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第二十二話:うち、幽霊見えるんです

とりあえず自己紹介も終わったところで、私たちは依頼人―舞さんの話を聞く準備を始める。今日はいつものカウンター越しではなく、喫茶店のテーブルに座って話を聞く体制だ。そして、ぬいとごんが隣のテーブルに座っているのもいつもとは違う。

てきぱきと話の場を整えていく私たちと店の中とををきょろきょろと見渡しながら、依頼人の舞さんがふとこんなことを言った。

「やっぱりこの店は本物なんやな・・。さっきはぬいさんしか分からんかったけど、人間じゃないのがこんな仰山おるなんて普通ありえんもんな。」

その言葉に、私だけではなく皆一様にピタっと動きを止めた。既にテーブルの向かいの席に座っている晴明が、舞さんに尋ねる。

「・・君は、なんで彼らが人間じゃないと思うんだ?」

「え?だって、うち霊感あるんやもん。ちっちゃいころから、幽霊なんかバリバリ見えとったからな。ここに居るのは幽霊じゃないのがほとんどやけど、何となく人間と違う感じは分かるんよ。」

舞はそう言って得意気に胸を張ってみせた。一方、私は軽く興奮状態だ。

おお!やっぱり生まれつき霊感が強い人とかっているんだ!今まで会った人たちにはそんな人いなかったからなんか新鮮だよ。

あれ?でも、晴明も生まれつき霊感が強いんだったっけ・・?

そして、その晴明はというと舞が霊感があるということを聞くと何故か急に血相を変えて舞に対し何やら耳打ちをしていた。私には耳打ちした内容までは流石に聞こえなかったが、舞が少し顔を赤らめて「おっけー。任せとき。」と言ったことから、何か頼み事をしたのだろうということだけは分かった。そして、その返事を聞いてほっとしたようにため息をつく晴明と”ご隠居”。どうやら、”ご隠居”は晴明が舞に何を言ったかが分かっているらしい。

一体、晴明はあんなに血相を変えて何をお願いしたのだろうか?

「ふへへ・・いや、イケメンにこんな近くで耳打ちされたら、息遣いとかいろいろヤバいな。よい体験したわ。」

「あら、舞ちゃん。この男に騙されたらダメよ?こいつ、とんでもない女好きだから、下手するととんでもないことされちゃうわよ♡」

「キャー!とんでもないことって、こんなうら若き乙女捕まえて何するつもりなん?晴明さんのエッチー!」

「こら、なに勝手に人の変な噂流しているんだ!まあ、女好きは否定しないが!」

否定しないのかよ!

「えー、コホン。話がそれたな。では、改めてお話を聞きましょう。本日はどういった依頼内容で?」

咳ばらいを一つして、仕事モードへと切り替わった晴明がまじめな顔を舞へと向ける。それを受ける舞も心なしか真面目な顔になって、依頼内容を話し始めた。

「あのな・・うち、半年前大学生になって上京してきたんやけど、その時から住んでいたアパートで変な泣き声が聞こえてきて気になるねん。それを調べてほしいんや。」

え、それだけ?今までの依頼人たちとは違って、かなりあっさりとした依頼内容に、私が驚きを隠せないでいると、晴明も同じ気持ちだったのか、こんな質問をした。

「なんだか、随分とあっさりとした依頼内容ですね。本当に、調べるだけでいいんですか?」

「いや、だって・・な?幽霊って普通うちらでは声聞くことはできんやん?うちは昔っから幽霊を視ることはできたけれど、声を聞くことはできなかったから、そう思っとるんやけど・・陰陽師はんもうちと同じなん?」

なんと、この人は自らの感覚で幽霊に関する決まりを理解しているらしい。晴明も、感心したように少し眉を上げて、返答をした。

「はい、その通りです。幽霊の声は普通人間には聞こえない、というので認識はあっています。まあ、私レベルになると普通に声も聞けますが。」

晴明はそう言うと、他の幽霊に関する決まりも舞に軽く説明してやった。舞は、晴明のその話を目をキラキラと輝かせて何度も頷きながら聞いていた。

「へえ・・!眼鏡をかけた方が見やすいとか、幽霊は自分が死んでいるのに気づかないとか、そんな決まりもあるんやな。・・あ、だからか。」

晴明の説明を受けて、何かに納得した様子の舞。そんな舞を、晴明は刺すような目線で睨み付けた。

「わ、分かっとるって。そんな怖い顔しんどいてえな。うち、こう見えて空気が読める女って言われているんやで?」

あ、私と同じだ。でも、こう言っちゃ失礼だけどこの人も私と同じ『自称:空気が読める女』な気がするな。

「まあ、とりあえず話戻すわ。そんでな、うち幽霊と話せないのが癪やったから、読唇術覚えたんよ。何を話しているか聞こえなくても、口を動かしているのは見えるから、それで何を言っているか分かるっていう寸法ってわけよ。」

この舞という女性、どうもなかなかの努力家のようだ。そして、好奇心もかなり強いらしい。今回の依頼も、そんな彼女の強い好奇心ゆえのものだった。

「それで、今回依頼したわけなんやけど・・幽霊らしき奴の声は聞こえるのに、その姿が見えんのがもどかしいんよ!だから陰陽師はんに正体突き止めてもらおう思ったわけさ。絶対、この目で幽霊もどきを見てやるんや!」

次回、舞の住むアパートに突入します。たぶん。

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