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自由(邪)神官、異世界でニワカに布教する  作者: 中文字
二章 悪しき者たちに会いに行こう
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四十八話 ダークエルフの暮らしぶりは、自然と共にあるみたいです

 降参させたダークエルフたちに案内させて、俺とエヴァレットは森の中を歩いていく。

 やがて視界の先に、集落らしきものが見えてきた。

 しかしながら――


「――エヴァレット、あれがダークエルフの住んでいる場所なのですか?」


 そう思わず尋ねてしまったのには理由がある。

 前に訪れたゴブリンの集落は、木々を切り倒した空き地に住居を作っていた。

 しかし、目の前にあるダークエルフの集落は、それとは違っている。

 小さな木は打ち払って囲いに使っているけど、大きな木はそのまま残してある。

 そして住居は、木の葉を纏わせた、大きな毛革のテントだった。

 この集落の姿は、元の世界の光景では見たことがないけど――


「遊牧民が森で暮らしている、というようにしか見えないですね」


 俺の呟きを受けて、エヴァレットは目をこちらに向けてきた。


「神遣いさまのお考え通りです。ダークエルフは森の中で、居住地を常に変えています。しかし遊牧民ではなく、狩猟民族ですが」

「つまりダークエルフは、森の恵みや動物を求めて、移動する民族なのですね。少し意外でした」


 元の世界の日本にある、ファンタジーな常識だと、エルフやダークエルフは定住しているのが一般的だったからだ。

 そしてダークエルフは、瘴気漂う森か荒野の穴倉に住んでいるという、少し悪者っぽい描写が多かった。

 なので、こうして普通の森の中で移動テント暮らしをしているだなんて、思いもしなかった。

 けど、冷静に考えると、この世界ではこっちの方が利点が多いよな。

 野生動物や木の実を森全体から均等に取れるし、常に住居を変えるから聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスの信徒たちに、居所をつかまれる心配も少ない。

 ペンテクルスの従者から聞き出した情報に、ダークエルフの集落の情報がなかったのは、この生活スタイルが原因なんだろうな。

 そして、こういう生活を続けているからこそ、ダークエルフは生き残っているのだろう。

 目に見える生きる知恵に感心しながら、俺は集落の中を進んでいく。

 すると、周囲にいるダークエルフたちが、俺に視線が向るのを感じた。

 多くの視線は、純粋に興味を持ってのもみたいだった。

 耳がいいダークエルフの住民たちだ、俺が神遣いと呼ばれる存在だということは、集落中に広まっていると考えたほうがいいんだろうな。

 少し警戒しながら集落の中を歩いていくと、同行している一人のダークエルフが、エヴァレットを大きなテントに連れていこうとする。


「申し訳ありませんが、エヴァレットをどこに連れて行くつもりですか?」


 不意に言葉をかけると、そのダークエルフは怯えた表情を向けてくる。


「あ、あの、エヴァレットをつれて来いと、長老さまが……」

「ほほぅ、そのテントには長老がいらっしゃるのですね。では、私も挨拶しに伺わないなければならないのではないでしょうか?」


 遠回しに、俺をどこに連れて行くつもりかと問いかける。

 すると、先ほど俺に杖で腹を殴られて悶絶していた方の、男性ダークエルフが答えてくれた。


「神遣いさまには、最長老にお会いしていただくことになっている。それにエヴァレットのことは心配はいらない。なにせ、長老というのは彼女の祖父だ。単なる帰郷の挨拶にしか過ぎない」

「お祖父さまですか。それならますます、私が挨拶しに行かなければならないのでは?」

「……申し訳ないが、後にしてもらいたい。最長老はかなりの高齢で、明日をも知れない命。あまりに悠長にしていると、ダークエルフが崇めるべき神を、神遣いさまに探していただく手がかりが失われる危険性もあります」


 なんだか言葉を尽くして、エヴァレットの祖父に会わせたくないらしい。

 理由は色々と思い浮かぶけど、俺を祖父に会わせるかの決定は、エヴァレットに任せてみよう。


「エヴァレット。私は貴女と共に長老に会わず、一人で最長老に会ったほうがいいのでしょうか?」

「はい。お気になさらなくとも、単なる帰郷の挨拶をするだけです」

「そうだぞ。同胞たる者に危害を加えるなど、ダークエルフはせん!」


 男性ダークエルフに、俺は白い目を向ける。


「よく言いますね。さきほど、エヴァレットが針鼠になりそうなほど、矢を当てたではないですか」

「あ、あれは、おま――神遣いさまを狙ったのであって、エヴァレットが庇わなかったら当たらなかった。こちらに彼女を傷つける気はなかった」


 ふーん、そういうことにしておこうかな。


「じゃあ、エヴァレット。そちらはお祖父さんにお会いしてきなさい。私は最長老さまに会ってきますので」

「はい、神遣いさま。また後ほど、お会いしましょう」


 言葉を交わして別れ、俺は再び集落を歩いていく。

 案内された先は、最長老がいるにしては、こじんまりとしたテントだった。

 四人も入れば他は入らないほどの大きさを見て、俺は首を傾げる。


「ここに最長老さまが?」

「はい。ほぼ寝たきりなので、大きなテントは世話する人の邪魔になると」

「そうなのですか」


 最長老と呼ばれるだけあって、自分の権威よりも他人を気遣うことが出来る人格者なようだ。

 さて、これから会うのは、人間よりも長寿なダークエルフでありながら、老衰で死にかけている老人だ。

 相手は経験や知識を、こちらが非にならないほど持っているだろうから、気を引き締めていこう。

 俺はうさんくさい笑みを顔に貼り付けてから、テントの中に入っていった。


キリが良い場所で切ったので、今回は短めになりました。ご了承ください。


そして唐突に露骨な自作の宣伝。

各種、違ったタイプの物語ですので、試しにご一読くださればと思います。


生まれ変わったからには、デカイ男になってやる!(連載中)

http://ncode.syosetu.com/n0106db/


テグスの迷宮探訪録(本編完結)

http://ncode.syosetu.com/n8589cg/


竜に生まれ変わっても、ニートはニートを続けるのだ!(完結)

http://ncode.syosetu.com/n9596ce/


王都近くの森の聖剣守さん(童話:完結)

http://ncode.syosetu.com/n7439ck/

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