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ぼっちの就活日記  作者: 五条ダン
第一章~五条ダン篇~
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岩波レイ


 2013年03月13日(水)雨



 記憶が途切れている。気がついたら夜だった。一体何があったんだ……。

 江安えやすくんが何かをしたに違いないのだけれど、本当に記憶がなくて分からない。


 夜は、乙一さん(作家)の『小生物語』という日記と、同じく乙一さんの『暗黒童話』という小説を読んだ。たった今、読み終えたばかりだ。彼はすごい物語を書く人だ……。一目で彼のファンになってしまった。

 もしかすると勘付かれている読者の方もいらっしゃるかもしれない。『ぼっちの就活日記』は、『小生物語』に影響を受けて書き始めたものだ。


 ぼっちの就活日記を第一話から第九話まで、読み返してみた。結果、布団をかぶって床をごろごろのたうちまわるくらい恥ずかしくて、背筋がぞわぞわわわっとした。



 久しぶりにホットメールの受信フォルダを確認してみると、M化研からメールが届いていた。来週までにWEBテストを受験してくださいと書かれてあった。自宅のパソコンから受けられる試験なので、替え玉受験は簡単だ。ボクは替え玉を用意するために友だちを作らなければと焦った。

 メールの日付をよく見れば、3月7日だった。明日SPI(WEB試験)の問題集を買って勉強しようと思う。もはや絶望的だった。



 夜、寝るとき、本棚から一冊の分厚い本がベッドにいたボクをめがけて落ちてきた。本はボクのお腹に直撃し、ぐはっという声にならない悲鳴をあげる。クラス対抗のドッヂボールで、いつも真っ先にボクが狙われて、お腹に強烈なボールを喰らったトラウマが蘇った。

 本だと思っていたそれは岩波いわなみセレクト六法だった。真面目に法律を勉強しようと考え、去年購入したものだ。結局、一度もページを開く機会は訪れず、本棚で眠っていた。新品同様でかわいそうなので、ブックオフに売りにいく予定だった。


 やれやれ、と思い六法を拾い上げる。表紙には、見覚えのない文字で『岩波レイ』と書かれてあった。太い黒マジックで書いた跡だ。誰だ、こんなイタズラをしたのは。


 しかし今日はとても眠かったので、六法は机のうえに放って、ボクは夢の世界へと落ちていった。



(続く)


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