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八十一話 細工は進み、仕上げを待つばかりです

 バークリステは、杖を振って戦い続ける。


「たああああああ! 『スケルトン』め、次から次に、飽きないことですね!」


 言葉の中に、ショートカットのキーワードを呟き、壊した分以上のレッサースケルトンを、バークリステが召喚する。

 その演技派な姿を見ながら、バークリステたちも魔法をショートカットで使えるなんて、嬉しい誤算だったなって、フードの中で笑みを強める。

 ま、俺が画面操作した場合と比べて、ショートカットに登録できるのは一つか二つらしいけど。

 でもそのおかげで、こうして台詞にキーワードを混ぜることで、戦っているバークリステ本人が召喚しているとは、周囲に気づかれずにすんでいるんだけどね。

 いやぁ、フロイドワールド・オンラインの隠し芸でみた、演劇の方法が役に立つとは思わなかったよ。

 さて、今の俺は、悪い神官だ。

 ここは、バークリステにレッサースケルトン壊されて、悔しがらないといけないな。


「ぐぬぬぬぅ。こしゃくな、聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスの、女神官め! ええい、そいつを囲んで捕まえろ!」


 俺の命令に、レッサースケルトンたちの狙いが、住民たちではなくバークリステ一人に向けられる。

 バークリステはこのことに驚いたようで、「えっ、聞いてない!」って顔をしていた。

 でも、このアドリブにも対応して、必死に群がるレッサースケルトンを杖で殴り始める。

 命令は捕まえろなので、怪我や死ぬ心配はない。

 けど、そう教えないほうが迫真の戦いをしてくれるようなので、このまま頑張ってもらおう。

 さてさて、バークリステのように逃げる住民の殿をしているのは、他に五人いる。

 バークリステと離れたがらなかった、リットフィリア。

 額にも目がある、ウィクル。

 二対の腕を持つ、アーラィ。

 そして、まだ聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティス教徒な、マッビシューとアフルンだ。

 『キ』の字な主要道路、俺たちの反対側の縦棒の端にリットフィリア、横棒の部分を残り四人に担当してもらっている。

 自由神の神官となっている、リットフィリア、ウィクル、アーラィは、レッサースケルトンやロットンゾンビやウィークゴーストのどれかを召喚しながら、それと戦っているはずだ。

