メッセージフロム、リーフグリーン。
ズ)「じゃあ次のメールでっす。えー、RNリーフグリーン、16才の高校1年女子ー。猿田さん雨野さん、こんばんは!」
両)「こんばんはー!」
ズ)「私には、チョコを渡したい男子がいます。ですがその男子は遠くに行ってしまって、帰ってきません。
いつか戻ってくるとは言っているのですが、それがいつなのか、彼にも分からないそうです」
猿)「ほう。遠距離恋愛かな?」
ズ)「今はときどき、矢文で文通しています」
猿)「や……矢文?! いつの時代の話だ! それに目と鼻の先の距離にしか届かないだろ?!」
ズ)「ヒコさん、これは恋する女子高生の比喩表現ですよお」
猿)「どんなレトロな比喩だよ! でもアレだ、あの、要するにEメールとかSNSじゃなくて手紙でやり取りしてるって事なんだな?」
ズ)「そういうコトですね、きっと。素敵だと思いますよ、手書きのメッセージだなんて」
猿)「確かにねー。それは貰う方もきっと嬉しいだろうね」
ズ)「自分で言うのもなんですが、私はいわゆるお姉様キャラです」
猿)「お姉様キャラ!」
ズ)「部活も弓道部で男勝りな性格なので、男子も寄り付かず、私もだんだん普段世話を焼いている同性が好きなのかなって密かに悩んでいました。彼女と無理心中を図ったコトもあります」
猿)「ヤバいだろソレ、ヤンデレ気質じゃないか?!」
ズ)「でもある時、昼休みに呼び出されて、その男子に愛してるって告白されたんです」
猿)「ライクとラブを履き違えてないだろうな? ヤンデレ気質だったら有り得るぞ。大丈夫か?」
ズ)「だいじょーぶですよお、それくらいわきまえてますって」
猿)「ふーん、なら良いけど」
ズ)「でも私がはっきり返事を返す間もないまま、その男子は遠くに行ってしまいました」
猿)「あー、転校前に思いの丈をぶつけるパターンか」
ズ)「それで今度、自分の想いをのせたチョコを矢文に括り付けて贈りたいと思っています」
猿)「矢文ネタ引っ張るな〜。要はレターパックみたいなヤツのコトだろ?」
ズ)「そこはもう矢文で良いじゃない。夢がないなー、ヒコさんは」
猿)「いやごめん、そうだよね。矢文かあ。そんな風にポジティブに考えたら、遠距離恋愛も少しは楽しめるってもんなのかな」
ズ)「そうですよ。普段会えない分、そういう設定を設けて楽しむっていうのはアリだと思いますね」
猿)「そうだな。よし、矢に括り付けるチョコは、ハートの形のシンプルなヤツが良いと思うな」
ズ)「わあ、素敵素敵。それで相手の心臓を撃ち抜きたいですね」
猿)「ズキューーン!」
ズ)「快……感……」
猿)「うん! うまくオチたところで、えーとリーフグリーン、素敵なバレンタインデーになるコトを祈ってるよ!」
ズ)「がんばってください!」
ブランケットの下で足をもじもじさせながら、花梨はくすくすと笑う。
猿田ヒコマロの提案するハートの弓矢に思いの外感銘を受けて、花梨はまたひとつ、四角いチョコレートを頬張るのだった。