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もうすぐバレンタイン

 平日夜9時。

 恋に悩める中学乙女出海花梨(いづみかりん)は、この日もイヤホンを装着しながらスマホアプリを起動させた。


 ブッシュウウウウウゥワッシャアァアアア

♪えっふえっむヤマト、はっちはっちいーち♪


『う〜、チアフルワンダフル〜!』


「こんばんはー、FM大和の猿田ヒコマロ【以下、猿】と⤴︎」

「雨野ウズヒメ【以下、ズ】でっす!」


猿)「この番組チアフルワンダフルは、思春期真っ盛りの中高生をメインターゲットにした、若者応援ラジオです!」


ズ)「でっす!」


猿)「今日は立春です!」

ズ)「立春でっす!」


猿)「この時期といえば!」

ズ)「いえば?!」

猿)「少年式のシーズンです!」

ズ)「なんですと?!」


猿)「我々FM大和のパーソナリティ達もですね、また一歩大人の階段を上がる若者たち、まっ、今回の場合特に14歳になる中学2年生たちの為にですね、県内様々な中学校にお邪魔してお話をさせていただく、という事をやることになっております」


ズ)「ほうほう」


猿)「ですので中学2年生の皆さん! 僕たちが君たちの学校にお邪魔した時にはですね、僅かながらですが人生の先輩として、実になる話もし」


ズ)「話もし!」

猿)「君たちの悩みなんかにもバンバン答えて!」

ズ)「バンバン答えて!」

猿)「楽しい時間を過ごしたいですので、宜しくお願いします!」


ズ)「お願いしまっす!」


猿)「……と、こんなテンションでイケないのが少年式なのです」


ズ)「イケんのかいっ!」

猿)「そりゃイケないですよ。少年式っていうのは本来、厳かなもんなんです。だからそんな自由にやらしてはもらえないですよ」


ズ)「まーねー、確かにねー。ヒコさんのこのテンションで少年式に乗り込んだら、ソッコーつまみ出されそうだよねー」


猿)「そうそう。だから、いつもチアフルワンダフルを聴いてくれてるリスナーのみんな! 面白おかしい講義みたいなものは期待しないでくれよ、こっちも緊張感をもって臨むんだからな」


ズ)「えっ、ヒコさん緊張感なんてもてるの?」

猿)「もてるよ! 只のお祭り騒ぎヤローじゃないよ俺は」

ズ)「ふーん、そうにしか見えないけどなあ(笑)」


猿)「……まあいいや」

ズ)「いいんかいっ」


猿)「ということで、今日のテーマに参りましょう!」

ズ)「おおう、モノスゴイ方向転換ですな!」

猿)「いきますよ? 今日のテーマはズバリ、バレンタイン!」

ズ)「バレンタイン! 今までのフリはなんだったんだ?!」


猿)「気にするな! ただの時事ネタだ!」

ズ)「よし、気にしない!」


猿)「さあ、ということでね。君たちのバレンタインにまつわるエピソード、また悩みや相談なんかもジャンジャン聴かせてくれ! 宛先はこちら!」


ズ)「メールアドレスはチアワン@FMYドットコム、ファックスは0120チョメチョメでっす! 沢山のメールファックス、お待ちしておりまっす!」


猿)「それでは今日のオープニングナンバー、もうウラで流れてますが、アース・ウィンド&ファイアと言えばこの一曲——」


 小粋なパーソナリティの会話を聴きながら、花梨は自室の勉強机に腰掛けて、頬杖をつく。

 環境に配慮して、っていう訳ではないけれど、エアコンの設定温度が低めで少し肌寒い。だから大きめのブランケットを膝にかけた。

 彼女が落とした視線の先、机上に見開き置いてあるティーンズ向けのファッション誌の特集ページにもまた、ちょうどバレンタインの文字が踊っているのだった。

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