表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺学級  作者: かたな
4/5

第4話

その日の放課後、卓也は担任の高橋に呼び止められた。


「上杉、このあと視聴覚教室で待っててくれ」



「何のようですか?」



「後で話すから」



「わかりました」


担任の言葉を怪訝に思いながらも、卓也は言われたとおり視聴覚教室に行った。教室にはすでに二人の生徒が待っていた。

卓也は後ろのほうの席に座り、高橋を待った。

先に来ていた二人とは同じクラスであったが卓也はあまり知らなかった。

だから話し掛ける気にはらなかったが、二人はこちらを見ながらひそひそと話している。

それが卓也は気に食わなかった。

その内に日も傾いてきて夕日が室内をオレンジ色に染めた。

卓也もそろそろ痺れを切らしていた。その時、教室のドアを開け高橋が来た。

「すまんな、遅れて」


高橋はそのまま教壇に立ち、話し始めた。

「集まってもらった理由がわかるか?」


卓也は心当たりもなく、黙っていると高橋は話を続けた。

「集まってもらったのは佐伯の自殺のことについてなんだ」


卓也は動揺した。

もう担任まで話がいってるのかと思った。他の二人も明らかに動揺していた。

「先生、俺たちとそのことがどういう関係があるんですか?」


卓也は高橋に詰め寄った。しかし、高橋はなだめるように言った。

「言いにくいことなんだが、お前たちが佐伯のあとを追おうとしていると聞いたんだ」


卓也も他の二人もそれを否定しなかった。

高橋はさらに三人に、

「お願いだ。そんなことはしないでくれ。馬鹿なこと考えないでくれ」

と言った。

すると今まで黙っていた二人のうち一人が口を開いた。

「もう遅いんです。約束したんですから。もうそろそろ迎えにくると思います」


卓也は何を言っているのかわからなかった。

約束って何のことだ?迎えにくるって?考えているうちに嫌な答えに辿り着いた。

あの佐伯の遺書…あれは、俺に当てたものじゃなかったのか?この二人にあてたものだったのか?卓也は急に自分が醒めていくのを感じた。

風が変わった。

いやな空気が窓からはいってくる。その窓のほうを指して二人が言った。

「ほら、来た」


卓也は窓のほうを見た。

そこには何かが立っていた。

それは卓也もみたことあるものだった。

いや人というべきか。

佐伯静江がそこにいた。卓也の頭は混乱した。俺は幽霊をみてるのか?

佐伯への、死への憧れなどもうそこにはなかった。

佐伯は手招きをしている。

それに導かれるように二人は窓のほうに寄っていく。

それを制止しようとする高橋。

やがて制止を振り切り、二人が視界から消えた。

卓也の目にはすべての光景が映画のように映っていた。

現実とは思えなかった。

いや、思いたくなかった。

目の前で二人の人間が死んだ。

そのことについては何の感情も沸かなかった。

ただ虚無が広がるばかりだった。

しかし、すぐに恐怖が芽生えてきた。

佐伯がまだそこにいた。まるで卓也を呼んでいるかのように。

「来るなー!」


卓也は叫んで教室を飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