第二十四話:泣き虫童子
昨日寝落ちしていて投稿遅れました!すいません!
「うえええええええ!?何するねんアンタたち!熱!ちょ、なんでうちの部屋燃やしとるん!?アホちゃうか!」
火の粉が飛んでくるのを避けるため慌てて部屋の外へ出た舞がそう絶叫する。私も突然のことに思考がついていけない。肌にじりじりと熱波を感じて、ようやく舞と一緒に"ご隠居"を止めにかかった。
「ちょっと!"ご隠居"何やってるんですか!依頼人の部屋燃やしちゃダメでしょー!私でもそれくらい分かりますよ!?」
しかし、"ご隠居"はこちらをちらりと見ただけで、まだ術を止めようとはしない。晴明やぬいたちも全く動じることなく冷静に部屋が燃える様子を眺めていた。
「大丈夫じゃ。ちゃんと考えてある。それに、火災保険には入っておるのじゃろ?」
「そういう問題ちゃうやろ!勝手に人の部屋燃やすなって言っとるねん!」
"ご隠居"が放った『火の華』は、ますます舞の部屋を燃やしていく。その炎が天井まで届きそうになったその時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「こ、こらー!おらの住みかに何するだー!」
そして、炎の中から飛び出してくる人影。しかし、ドロップキックを放ってきたその人物を、"ご隠居"は上半身を反らして華麗にかわす。一方、飛んできたその人物は、"ご隠居"の後ろにいたごんによって首根っこを掴まれて持ち上げられてしまった。
「は、放すだ!この巨人めー!」
ごんに掴まれてじたばたもがくその人物を、私は改めてじっくりと見つめた。
飛び出してきた人影の小ささからも分かったが、それは小さな男の子だった。派手な金髪にジーパンという派手な格好をしているが、その分『東京』と大きく書かれたTシャツのダサさが際立っている。独特な訛りからも、何となく東京に憧れてやってきた田舎少年のような印象を受けた。
「・・てめえ、今アタシのダーリンに何て言った?ガキだからってダーリンを侮辱するようなこと言ったら容赦しないわよ?」
ぬいはそう言うと張り付けたような笑顔を浮かべたまま、すうっと目を細める。怖っ!
「ひ、ひいい!?すいませんだべぇぇ!」
ぬいの迫力に半泣きになりながら必死に謝る少年。・・正直、この少年には同情するよ。近くで見ているだけの私も超怖いもん。私の『怒らせてはいけない人ランキング』にぬいさんの名前も登録しておこう。
「あら?そんな謝罪で許されると思っているのかしら~?・・二度とその減らず口叩けないように、この場でその臭い口縫い合わせてやろうかしら。」
「ぬ、ぬい姐さん・・それぐらいにしてやりいな。もうその男の子マジ泣きしとるから!」
ぬいに脅されてマジ泣きしている男の子の様子を見かねた舞が、ぬいを慌てて宥める。というか、いつの間にかぬいの呼び名が『ぬい姐さん』になってますが・・舞さんも怖かったんですね。
「舞ちゃんがそう言うなら・・おいそこのガキ。命拾い、したわね♡」
こ、こえええーー!!!
私がぬいの怖さに戦慄していたその時、「あれ!?」という舞のすっとんきょうな声が聞こえてきた。
「何でなん?さっきまで燃えてた部屋が、いつの間にか火消えてるで!?」
その声につられて私も部屋の中を見て、そして舞の言葉通りすっかり元通りになっている部屋の様子を見て「ほわい!?」と外国人ばりのリアクションをしてしまった。そんな私達の様子を見て、"ご隠居"は得意そうに胸を張る。
「どうじゃ?儂の魅せる幻は。現実と見紛うほどリアルだったじゃろ?」
そして、そんな"ご隠居"のを晴明は満足そうな笑みを浮かべてわしゃわしゃと撫でまわす。
「よくやった!流石俺の"ご隠居"だ!」
"ご隠居"は、「止めぬか。髪が乱れるじゃろ・・。」と言いながらも照れ臭そうに頬を少し赤らめている。しかし、そんなほのぼのとした光景を見せ付けられても、こちらはまだ色々と納得できない。
「ちょっと"ご隠居"!あれは流石に幻では済ませませんよ!だって私実際熱さを感じたんですからね!」
「そうやで!うちも熱くて慌てて部屋から飛び出したんやから!」
「お、おらは髪の毛が少し燃えただ!あれが幻ならそんなことならないはずだべ!」
私達三人からの追求を受け、晴明は仕方なさそうに解説をしてくれた。
「あのな・・"ご隠居"の幻は特別なんだよ。お前たちはこういう話を聞いたことがあるか?ある人に目隠しをさせた状態で、手首に金属を当て、水が滴る音を聞かせると、そのある人物は自分の手首から血が滴り落ちていると思い込んでショック死してしまうという話だ。"ご隠居"の幻は、五感全てに作用し、強制的にその思い込みを造り出す。」
そこで、晴明は一旦話を止めてにやっと笑ってみせた。
「・・だから、部屋には全く被害はないが、あのまま部屋にいたら焼け死んでいただろうな。自らの思い込みで。」
何それ怖い!というか、幻など実質防御する術がないから何気に最強能力なのではないだろうか?"ご隠居"が言うには、幻を完全に幻だと思うことが出来れば全く効果はないらしいが・・あのリアルさなら、それは不可能に近いことだろう。
「まあ、儂も実は今回は失敗すると思っておったのじゃが上手くいったな。相手はあの座敷わらしだった故、支配領域内では幻術も効かぬと思っておったが・・」
"ご隠居"が何気なく呟いたその台詞は、しかしながらなかなかに聞き捨てならないものだった。
「え?ちょっと待ってください。座敷わらしって・・この子がですか!?」
私は、未だ半泣き状態でごんの手に掴まれ空中をぶらぶらしている少年を指差しそう叫んだ。
だって、座敷わらしって・・あの座敷わらしでしょ!?子供なのはイメージ通りだけど金髪とか完全に座敷わらしのイメージから外れてるよ!
しかし、そんな私の疑問に、晴明は簡潔にこう答える。
「いや、どこからどうみても座敷わらしだろ。特に、都会に憧れて田舎からやってきた少年が都会に馴染めてない感じとかがいかにもそれっぽいだろ?」
・・納得の説得力だった。
次回、座敷わらしの身の上話です。今日の夜にはあげます。




