三十六話 サキュバスの里って、これがですか?
サキュバスの里へ向かって、俺とエヴァレットは山越えに挑んでいた。
クレーターの縁だし、切れ目の部分を回りこんで向こう側にいく予定なので、山越えとはいえないかもしれない。
けれど、それに近い山登りをしているわけだ。
この他に安全な道がないわけじゃないらしいんだけど、エヴァレットにその道を使うことを止められていた。
「里の湖から流れ出る川沿いと山を貫通するトンネルに、聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスの教徒の息がかかった砦が、一つずつあるのです」
ここでもまた、聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスかと、影響力の強さに少しうんざりしてしまう。
「なんでまた、そんなことをしているんでしょう。常に監視を立てるぐらいなら、過去に災害などの責任を押し付けて、悪しき者として抹殺していた方が楽だったと思うのですが?」
「サキュバスが外に出てこないよう監視すると語っているらしいですが、裏ではサキュバスの薬を求めて保護しているのだそうです」
なんとまあ、俗物的なりゆうなことで。
どんな薬を欲しがっているか、だいたい想像つくし、想像通りだったら男だから俺も一つぐらい欲しいけどさ。
それにしても――
「――聖教本とやらで悪しき者と定めた人々の薬を欲するなんて、聖大神の信者には真っ当な人がいないのでしょうか」
「神からして生物を善悪に分ける傲慢さがあるので、信徒に期待するだけ無駄ではないかと思います」
それもそうかと納得しながら、山登りを続ける。
三日かけてクレーターの向こう側までやってくると、今度は山下りを始める。
その最中、生い茂る木々の向こう側へと視線を向けると、なんともいい景色が広がっていた。
円形に整った、まるで王冠みたいなクレーターの縁が、視界の端から端まで続いている。
その縁の裾野まで緑の森が覆っていて、森の切れ目から先は草原になり、やがて色とりどりの作物がある畑になっていた。
中心部にいくにつれて家の軒数が増えていき、中央にある湖周辺は完全に町だ。
その町から二本の道が、クレーターの外へと続いているのが分かった。
一つは細い石畳の道。こちらはトンネルに繋がっている。
もう一つは広い幅の川。こちらはクレーターの底まで達するほどの深さがある、縁の切れ目に繋がっているようだった。
この光景に、日本の盆地にある町を思い出したけど、そこまで発展はしていないなと考え直す。
けど、懐かしさは感じた。
もっと近くで見てみたいと足が軽くなり、エヴァレットの先導を受けつつサキュバスの里へ歩みを進めていった。
クレーターの縁を越えてから、一日で縁を降り、二日目で森を抜け、三日目の今は草原を歩いている。
なかなか中心部につかないなと考えていると、ようやく畑が近くに見えてきた。
言葉を交わすには遠いけど、姿形を見る分には可能な距離に働く人の姿も見えた。
早速、この世界のサキュバスってどんな人たちなのかと観察する。
「……エヴァレット。あの人たちはサキュバスなんですよね?」
そう思わず尋ねてしまうほど、働いている人たちは普通の姿だった。
ラノベだと際どい服を着ていたけど、薬師として滞在したあの村の人たちと同じような服装をしている。
男性も女性もいるようだし、触手のある姿ではないし、背中に翼のある悪魔の姿でもない。
単なる人にしか見えず、よくよく観察すると、尻尾や獣耳を全ての人が持っていて、角を持つ人も若干いるようだった。
うん、人間じゃないようだけど、普通の獣人だよな。
前の世界では居なかったから、普通って言うのも変だけど、サキュバスと言われるような見た目ではないように思うんだけど。
するとエヴァレットが、俺の疑問に答えてくれた。
「はい。あの人たちが、サキュバスと呼ばれている種族の、獣人たちです」
「うん? 獣人なのに、サキュバスなのですか?」
「はい……なにか変でしょうか?」
変かと聞かれると、前の世界の知識と照らし合わせると変なんだよね。
ファンタジーの話ではだけど、サキュバスはサキュバス、獣人は獣人と別れていることが当たり前だったし。
でも、この世界の常識では、エヴァレットのように変には感じないみたいだ。
なら、あの獣人たちには、サキュバスと呼ばれるに足る、何らかの特徴があるはずで――
「――薬を作ると言ってましたよね。ということは、あの人たちだけが、その薬を作る知識を持っているから、サキュバスと呼ばれているのですか?」
俺のこの予想は大外れだったようで、エヴァレットに首を横に振られてしまった。
「いいえ。彼ら彼女たちが自然と発するある種の香りが、他者に強い高揚感を生むそうです。なので、その香りを液体にし、香水として売っているのだそうです」
