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第十三話:妖夫婦のぬいとごん

今回初登場の新キャラ・・なかなかに濃ゆいです。

女将さんの事件が解決した翌日、”ご隠居”が作った朝食に晴明と二人で舌鼓をうっているところに、彼らはやってきた。

「晴明~、今下にいるんでしょ~?ぬいとごんが、給料を受け取りにこんな朝早くからやってきちゃいました~♪」

私たちの頭上、つまり店の方から聞こえてくる声は女性のものだ。そして、その声を聞いた瞬間今までご機嫌だった晴明の顔が苦々しいものへと変わった。

「あー・・あいつらが来たか。厄介だな。」

私は、晴明のその反応に思わず目を丸くする。

「・・おい、なんでそんな驚いた顔しているんだ?」

「いや、晴明さんは女性なら誰でも鼻の下伸ばす変態野郎だと思っていたので。」

私がそう答えると、晴明は頭をポリポリと掻きながらこちらから目を逸らした。

「・・いや、最初はもちろん声をかけたんだけどね?既婚者だったのは知ってたし、妖怪だけど、美人だし?まあ、殴られたがな・・夫に。」

いや、それは当たり前だろうが!ていうかお前相手が既婚者でもナンパするのかよ!マジで見境なしか!

私は、心の中でさんざん晴明を罵倒しつつ、表情だけは変えずに別のことを晴明に確認することにした。

「妖怪って・・今上に来ている人たちって、妖怪なんですか?てか、妖怪ってマジでいるんですか?」

「ああ、もちろんいるさ。っていうか、お前の横でカップラーメンすすっているサトリも妖怪だって言わなかったっけか?ちなみに、あいつらは狗神と九尾の異色カップルだ。」

「へえ、そうなんですか~。凄いですね。」

・・うん、私、このたった数日でこいつと話をするときのコツをつかんできたよ。気になることをいちいちツッコんでいたらこっちが疲れるだけだしね。

それに、ここ数日驚くような話ばかり聞かされてきたせいか、妖怪の夫婦が来ていると知っても大して驚くことはなかった。それに・・

『「カップラーメンは至高の食べ物だ。人間の生み出したモノの中で、これが最も偉大な発明かもしれないな。」サトリは、おいしそうにラーメンをすすりながらそんなことを言ってみ・・ズズズズ!』

私の隣で、”ご隠居”が作った和食オンリーの朝食ではなく、カップラーメンをすするサトリ。その姿は、相変わらず無表情だが、初対面の時の不気味さはなく、普通の人間の女の子に見える。

”妖怪”と言われれば不気味だが、その正体はただ少し変わった人間みたいなモノなんじゃないか?

「おーい、なんで私たち待たせてるわけ~?アタシ、退屈なので~・・今から晴明が出てくるまで、店の机を一秒ごとにぶっ壊していきまーす☆アタシのダーリンが♡はい、いーち!」

「・・一。」

「わお、ダーリンカッコいい!クールに破壊するね☆じゃあ次、にーい!」

「・・二。」

「ちょっと待ったお前らぁぁぁ!店の設備をそれ以上壊すんじゃねえええええ!!!!」

頭上から聞こえてきた不穏な声に、晴明は慌てて階段を駆け上がる。その後ろ姿を見て、私はこう思った。

・・前言撤回。”妖怪”は『少し』じゃなくて『かなり』変わった奴みたいだね。


▼▼▼▼▼


「はーい☆自己紹介しまーっす!アタシは、”狗神”の『ぬい』!普通にぬいって呼んでね♡そして、アタシの横にいるイケメンは、マイダーリンの『ごん』!あの有名な”九尾”なんだよ!カッコいいでしょ~?」

「・・・よろしく。」

朝食を食べ終わった私は、スープを飲み干そうとしているサトリを置いて、”ご隠居”と一緒に階段を上がりカウンターへと出た。そこで私は、先ほど晴明が言っていた妖夫婦の姿を初めて見た。

『ぬい』と名乗った方は、オレンジ色の髪をポニーテールにしてまとめている、見るからに明るそうな女性だった。そして、先ほど晴明が言っていたようにかなりの美人さんである。スタイルは抜群だし、目鼻立ちはくっきりとしていて、特に、キラキラと輝きを放つ金色の瞳が印象的だった。そして、そんな彼女はなぜかメイド服を着ていて、それがまたかなり似合っていて、彼女の魅力を倍増させている。

それに対し、隣に立つ彼女の夫、『ごん』は、ぬいの言う通りイケメンではあったが、ぬいとは全く印象が違っていた。白銀の長い髪を後方で一つに縛り上げ、腰のあたりにまで垂らしているその男は、刃のような鋭い目をしていた。その緑色の瞳は穏やかでいて、何物にも屈さぬ意志の強さが感じられる。そして、そんな彼も、タキシードを着たウェイトレス姿が、妙に似合っていた。

それもそのはず、私が来たことに気付いた晴明が話してくれたところ、彼らこそ晴明たちのBARの昼の姿、喫茶店『狐狗』の店員だったのだ。

「まあ、アタシたちはあくまで、この店の場所を貸してもらっているだけだから、オーナーは晴明ってわけなの。分かったかしら、イケメンちゃん♡」

ぬいにそう言ってウインクをされ、私はハハハ・・と苦笑いを返す。そう、このぬいという女性は、なぜか私のことをいきなり『イケメンちゃん』と呼んできたのだった。ぬい曰く、

「貴女、なんか・・かわいい系って言うより、カッコいい系って感じよね!イケメンちゃんって呼んでいいかしら?」

ということらしい。晴明は、そんなぬいの様子を見て処置なしといったように手を軽く上げて首を振っている。そして、その隣にいるごんは・・・

「・・・・・・・・・・・・。」

お前なんか喋れよ!

「・・・そういえば・・カナウにはお主たちの手伝いをさせなくていいのか?ここに住む以上喫茶店での仕事も覚えねばならぬじゃろう?」

これまでなぜか私の後ろに隠れるようにして立っていた”ご隠居”が、私にとっては予想外のそんなことを言いだした。

次回、鏡夜の喫茶デビューです。

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