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自由(邪)神官、異世界でニワカに布教する  作者: 中文字
六章 復活再臨、そして布教編
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百六十五話 砦を攻めるには、まずは情報からです

 街道の砦を塞ぎ、トンネルにも岩壁を設置した後、一度キルティの屋敷に戻った。

 川沿いにある砦について、よく知っている人に話を聞くためだ。

 キルティに案内されて会うことになったのは、湖や川で漁をして暮らす人たちの取りまとめ役。

 会ってみると、黒い髪の毛で同色の先が折れた犬耳がある、男性だった。

 年齢は三十代だろうな。身長が高くて、体つきががっちりしている。

 その彼に、キルティが告げる。


「神遣いさまに、貴方が知る砦の全てを伝えてあげて」

「は、はい、もちろんですとも」


 緊張した面持ちの男性が、砦のことを語り始める。

 それで、川の砦のことが段々と分かってきた。

 砦があるのは、険しい連山近くの川縁。

 しかし、里を囲む山の外側ではなく、内側にあるそうだ。


「街道の砦より先にできたと、漁師間の昔話では聞いております。大昔は山の外と内を行き来するには、川しか交通手段がなかったそうで」


 里の存在を秘匿しつつ、川を行き来する人を監視し、必要とあれば拘束するための砦だ。

 山の外側に作っては、どうしてあんな場所に砦があるのかと、通りかかった人に注目されてしまいかねないため、内側に作られたらしい。


「その砦に行くには、川を下っていくのが一番簡単なんですが」

「川の監視のために作られた砦だけあって、すぐに察知されてしまうわけですね?」

「はい。まさにその通りで」


 船で行く以外の方法だと、未舗装の川縁を歩いていくしかないらしい。

 舗装していないのは、道があれていた方が、砦に駐屯していた人たちが守りやすいためだろうな。

 それに、砦の人は船を使いたい放題だ。なので、わざわざ新しい道を作る必要もなかったはずだ。


「以前は聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスの兵士が監視していたので、船でいけないということはわかります。しかし、いま占拠しているのは野盗なのでしょう。ならつけ入る隙がありそうなものですが?」

「それがですね。砦には槍みたいに太い矢を放つ、馬鹿でかい弓がありましてね。それを占拠した野盗らしきやつらも、使っているもんで」


 その大きな弓――たぶんバリスタだろう――に狙われたから、昨日は砦に近づくことを諦めて、引き返してきたらしい。

 防衛兵器をそのまま残しておくなんて、不用心だな。

 手間がかかっても、砦から外して持っていくものだろうに。

 いや、待てよ。

 『ワザと置いていった』という可能性もあるな。

 川の砦の指揮官が、ジャッコウの里から得る利益を独占するため、子飼いの傭兵を砦に入るよう要請。拠点を防衛しやすくするために、バリスタは設置したままにしておいた。

 この筋書きなら、砦に防衛兵器が残っている理由に説明がつく。

 もしかしたら、砦の指揮官が無能で、撤去と再設置の手間を惜しんで、置いたままにしたのかもしれないけどね。

 どちらにせよ、砦にバリスタがあるとなると厄介だ。

 川に渡す小舟だと、至近弾で横転しかねない。

 こうなると荒れ野を進んで、砦に向かうしかないんだろうけどなぁ……。


「歩いていくと、何らかの問題があるんですよね?」


 断定的に聞くと、漁師の男は頷いた。


「とても日数がかかります。その上、出入り口が川に面した一つしかなくて」


 詳しく聞くと、砦から川に伸びる桟橋しか、入口が接していないそうだ。

 では回り込んで橋に行けばいいと思うが、そうは問屋が卸さないらしい。


「砦の周りは治水工事がされており、森が開けています。なので桟橋付近は、物見台から丸見えになってるんで」

「一方的に攻撃される上に、隠れる場所がないと」


 これは困った。

 もし桟橋から入口についたとしても、きっと分厚い扉が待ち受けているはずだ。

 聞いて対策を考えるほど、難攻不落な要塞のように思えてくる。

 逆に、こちらが再占領できたら、今後は安泰ともいえるけどね。

 うむむっ。手がないわけじゃないけど、どうしたものか。

 水中呼吸の魔法で桟橋まで泳いでいくか、それとも植物を成長促進する魔法で砦の付近を藪に変えようか。

 砦の壁を土魔法で崩したり、岩壁の魔法で防御壁を張りつつ接近するという手もあるな。

 フロイドワールド・オンラインで砦攻めの経験がいくつかあるので、どれかが流用できないだろうか。


「いくつか質問したいことがあるのですが、構いませんか?」

「はい。答えられるものでしたら、なんだって答えますとも」


 過去ゲーム内でやった作戦が可能か、漁師の男に川と砦周りの地形を詳しく尋ねていく。

 するとどうやら、かなり厳重に地盤工事と治水対策がされているそうだ。

 川の流れを曲げて水攻めや、地盤を崩して壁を壊したりするには、その工事された部分を壊さないと無理だろうな。

 他にもなにか知らなければいけないことがないか、さらに詳しい話を聞き続ける。

 漁師の男が辟易とした顔に変わった頃に、ようやくこれならいけるという策が決まった。

 さてと、エヴァレットたちとジャッコウの民の協力が必要になるから、まずはキルティとお話合いをしないといけないな。

短いですが、切りがいいので、この時点で区切らさせていただきました。

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