「つまり、他者を発情させる匂いを発するために、淫魔と人に呼ばれるようになった獣人たちですか」
ゲーム的に考えると、魅了を常時与えてくる獣人ってことだな。
そう考えると、対抗策が必要になる、意外と危険な相手のような気がしてきた。
しかしそうなると、この広々とした畑地帯はいいとしても、湖のほとりにある町中は、その危険な香りが充満しているんじゃないのだろうか。
そのあたりはどうなのかと、前に来たことがあるらしいエヴァレットに尋ねると、恥ずかしそうな身振りを見せてきた。
「は、はい。そのぅ……少し落ち着かない気分にはなりましたが、それだけです」
「それほど強い効果があるわけではない、というわけですね?」
「あの人たちが発散している匂いは、その通りです」
「そんな効果が薄いものを香水にして、売れるんですか?」
「いえ、その。香水はその匂いを凝縮して香りにして、効果を高めているそうです。ものすごい効果があると、自慢されました。里の名でもある、ジャッコウの言葉に恥じない威力だとも」
唐突に、聞き慣れない言葉が出てきた。
「ジャッコウ、ですか? どういう意味なのです?」
「ええっと、たしか――邪な者が発する他者を誘惑する良い匂い、という意味だったはずです」
微妙に日本語っぽい響きと意味から考えると、思わず『邪香』って字を当てたくなる。
そしてもしこの当て字が正解なら、なにかしら日本に影響された言葉や文化が、この世界にあるんじゃないかと思えてくる。
それはフロイドワールド・オンラインなのか、それとも別のなにかか。
むむっ、またこの世界の謎が深まってしまった気がする。
そのことに考え悩む前に、今はそのジャッコウの里の中心部である、湖のほとりに向かうのが先だな。
まだまだありそうな道のりを見て、少しげんなりしながらも、気合を入れなおして歩き続けた。
畑のある場所から、二日歩いてジャコウの里の中心地までやってきた。
早速、町の匂いを嗅いでみるが、特に芳しい匂いがすると言うわけではなかった。
けどなにか、一嗅ぎごとに頭に痺れるような感覚を覚える。
原因を考えて、思い浮かんだのは『フェロモン』だった。
たしか、匂いとしてはあまり感じないのに、脳に作用して体に影響を与える匂い物質だったはず。
ジャッコウの獣人は、たぶんこのフェロモンを多量に分泌する特異体質種族なんだろうな。
そう勝手に解釈していると、エヴァレットの視線がこっちに向いていることに気がついた。
「どうかしましたか?」
「――はっ!? い、いえ、なんでもありません」
慌てて顔をそらしながらも、ちらちらとこちらを見てくる。
そういえば、エヴァレットは前にこの里にきたとき、落ち着かない気分になったと言っていたっけ。
いまもそうなっていると思えば、近くに異性が居る状態だと、もっと落ち着かなくなっている可能性も。
そう考え、エヴァレットを意識した途端に、なんだか俺も落ち着かない気分になってきた。
どことなく、エヴァレットがより魅力的に見えてきた感じがして、視線が彼女の肢体に向かいそうになる。
だけど、これはフェロモンのせいだと自分を戒めて、視線をあまり向けないようにした。
「さ、さて、エヴァレット。私をこの里の誰に会わせると約束したのですか?」
「は、はい。この里を統べる長です」
「そうですか。ならすぐに行きましょう」
この里に滞在するのは、お互いに危険そうだからって理由は伝えずに、エヴァレットを急かして先導させる。
エヴァレットもあまりこの里には居たくないのか、足早に道案内をしてくれた。
そのことに安心しつつ、ここの里長に会うまでの道を歩きながら、周囲を観察してみた。
建物は中世ファンタジーにあるような、石を積んで白漆喰を塗った壁と木の屋根が多い。
住んでいる獣人は、見た目で大まかに分けて四種類に分けることができるみたいだ。
一番多い種類は、三角耳に長く細い尻尾な猫の獣人。暢気な性格なのか、家の前にあるベンチに寝転がって、日向ぼっこをしている姿を良く見る。
次に多いのは、額に円錐状の角があり、長い尻尾の先にふさふさとし毛がある獣人。のんびりと道を歩いていて、男性はかなり筋肉質で、女性は胸がゆさゆさと揺れているほど大きい。うん、きっと牛の獣人だな。
たまに見かけるぐらいなのが、木の枝のような角を額に持つ獣人と、頭の左右に丸くて黒い大きな耳を持つ小さな獣人。たぶん鹿と鼠の獣人かな。
獣人たちは全員が、のんびりとした雰囲気で過ごしている。
ときどきマーキングするように、お互いの体を擦り合わせている人たちも見かけたりするが、獣人だから変ではないんだろうね。
そんな平和な光景を見て、ここが聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスの教徒の思惑で作られた場所だと、つい忘れそうになる。
