表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由(邪)神官、異世界でニワカに布教する  作者: 中文字
五章 枢騎士卿(カーディナルナイト)獲得に挑戦編
133/225

百三十四話 自由神と俺の思惑が進みますね

 四つ目の秘密とは、自由神自身と俺の転移に関してのこと。

 エヴァレットたちには直接関係ないので、放さなくてもいいかなと思って、伝えなかった部分だ。

 手紙によると、自由神は大戦後もある程度信者を確保していて、力を保持していたらしい。


『知能の低いっていうか、本能全開で知性のないような、自由に生きている生き物に、遊び半分に加護を与えていてよかったよー☆』


 ってことで、大戦直後は一番力を持っていた神になっていたらしい。

 けど、覇権やら頂点に立つことは望んでなかったそうで、その後も勝手気ままに過ごしていたらしい。

 善の神が聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスを作ろうと、悪の神が封印されたり滅ぼされようと、高見の見物をしていたそうだ。

 そうやって他の神が必死に頑張っている間に、他の世界を自由に覗く方法を編み出したらしい。

 近い世界を覗き回っていると、興味深い世界を見つける。

 それが、俺の元の世界で作られた、フロイドワールド・オンラインというわけだ。

 発見した当初は、イベントという大きな災いが頻発し、人は戦いに明け暮れて死んでも蘇り、魔物がぽこぽこと自然湧きする、修羅の世界だと思っていたそうだ。

 似た世界ながら、全く違う世界に、自由神は観察にのめり込んだ。

 そしてあるとき、自由神は気付く。

 フロイドワールド・オンラインの自由神の信者が捧げた祈りが、この世界の自由神へと流れてくることに。


『同じ存在でも、あの修羅の世界にいる神は架空のニセモノだからね★ 本物が世界を見ていれば、信者の祈りは本物に届けられるんだろうなぁ(^^)』


 理由について、そう納得した自由神は、この世界の他の神に隠れて、フロイドワールド・オンラインにいる信者からの祈りを受け取り、自分の力に変えて蓄えていったそうだ。

 もっとも、ゲーム内で自由神の信者は不遇扱いで、全体数は少ない。

 それでも、聖大神ジャルフ・イナ・ギゼティスだけしか、表だった神の存在が許されない世界よりかは、だいぶマシに祈りが集まったそうだ。

 さてさて、そうやって別の世界を楽しみながら、自分の力も増やしていった自由神は、とある日ある存在を見つける。

 善悪両方の行動をしながら、自由神の教えを広め続ける、とある戦神官――つまり俺、トランジェをだ。

 他のプレイヤーが他の神に乗り換える中、ひたすらに自由神しか崇めない姿に、目を奪われてしまったらしい。


『一つの神だけを崇め続ける一途な姿が、キュン☆キュンだったんだよ~♪ あと、良いことも悪いこともやっていることも、自由の神にとっては、好印象だったんだー☆』


 本物の自由神に目をつけられていると知らない俺は、フロイドワールド・オンラインを楽しみ続ける。

 自由神はお気に入りの信者の活躍が見れる上に、信者の祈りが届けられて、ご満悦。

 そんな関係が続いたとき、自由神はふと思ったそうだ。


『こんな敬虔ないい子を、ニセモノの世界で遊ばせているなんてもったいないよね。ニセモノの世界の仕組みの隙をついて、この世界に招いちゃおうっと♪』


 はた迷惑にもそう考えた自由神は、ダメ元で、俺が枢騎士卿カーディナルナイトへの試練を受領した瞬間に、神の力を使って介入した。


『そうしたら、上手く召喚できちゃったんだよねー♪ ホントびっくりしちゃったよー▼』


 本当なら、別世界の存在を召喚するなんて、そう安々とはできないそうだ。

 失敗していたら、単に集めた神の力が失われるだけだそうなので、一信者としては慎重に使えよなと言いたくなった。

 これは俺の予想だけど。

 フロイドワールド・オンラインは電子ゲームの世界だ。

 ボタン一つでたやすく変わり、簡単に世界構成データが失われるような、あやふやな仮想現実である。

 そこに存在している『トランジェ』というキャラクターも、俺が削除を選べば数分と経たずに消え去る、儚い存在でしかないわけだ。

 そんな消えても現実世界には大して影響のない存在だから、自由神が簡単に召喚できたのだと思う。

 この予想があっているとすると、問題が一つある。

 それは、いまここにいる俺は、ゲームをやっていた人間の俺自身なのか、ゲーム内のトランジェに人間の俺の知識が複製された存在なのかだ。

 色々と思い悩みそうな議題なのだけど、手紙の最後に書かれていた自由神のありがたい言葉で、その悩みは払しょくされることになる。


『ああ、そうだ。君を呼ぶのにだいぶ力を使ったから、元の世界には返せないんだ。だから精一杯、この世界を謳歌することが、おススメだよ⌒☆ 何をしようと、この自由の神くんちゃんが、君の行動の自由を許可しちゃうからさ♪ じゃあね、Have a nice future~♪』


 終始能天気な神さまだなと、その一文に笑ってしまう。

 そして、自分の存在を悩んだところで、今ここにいる自分が俺だ。

 我、考えるゆえに、我あり。己が観察することで、世界は成立する。どんなことも、気の持ちよう。

 要は、俺は俺でしかないわけなのだから、悩む意味がないわけだな。

 さてさて、自由神のありがたい許可をもらえたことだし、この世界を目一杯楽しむ方法を考えよう。

 選択肢は無限大。

 頼りになる仲間もいる。

 魔法だって、この世界の人々の基準で、強力なものが勢ぞろいの、使いたい放題だ。

 アニメやラノベではありふれた文句だけど、良いも悪いも、神にも悪魔にも、俺の意思一つでどうにでも変われる。

 ま、エヴァレットたちがいるから、あまり派手なことをするつもりはないけどね。

 そう、派手なことはね。

 なんだか楽しくなってきたなと思いながら、どうこの世界を楽しもうかと、寝転びながら考えることにしたのだった。


次からは新章になる予定です。

ここで終われば、俺の自由(freedom)はこれからだエンドで、あとは想像にお任せしますとして、綺麗にまとまる気もしますけど……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