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ぼっちの就活日記  作者: 五条ダン
第三章~就職活動篇~
30/48

慢心~ルート分岐

 2013年05月15日(水) 晴れ



「ぼっちの就活日記」は、おおよそ本当にあった出来事を日記風に綴っている。しかし、すべての情報を読者に開示してきたわけではなかった。


 じつは、ボクはM化研の就職活動において強力な切り札を一枚だけ有していた。そして今までずっと秘密にしてきた。大学四年生の五月になってもまだ余裕を持って文章を書いてこられたのは、内定が得られる勝算の高いことをボクが知っており、楽観していたからでもあった。


 しかし、本日をもってこれまでの隠し事はまったくもって無意味となった。ボクは否応なしに就職活動の第二ステージへと向かわなくてはならない。



 なぜなら、M化研株式会社より、お祈りメールが届いたからである。

 M化研の二次面接を受けたのはおよそ一ヶ月前だ。選考にこれほどの時間がかかったのも、人事部の間で揉めたからかもしれない。


 とにかく、――すべてがフリダシへと戻ったのだ。




 M化研にエントリーしたのは、今年の三月だった。(第一話『ソフトクリーム童女とボク』参照)

 祖母(おばあさま)が勝手にM化研にエントリー登録をし、ボクはM化研の会社説明会に参加することを余儀なくされた。(第二話『TOB! TOB!』参照)


 このときに疑問に思われた方もいるかもしれない。


 果たして、祖母が代理で会社にエントリーすることなんてあり得るのだろうかと。



 そう、祖母はM化研に対して強力なコネ(人脈)があったのだ。


 ボクはコネ入社する気満々でいた。



 もちろん、このことは秘密にしておき、「ぼっちだけど大企業から内定を貰ったぜ!」というハッピーエンド・ストーリーをあらかじめ見込んでから、「ぼっちの就活日記」の連載に取り掛かった。


 企業の選考過程には、「書類選考」と「面接」のふたつの関門がある。


 書類選考は、履歴書とエントリーシート、WEB試験から成る。

 しかし、履歴書とエントリーシートは事前に就職課の人たちと相談しながら書き上げるので、これで落とされることはない。

 WEB試験は、自宅のネットから受験できるため、電子辞書も関数電卓も自由に使える。やろうと思えば替え玉受験も容易い。そのため、落とされる要素がない。


 次に、面接に関しては、大学の就職アドバイザー監修のもと行われる模擬面接にて徹底的に指導される。作法から自己PR、志望動機に至るまできちんとマニュアル通りにやれば、いくらでも自分を誤魔化せる。


 学歴や資格の有無はシグナリングとして重視もされるが、幸いなことにボクにはコネがあったので、これも大丈夫だ。


 それにM化研の株式を購入する際に、業界分析と財務分析を綿密に行ったので、志望動機を話すのも完璧だった。



 つまり、ボクは絶対に内定が取れる!! そう確信してM化研の面接に臨んだわけだ。



 だが結果はお祈りメールだった。

 

 ボクの本質を見破るとは、面接官のご慧眼には恐れ入る。



 M化研に落ちたと電話で報告したとき、祖母は驚いていた。


 ボクは穏やかな口調で、こう返答した。

「今の時代、コネで入社できるほど甘くはありませんよ。おばあさま、どうかご安心ください。ボクは自分の実力で、内定を勝ち得てみせますから」



『その言葉、真実になると良いんだけどね』 耳元で江安くんが言った。




 就職活動に対する考え方を変えなければならないと気づいたのは、四月某日に『有限会社 K園芸』の面接を受け、選考に落ちたときであった。



 (続く)

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