 マッビシューとアフルンには戦闘はさせずに、中央にある一番大きな教会に、住民たちを避難誘導することに終始してもらっている。

 そして、他六人の子供たちは、召喚したアンデッド種とともに、住民たちを追いまわしていることだろう。

 さて、この状況で怖いのは、兵士や傭兵みたいな、戦える人たちだ。

 呼び出しているアンデッド種は、数を揃えるために弱い存在ばかりにしているから、戦おうとされるととても困る。

 それを防ぐために、バークリステたちに殿をさせて、戦える人たちが出てきにくい雰囲気作りをしている。 

 もちろん、功名心が高い人は、きっと前に出てくるだろう。

 そこで、見るからに怪しい邪神の神官な、俺が拡声魔法で大声を出し、道の上に姿を現していることが生きてくる。

 功名を得る絶好の餌はここにいるぞと教えているわけだから、そういう人たちをこの場所に集める効果が期待できるわけだ。

 他の場所に行く人も、きっと少なからずいるだろう。

 けど、邪神の手先役の子供たちには、そういう人たちを見たらアンデッド種に戦いを任せて身を隠せといってあるから、死ぬようなことはないはずだ。

 さてさて、いままさにバークリステより前に出てまで、アンデッドたちと戦おうとする人々が現れた。


「この町を守るのは兵士の役目。貴女は避難誘導を!」

「ネェちゃん、よく一人で頑張った。あとは俺たちに任せときな!」


 ずらずらっと二十人ほどが、殿に現れた。

 それは兵士っぽい板金鎧をきた人だったり、革鎧に両手剣ていう傭兵っぽい人たちだった。

 逃げる人波に逆らって、よくここまで来れたなって感心してしまう。

 さて、ここからは第二段階だ。

 殿をしていたバークリステたちは、彼らにバトンタッチして、住民を教会へと避難させる。

 そしてできるだけ、教会に避難民を入れ、自分たちもその中に入ることが次の目標になる。

 教会に入ったバークリステたちは、そこで騒動を起こす。

 でも、その未来が来る前に、俺とエヴァレット、そしてスカリシアは、目の前にいる人たちを蹴散らさないといけないんだよな。

 さてさて、悪な神官っぽく、ダークな見た目の魔法の選択をしないとな。




 魔法や杖を駆使して、殿を務めようとした男たちを、地面に這い蹲らせることに成功した。


「うぅぅ……体が、動かない……」

「うげぇ――気分が、悪い……」


 殺してしまうと、生き証人が少なくなってしまうので、出来るだけ非殺傷系の魔法を使ってみた。

 要は、麻痺や毒などで弱体化させて、手足の一本でも折ったわけだ。

 こうして無力化した後は、邪神官っぽい理由をつけて、そこら辺に転がして置くことにしよう。


「くひひひっ。お前たちは、生かしておいてやる。後で回収して、生きたままスケルトンの仲間入りをさせてやろう。くひひひひひ」


 そんな事を言いながら、彼らを縄で縛って道端に放置する。

 戦闘とこの行動で時間がかかったので、だいぶ住民の避難は進んでいるみたいだった。

 けど、教会にも許容人数というものがある。


「入れてくれ! せめて、この子たちだけでも!!」

「ここの教会はもういっぱいで入らない。中央の教会へいけ!」


 教会の出入り口が堅く閉ざされ、締め出された人たちが、中央部にある大きな教会を目指す。

 彼ら彼女たちが一目散に逃げる中、『キ』の字の下側で追い詰め役だった子達と、合流した。


「一人、この教会に張り付いて、レッサースケルトンたちに出入り口や建物を叩かせ続けてください」

「その役、やりたい」


 真っ先に手を上げたのは、片目が灰色なクヘッリタ。

 俺は彼女の頭を撫でると、それ以外の全員とレッサースケルトンたちと共に、ゆったりとした足取りで住民を追っていく。

 少しして、誰かの大声が聞こえてきた。


「落ち着いて中に入れ! まだまだ空き部屋がある! 全員は入れるはずだ!!」

「そうよぉ。落ち着けば、怪我をしないで、逃げ切れるわぁ」


 声から、マッビシューとアフルンが、中央の教会で避難誘導をしているみたいだ。

 きっと、住民を守る役の子達も、頑張っていることだろう。

 さて、ここまで中央の教会に近づいたから、追い詰め役の子達に合図を出さないといけないな。

 拡声魔法を再度使用してから、周囲に響くほどの大声を発する。


「ふぅははははー! 逃げるがいい、逃げるがいい! もう夜だ! 聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスの威光よりも、夜闇の力が増す時間! そう、我が邪神が力を発揮する時間だ!!」


 威勢がいい言葉だけど、これは追い詰めるスピードを緩める指示だ。

 町に溢れるアンデッド種が、召喚主の命令に従い、進む速さがゆっくりとなる。

 けど、このことに住民は気がついた様子はなく、我先にと教会の中に入っていく。

 それから二十分もしないうちに、集まった住民たちが全て教会に入った。

 殿を務めて戦った、バークリステ、リットフィリア、ウィクル、アーラィ。避難誘導をした、マッビシューとアフルン。

 この六人も、避難民に招かれるようにして、中に入っていた。

 その後で、俺たちの侵入を阻むように、教会の入り口は堅く閉じられた。

 さて、ココから先は、中に入ったバークリステたちの頑張り次第だ。


「エヴァレット、スカリシア。中の様子は聞こえますか?」

「はい。支障なく」

「もちろんですとも。どうやら、教会の神官と口論が始まったようですわ」


 一応、目論見通りに、事がすすんでいるなと、少し安心する。

 けど、ぼやっとはしていられないので、追い詰め役だった子達にこの町から離れる準備を指示しつつ、教会の中がどう決着するか待つことにしたのだった。


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