠居”は、制限時間の四分ぎりぎりを使って、肯定側立論を言い終えた。肯定側立論の内容は事前に少し聞いていたから、今回はメモを取るのは楽だった。

あ、ちなみにディベートの流れは基本的に『フローシート』と呼ばれる紙に書くことになる。これを書いておかなければ、自分のパートの質疑や反駁が上手くできない。今回使用しているフローシートは晴明お手製で、今なら百枚セットでなんと破格のゼロ円!さあ買った買った!

・・なんて冗談は置いといて。

次は、“ご隠居”の立論に対し、相手が質疑する番である。私も担当するパートであるので、ここはしっかり聞いておきたい。立ち上がったのは、口裂け女。名前からして喋るのが上手そうな感じがする。

私達の・・もといほとんど“ご隠居”が作った立論は、決して完ぺきではない。むしろところどころツッコミどころはある。そこを相手がどう突き、そして“ご隠居”はそれをどう返すのか。

“ご隠居”と口裂け女がそれぞれお立ち台に立ったところで、閻魔様が再び開始の合図を告げた。

「それでは、否定側質疑、時間は二分間!開始するのだ!」

次回は、否定側質疑と否定側立論の予定です。

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