メッセージフロム、白雪プリンセス。
猿)「さあ、では次のメッセージをズー姫!」
ズ)「はいっ。えー、RN白雪プリンセスさん18才の高校3年生。私には今、すっごく気になってる人がいます」
猿)「うんうん」
ズ)「その男性は、ウチの学校の臨時講師です!」
猿)「なんと、先生に惹かれちゃったかあ」
ズ)「気になってるとは言っても、まだ好きとかそういう気持ちがあるわけではありません。なんていうかこう、放っておけないんです」
猿)「先生相手に放っておけないとは、どういうことなんだ?」
ズ)「頭脳明晰、運動神経は銀河系最強クラスで、背も高くて顔も結構イケメン。節度ある応対は心得ているし、女性のエスコートも完璧。そしてなんと、料理を作らせたらこれまた絶品。純和風の朝ごはんから超ゴージャスなキャラ弁まで、なんでもござれの凄腕料理人。もう炊事洗濯家事育児……はまだ分からないけど、でもでも、並みいる女子たちが揃ってかしずく女子力の高さ。もうホント、完璧超人ここにありって感じの——」
猿)「ちょちょ……待って待ってズー姫」
ズ)「なんですか?」
猿)「メッセージ長過ぎない?」
ズ)「そう……ですねー。パソコンに表示されてるメッセージを読んでるんだけど、スクロールバーがちっちゃいです(笑)」
猿)「なんだよー、白雪プリンセスも愛は盲目状態なのか? これ全部読んでたら番組終わっちゃうよ。それに最初の頭脳明晰、運動神経は銀河系最強クラスってまたスケールがデカイし」
ズ)「いやー凄いですねこれはー。このあとの文面なんですけど、この男性のことを長々と褒めながらけなしてますよ」
猿)「何に葛藤してるんだよ白雪プリンセスは」
ズ)「んー、どうやら女子力で負けてるコトが悔しいみたいな?」
猿)「ふーん。まあここに書いてある事が大袈裟じゃなく事実なら、そんじょそこらの女子じゃ太刀打ちできないよ、この臨時講師の男性には」
ズ)「……ですよねー」
猿)「お、どうしたズー姫。なんかしょんぼりしてない?」
ズ)「そー見えますかーT^T」
猿)「白雪プリンセス! ここにも女子のプライドを砕かれたヤツがいるから安心しろ」
ズ)「えぐっ、ひぐっ……」
猿)「さてさて脱線してしまいましたが、要点をかいつまんで教えてよ」
ズ)「……ぐすっ、はい! えーとですね、普段何かと世話になっているその男性に、お礼がしたいってコトみたいです」
猿)「おお、ものすごく簡潔だな。しかし放っておけないの部分はどこへ行ったんだ?」
ズ)「私職業踊り子なんで、ストレートに伝えるのは得意なんですっ」
猿)「いいよもうその逸話は。またの機会にしてよ」
ズ)「えへへ、そうですね」
猿)「それで、お礼のチョコが渡したいと。文面からすると、朝ごはん作ってもらったりとかもしてるんでしょ? んー、前後関係がよくわからないな。男性臨時講師が、朝から女子生徒の家に出向いて朝ごはんを作るなんてシチュエーションは、普通あり得ないよ」
ズ)「親御さんがいないんじゃないですかねー?」
猿)「それハル閣下だから! ハル閣下、強く生きろよ!」
ズ)「あ、メッセージの中腹に謎を解くヒントがありますよ」
猿)「お便り募集コーナーで、なぜ謎を解かなきゃならないんだ?」
ズ)「まあまあ、ヒコさん。どうやら白雪プリンセスさんが通う学園は、彼女のおばあちゃんが理事長で、男性はそのおばあちゃんの紹介で臨時講師になったみたいですね」
猿)「ほう。何か一気に現実味を帯びた話になったな。公私ともに世話になっているうちに、気になる存在になっていったってことなんだろうな、たぶん」
ズ)「そうですねー。もしかしたら白雪プリンセスさんが気付いてないだけで、実は結構両思いになってたりして」
猿)「ふーん、まあ男女の色恋についてはまさに、事実は小説よりも奇なり、だからなあ。白雪プリンセス! 君はちょっと、アツくなると周りが見えなくなりがちな感じがするからな、チョコを渡す時も1人で舞い上がったりしないように。落ち着いてな、感謝でも好意でも思ったことを言葉にすればきっと伝わるから。がんばれよ!」
ズ)「がんばってね!」