第5話
教室をでた卓也はいそいで家に帰った。
そのまま自分の部屋に入り、ベッドに縮こまる。
学校での光景が頭から離れない。
二人の人間が飛び降りる。
そして佐伯の幽霊…気持ち悪いものがこびりついている感じがする。
俺が見たのはなんだったんだ?いくら自問しても答えのでない。
卓也はただ震えるしかなかった。しばらくすると、
「卓也、なんかやったのあんた?高橋先生から電話よ」
高橋からの電話の内容は卓也にとってわかってはいたが衝撃的なものだった。
佐伯静江と他の飛び降りた二人は自殺しようと決めていたこと、佐伯の遺書は二人にあてたもの、そして、
「上杉、お前あそこで何をみたんだ?」
「先生みえなかったんですか!?佐伯の幽霊が?」
それは卓也にしか見えていなかった。
いやあの教室で見えなかったのは高橋一人。
それならば…卓也はカーテンの隙間から外を見た。
それは確実にいた。
自分に共感した卓也を導くかのように…。
卓也は恐怖した。
このままでは自分の番だ。
部屋に戻り鍵を締める。
ベッドでカタカタ震えていた。
必死にどうすればいいか考えた。
しかし、それはもう目の前まで来ていた。
意に反して優しく微笑む佐伯。
卓也の恐怖心は次第に薄れていった。
憧れを抱いていた気持ちが心の奥から沸き上がってきた。
「行きましょう…」
「…ああ」
卓也は導かれるままに窓の外に出た。
ーこれで退屈な日常から解放されるー『続いてのニュースです。今日夕方飛び降り自殺とみられる…』
「最近多いよね、この手のニュース」
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