すれ違う獣人たちに会釈しながら、そんな事を考えつつ進む。
やがて、エヴァレットに案内されて、俺は湖面に接する大きな家の前にきた。
「ここが里長の家ということですか?」
「はい。連絡を入れてきますので、少々お待ちください」
離れていくエヴァレットを見送り、俺はこの場で観察を始めた。
周囲は高い柵で囲われていて、その先には漆喰が美しい白亜の砦のような重厚な屋敷がある。
日本では滅多に目に出来ない種類の家だけど、この規模の里を統べる人が住むに、相応しい出で立ちだ。
暴動や戦争になったとき、最後の砦として戦えるように設計もされている感じもある点に、居住性を追い求める近代建築とは違う魅力を感じる。
そう感じ入っていると、エヴァレットが戻ってきた。
「神遣いさま、里長が会いたいそうです。ですがその、あまり驚かないで上げてください」
「? 理由はよく分かりませんが、そうして欲しいのでしたら、そうしましょう」
驚かないようにというよりも、驚いても顔に出ないように、うさんくさい笑みで武装してから、この立派な屋敷の中へと入っていく。
そして、使用人らしき牛の獣人に案内されて、ある部屋へと通された。
応接室かと思いきや、天蓋つきのベッドが見えることから寝室のようだ。
エヴァレットが神遣いを見つけたら連れてきて欲しいと言われていたらしいから、病人なのかなと思いながら部屋に入る。
すると、カラメルを焼き焦がしてしまったような、甘く焦げ臭いような匂いが鼻をついた。
香水や芳香剤にしては変な匂いだなと思いながら、使用人に促されてエヴァレットと共にベッドに近づく。
そして薄幕の向こうに寝ている人を見て、驚くなと言われていたのに驚いてしまい、笑みの形に固めたはずの唇が引きつる。
それは猫の獣人で、歳は二十代に見える女性だった。
だけど、どこも見ていない光のない目、開きっぱなしの口、力なく投げ出されている手足、動こうとしない体。明らかに異常だった。
思わず、前の世界で啓発として見た、薬物中毒者の映像がフラッシュバックする。
しかし思い出した映像とは、違う点があることに気がつく。
このベッドに寝ている猫の獣人は、まったく痩せてなくて、むしろ血色がいい。
精巧な人形をベッドに置いたんじゃないかって思うほど、生気が感じられないことを抜かせば、健康体に見えなくもなかった。
どういう状況か理解できないが、とりあえずうさんくさい笑みは、努力してキープし続ける。
すると、俺の様子を見ていた使用人が安心したような顔になると、唐突にこの部屋の窓と言う窓を開け放った。
それから手に木製のパイプを持ち、乾燥させた草をつめ、同じ場所に息を吹いて赤く熱した炭の欠片を落とす。
やおら、あの甘く焦げた匂いがしてきた。
「お客様がた、これから里長がお吐きに鳴られる煙を吸わないよう、ご注意ください」
使用人は言いながら軽くこちらに礼をすると、パイプの吸い口をベッドの猫獣人――里長の口に押し当てる。
エヴァレットがそうするように、俺も口にローブの裾を当てながら、この光景を見続ける。
里長の口から、ほんの少量の煙が出てきたのが見え、同時に瞳に少し光が戻る。
すると唇がしっかりと吸い口を含み、より多く煙が吐き出され、里長の体に力が戻っていく様子が見えた。
やがてパイプに詰めた草が燃え終わる頃になると、まるで人形が人間に変わったかのように、里長は嘘のように元気な様子でベッドから起き上がった。
そして里長は、パイプを口にくわえたままで、軽い調子で言葉をかけてきた。
「やあ、エヴァレット。久しぶりだね。そちらが、君の探していた神遣いさまなのかな? 紹介してもらっても良いかな?」
「約束ですからね。神遣いさま、こちらサキュバスの里を治めておいでの、キルティ・エショットです」
エヴァレットに紹介されたので、いつまでも驚いてはいられないと、しっかりとうさんくさい笑みを浮かべなおした。
「初めまして。ジャッコウの里長さま。私は旅の神官でトランジェと申します。以後お見知りおきくだされば幸いです」
「キルティ・エショットだよ。キルティってよんでね。まあ、一応里長ってなっているけど、いま見てもらったように、この毒草の煙を吸わないと、もう起き上がれもしないし意識も保てない。そんな治めているなんて言えないような、お飾りであり人身御供だけどね」
苦笑いを通り越して、悲痛な笑みになっているキルティを見て、俺は何を言うべきか迷った。
けれど、俺がここに呼ばれた理由を考えて、あることを聞くことにした。
「……キルティさま。不躾な質問ですが、その草は聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスの教徒たちからの贈り物ですか?」
「ああ、次からは名前は呼び捨てていいからね。それで答えだけど、ご明察、その通りだよ。この毒草は一時の快楽と引き換えに、使用者の意識を混濁させる作用がある。常用者ともなれば、さっきみたいな姿になっちゃって、この煙を吸わないと話も出来なくなるのさ」
