表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由(邪)神官、異世界でニワカに布教する  作者: 中文字
六章 復活再臨、そして布教編
179/225

百八十話 戦いの前だよ、仲間が集合!

 買ったボロ馬車を使い潰すように移動した俺たち一行は、ジャッコウの里にある砦の元・指揮官がいる場所の近くまできていた。

 移動疲れをとるためと、国軍の情報を得るため、街道で野営することにした。

 そこにバークリステたち、復興村に置いてきた自由神信徒の仲間たちがやってきた。

 懐かしく感じる顔に、俺の頬が緩んでしまう。

 けど、戦いの前だからと顔を引き締め直すと、見計らっていたかのようにバークリステがやってきた。


「トランジェさまの招集を受け、全員集めてまいりました。村で収穫した作物も、かなりの量をもってきてあります」

「急な動員指示だったのに、対応してくれてありがとうございます。それで、頼んでいた件の国軍の動きはどうですか?」


 バークリステは言いよどんでから、川沿いの町で話になった自由神信徒の村について、教えてくれた。


「村人たちは国軍によって、聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティス教徒に改宗させられました。そのときの村長と一家は、邪教を信じた罪として、処刑させられたと聞いています」

「そうですか。聖教本に従って、邪教と認定した輩を抹殺するのは、国軍の対応としては当然でしょうね。とはいえ、無辜の命が散ったことは、悲しむべきことですね」


 俺は自由神信徒に教化した、その村のことなんか覚えていない。

 けど一癖も二癖もある人がいたら印象に残っているはずなので、覚えていないからこそ、そこの村人たちは取るに足らない善人だったはずだ。

 そんないい人たちが殺されてしまったと聞くと、やっぱり気分が悪くなる。

 そもそも、自由神は邪神ではないし、教義も邪教と呼ばれるほど逸脱したものじゃない。

 ということは、元・指揮官のいる国軍は間違った判断の下で、誤りの断罪を行ったということだ。

 その犯した罪を償わせるためにも、やっぱり全滅させないと駄目だよな。

 うんうんと一人で納得しつつ、バークリステに次の質問をする。


「村を改宗し終えた例の国軍は、いまどの辺に向かっているかの情報はありますか?」

「もちろん、クトルットから入手しております。どうやら、わたくしたちが復興した村に向かっているようですね」


 なんとなく、やっぱりという気になった。


「どうして、私たちの村に来るのか、理由はわかりますか?」

「的確な情報はありませんが、こちらにくる理由については色々な噂がありますね」

「例えば、どんなものがあるのでしょう」

「指揮官が律儀な性格で村を一つずつ調べて回っているとも、邪神教の情報を受けて向かっているとも、森の際にできたゴブリンの集落を叩きに移動しているだけとも、言われています」


 噂の内容が散っていることからすると、明確な話ではないみたいだ。

 ま、噂の真偽はともあれ、国軍を放置できない理由が増えたな。

 復興村は、今後の展開に重要な拠点になる予定の場所。国軍に調査されると、大変に具合が悪いんだよね。

 奴隷商クトルットは各地の先祖返りの子供を買う計画を立てているし、畑には怪しげな魔法で時季外れに大量に実った作物がどっさり。その上に聖大神教徒のはずな村人が、祈りを別の神にも捧げている。

 これはもう、詳しく調べないままに邪教認定を下されても、おかしくないよなぁ。

 自分のしでかしたことの多さに、ちょっと反省する。

 けど、国軍を倒しさえすれば万事解決だと、気分を転換させることにした。


「復興村まで、いくつか村が間にあるはずですが、国軍はそこを通過するようですか?」

「いえ。途中の村々も、聖大神教徒ではなくなっているようですので、国軍は立ち止まって調べるのではないかと思います」


 歯切れの悪さから、バークリステの予想だと当たりがつく。

 でも頭のいい彼女が考えたことなら、信用を置いてもいいんじゃないかな。


「では、どの村であれば、私たちの内応にこたえそうかは、わかりますか?」


 バークリステは少し考え込んでから、悩ましげに答えてくれる。


「正直に言いますと、全ての村に可能性があります。そもそも、それらの村が改宗に至ったのは、旧来の聖大神の神官や上層部に不満を抱いていたからです。なのに、いまさら国軍が出てきて、もう一度聖大神を崇めろと迫ってくるのです。いい気はしないのではないかと」

「その通りですね。先の村で村長一家が処刑してしまったことが、国軍の痛手になってくるでしょうね」


 改宗だけで済ますなら、反発はあっても反抗までには至らなかっただろう。

 けど、邪教と認定されたら殺される可能性があると知って、村人たちは大人しく沙汰を待つだろうか。

 少なくとも、調べられる村の村長一家は、結果が出る前に生き残る方策を立てようとするはずだ。

 そこで俺たちが反乱を持ち掛け、国軍を村の外と中から挟み撃ちにする、という感じになるかな。


「であれば、次に国軍が向かう村で、行動を起こしたほうが最善ですね。後になればなるほど、どうして先の村は助けてくれなかったのかと、不審に思われることになりますし」


 そう結論付けようとして、一つ大事なことを忘れていたことに気づいた。


「そういえば、国軍の人数はわかりますか?」


 数は力だ。国軍があまりに大人数だったら、戦っても勝てないからと、村人が反乱に乗ってこなくなる。

 それに、流石に色々な魔法が使える俺でも、万の兵士を相手に勝てるなんて自惚れられない。トランジェはもともと、趣味キャラで強くはないんだしね。

 そんな懸念を抱いていると、バークリステは思い出すような素振りをして言う。


「たしか、二百から三百人だったかと」

「……それだけなんですか?」


 数を聞いて、単純に少ないと思った。

 けどそれは俺の考え違いだと言いたげに、バークリステは首を横に振った。


「村の調査でこの人数は、過剰なほど多いです。よほど力のある指揮官が上にいないと、これほどの人数を保持させてはもらえないでしょう」

「そうなんですか? 遠征軍よりだいぶ少ないと思うのですが?」

「ただの一部隊で、二百人だと考えてください。そうすれば、数が多いとお分かりになるはずです」


 指摘を受けて、俺は腕組みして考えてみる。

 元の世界で聞く動員兵士の数が、千とか万とかを平気で超えるニュースを聞いているので、どう考えても多い気がしてこない。

 けど、屈強な男が二百人いると想像すると、恐ろしい気もしなくはないな。

 国軍は遠征軍より屈強な兵士ばかりらしいし、警戒度合いを上げないといけない気がしてきた。

 やっぱり、なにごとも楽観はよくないよな。


「ふむっ。では一応、レッサースケルトンを瞬殺する力を持つ兵士が二百から三百と、そう仮定して作戦を立てましょうか」

「それが良いと思います。強敵だと想定して勘案することが、勝利につながる道だと考えます」


 ではどういう作戦でいこうかと、こちらの手勢と特技を考慮に入れて、真向からやからめ手に至るまで、取れそうな方策を考えることにしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