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ぼっちの就活日記  作者: 五条ダン
第四章~進路設計篇~
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不労所得

 2013年05月27日(月) 雨



 日経平均株価は5月23日の急落から、24日、27日とさらに下落し、本日終値が1万4142円65銭。ついに25日移動平均線を割り込む水準まで下がってしまった。


 23日の大暴落については様々な憶測があるものの、証券アナリストも経済学者も明確な見解が出せずに首を傾げるばかりだった。株は上がったり下がったりするのが当然なのだが、その下げ幅があまりにも極端で大きすぎるのだ。


 2013年に入り、日本株はボラティリティ(価格変動率)が高すぎる。まるでジェットコースターのような値動きである。


 ボクも含み損(株価が買値よりも値下りしてしまった分の損失)がここ数日で拡大し、頭を抱えている。

 ただ、配当のある銘柄のみに分散投資をしていたため、その投資した企業がこれからも安泰できちんと配当金を出してくれるのであれば、おおよそ32年後には元本回収ができる。



 配当のある銘柄にこだわるのは、それが将来の不労所得となるからだ。



※例 配当利回り5%の銘柄に100万円を投資した場合、毎年5万円の配当金が貰え、20年後には100万円の元本分が回収できる。それ以降に貰える配当金は完全な不労所得となる。

(ただし、配当税率、割引現在価値、インフレ・デフレ等による貨幣価値の変化を考慮しない場合)




 不動産賃貸や、株の配当、REITの分配金、本の印税など、不労所得だけで生活できたらどれだけ素晴らしいだろうか。なにしろ、働かなくてもよいし、自由に時間が使えるのだ。

 ――と、不労所得に憧れる人は多い。


※アフィリエイトは不労所得の例に挙げなかった。大半の人にとってアフィリエイトは過労無所得となるのが現状であるため。

 サイト買収による運用も考えうるが、広告収入はSEO(検索エンジンの仕様変更)によって簡単に左右され、個人的には元本回収できるのかどうか懐疑的に思う。



 先日、ネットで『東大卒独身男性の楽しい“無職生活” 毎月3万円で過ごす』というタイトルの特集記事を読んだ。

 その記事では、食費の節約方法などが紹介されており興味深い内容であるものの、少しピントがずれているなと感じた。


 彼の楽しい”無職生活”を可能としているのは『不動産賃貸による年間100万円の不労所得』であり、これをいかにして獲得するかが問題の本質であるのだ。


 1500万円のマンションを買い、実質利回り6.5~7.5%で運用すれば、およそ年100万円の賃料収入が得られる。しかし、現在販売されている投資用マンションの多くは素人をカモにした商品であり、不動産投資自体、非常にリスクが高い。


 少子化、震災、デフレはいずれも不動産価値を下げる要因となり、買う時期を間違えれば大損する可能性がある。



 これに対し、複数の不動産に小額で投資できるREITリートなら、国内外の不動産に分散投資ができるため安全度は高くなる。


 リスクが下がった分リターンも下がり、REITの場合は利回り5%の分配金が取れれば良いほうだ。これだと、年間100万円受け取るためには2000万円の投資が必要となる。


 日本株は、配当利回り3~4%あれば優良だとされる。配当金を年100万円貰おうと思えば、3000万円以上投資しなければならない。一方で、将来の企業成長、景気の上昇による株価の値上がり益(キャピタルゲイン)に期待が持てる。



 だが、2000万円もの資産を用意するのに、どれほどの時間と労働が必要なのだろうか。不労所得の資金作りのために一生懸命に働いて節約生活を送っても、資産が溜まる頃には定年間近となっているかもしれない。

 宝くじで一発当てるとか、ガンホー株を底値で拾って高値で売り抜けるくらいのミラクルがなければ、2000万円作るのは難しい。



 それならば、年100万円から妥協して、50万円でどうだろう。物価の安い国に移住すれば十分に食っていけるし、語学留学を兼ねることもできる。為替差損が気になるが、まあ何とかなるだろう。


 将来は、中国の奥地やフィリピン、赤道直下の島国で暮らすのも良いなと想像した。



 なんてことを考えているうちに、持ち株の価格は下がり続け、トレーディングツールで株価の数字が黄色や青色に光るのを眺めるだけで一日が終わった。




 江安くんが、「君は、働かずに得た"時間"でいったい何がしたいんだ」とあきれたように言った。



 わかっているさ……。



 5月が――、もうすぐ終わる。




 (続く)


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