「そう知っていて、なお使い続ける理由とは?」
「里長になったら、死ぬまでこの煙を吸い続けることが決まりなのさ。一年の使用量も決まっていて、使っていない分があったら、里にいる他の獣人に吸わせなきゃいけない。さもなきゃ、見せしめに殺されてしまう。まったく、胸糞悪い決まりだよね」
困った困ったと痛々しく笑う姿を見て、俺の心に義憤が湧き上がる。
しかし怒りに任せた言葉を口に出しても、状況が変わるわけじゃない。
自由神の神官としてここにいるからには、それらしくふるまう必要があるはずだ。
そう自分に言い聞かせながら、うさんくさい笑みをキルティに向ける。
「それでは、キルティ。本題に移りましょう。エヴァレットに私――いえ、神遣いを見つけたら連れてくるよう頼んだのは、どのような理由からですか?」
「もちろん、この体を治して欲しいに決まっているだろう?」
「体を治す。それだけでよろしいのですか?」
「……なにがいいたいのさ」
キルティが不審げな目になったことを確認してから、俺は大仰な身振りをしながら語りかける。
「申し遅れましたが、私が崇める神は、自由の神。人々が心から欲することを、求めるがままに行うことを是とする神です。ですので、貴女の心からの求めに応じ手伝うことは、我が喜びに他なりません。しかしそうでない願いを聞くのは、苦痛でしかありません。そのところを良く考えてお答えくださればと思います」
最後に恭しく見えるように礼をすると、キルティから怒声がきた。
「……つまり、心を言えっていうのか。この、毒草の煙を吸わないと、まともに動けも喋れもしない、このボクの本心を!」
さっきまで人形のようだったとは思えないほど、キルティの手に力が入りブルブルと震えている。
その様子を、俺はうさんくさい笑みで受け止めた。
「はい、もちろんです。それがどんな願いであれ、心から発したことこそが尊いものですので」
「なら、ならな、言わせてもらう! この体を治して、聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスとは関係なく、みんなと平和に暮すことだ! どうだ、お前にできるっていうのか!!」
激情と共に吐かれた言葉に、素直に言い返すならば、出来ないという他はない。
だがそれは、この里のことを全く知らない今は、と言う話だ。
なので、時間を稼ぐために、煙に巻くような言葉を選択する。
「どうやら、まだ毒の煙で心が濁っているようですね。私の耳には、貴女が本心からそう求めているようには聞こえませんでした」
「なんだと! 間違いなく、ボクの本心――ゲホゲホゲホ!」
やはり薬の影響が体に大きいようで、突然咳き込み始め、憔悴した様子に変わった。
それを見て、俺は仕方がないというように、肩をすくめてみせる。
「体を治したいというのは、本心の一部のようですから。まずは治して差し上げましょう。そうして心穏やかな時間をつくり、自信の心と向き合うといいでしょう」
「お、お前みたいな、う、うさんくさいやつに、できるもの、か、ゲホゲホ――」
この短時間で嫌われてしまったなと思いながら、選択する魔法は全ての状態異常を治す魔法。
戦う神官である戦司教である俺は、これほど便利な魔法になると単体にしか使えないっていう制約があるけど、まあ対象者は一人なので関係ない。
「私が崇める自由の神よ、不治の病、不浄の毒に侵されし者の肉体に、ありし日の安寧と平穏を取り戻せたまえ!」
呪文を唱えながら杖の先を向けると、キルティを囲うだけの光の円が生まれた。
そこから立ち上り始めた雫形の光が、彼女の肉体に浸透していく。
すると、代わりかのように彼女の肌から黒い雫が飛び出すと、どこかへ飛んで消えていく。
キルティはその光景を驚いた目で見ていたが、光の円が消えると同時に、信じられないという顔になる。
「ま、まさか、本当に体が治ったのか!? まだ毒煙の効果が残っているだけなんじゃないのか!?」
大慌てで体を確かめ始めるキルティの口にあるパイプを、俺はそっと取り上げて使用人に預けてしまう。
「では、煙の効果が切れると思う時間まで、安静にして確かめてください。それまで私はどこにも逃げないと約束しましょう」
「……分かった、そうさせてもらう。お客人に部屋を用意してあげて」
「はい、畏まりました」
キルティに言われた使用人が、俺たちをこの部屋から連れ出し、別の部屋へと案内を始める。
退室する際に、こっそりとキルティを見ると、信じられない様子で体を触ったり、腕や脚を曲げたり伸ばしている。
ベッドの上でやっているものだから、可愛らしい仕草に見えてしまい、口元が綻びかける。
いけないいけないと思い直して、使用人の後について、廊下を歩き出すのだった。




