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ぼっちの就活日記  作者: 五条ダン
第一章~五条ダン篇~
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空売り


 2013年03月18日(月)雨



 日記が続かなくなるパターンは、2つに分けられる。ひとつは、生活が忙しくて日記を書く時間が取れないケース。もうひとつは、毎日が単調で日記のネタが無くなるケース。こと就活日記に関して云えば、前者は仕方が無いとして、後者は明らかに就職活動がうまく進んでいない証拠だ。悲しいことにボクは後者だった。この頃は就職活動らしいことをしていないので就活日記がネタ切れするというなんとも情けない事態に陥っていた。


 午前中は、ある企業の株を空売りしたりしていた。空売りとは、『株価が下がれば儲かり、株価が上がれば損をする』という天邪鬼な投資手法である。あべこべなのだ。例えば、2008年のリーマン・ショックで株価が大暴落をしたが、このとき株をやっていた人がみんな大損をしたかといえば、じつはそうではない。株を買っていた人は被害を被った。しかしその一方で、株を空売りしていた人は株大暴落で大儲けしていたのだ。


 現在の日本株式相場は、アベノミクス効果で強い上昇相場である。多くの企業の株価が右肩上がりに急上昇している。不動産投資のREITも上がっているし、今日は石炭関連の企業の株がなぜか人気化するし、一月、二月は連日ストップ高のお祭り騒ぎだった。ボクは去年から株式投資をしているが、この上昇相場ではむしろ普段より負けていた。他の投資家が勝っているなかで、ボクだけが負けている感じだった。


 これは、ボクが「逆張りしかしない」という一貫したポリシーを持っているからだった。普通の人は、右肩上がりに株価が上がってゆく企業の株を欲しがる。株価上昇のトレンド(波)に乗ることで、効率良く資産を増やすことができるのだ。

 一方、逆張りとは、右肩下がりに株価が落ちている企業の株を買うことだ。その企業はときとして業績が芳しくなかったり、悪いニュースが出ていたりする。逆張りは、落ちてくるナイフを素手で掴むような投資戦法なので、リスクが高く損をしやすい。しかしながら、株価の低迷しているうちに株が手に入ればお買い得(割安)であるし、安く買って高く売るのがキャピタルゲイン(差額利益)を得る投資の基本であるから、ボクは逆張りを好んでいた。それとギャンブルとして考えれば逆張りの方が面白いのだ。ボクは競馬はやったことがないけれど、大人気の馬を当てるよりも、誰からも見向きもされない馬で大穴を当てた方が嬉しい気がする。


 と、以上で書いたことは嘘かもしれないので注意して欲しい。経済学では、将来の株価を予測することは不可能であるとの学説が出ている。「効率的市場仮説」「ランダム・ウォーク理論」や、他に関連するものとして「カオス理論」「バタフライ効果」がある。

 効率的市場仮説とは、株価はその時点で「企業価値」「将来への期待」「ニュース」などすべての可能性を織り込んでいるとする説だ。たとえ優良企業を見つけたとしても、その『優良』は株価に織り込み済で、将来上がるか下がるかは誰にも分からないのだ。ただし、この説には批判もある。「市場はどう考えても効率的ではない」というものだ。たしかに、2013年はヘビ年という理由(?)で蛇の目ミシンの株価が急騰したことなどは本当にミステリアスである。


 今の相場では、業績が改善していない企業の株でも何らかのテーマがあればどんどん上がるので、理想と現実がかけ離れてゆく。だからこそ、株価が暴落する未来を見越して空売りを仕掛けたくなってしまうのだ。


※テーマ 例えば「不動産、ゼネコンから始まり、自動車、教育、含み資産、バイオ、製薬、石炭などなど、ニュースや政策の発表で、そのテーマに関連する企業の株が多く買われる」


 ただし、上昇相場において空売りは非常にリスキーなギャンブルだ。『買いは家まで 売りは命まで』という格言がある。株を買うのであれば、企業が倒産した最悪の場合でも、資金をゼロにするだけで済む。しかし株価の上昇には天井がないので、バブルみたいなときに空売りをすれば損失が無限に膨れ上がってしまうのだ。これは本当に怖い。



 ってあれ、ボクは何を書いているのだろう。就活日記のはずだった。就活しなきゃ……。

 夕方、N株式会社より株主総会の案内が届いた。株主総会がきっかけで内定取れないかなあ……。


 夜は、乾くるみさんの『リピート』という小説を読んだ。面白かった。小説を書く目的は人それぞれだが、この作品は「思考実験」のために書かれたような雰囲気だった。主人公が私と同い年の大学生なので、なんというか不思議な気持ちで読んでいた。


 

 明日からは就職活動をしなければいけないと思う。明日から頑張ろう……。



 (了)




 

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