第2話
どれくらいたっただろう。
あたりはすっかり暗くなっていた。
寝ていたことに気付いた卓也は体を起こし、部屋から出た。
それと同時に母の声がした。
「卓也、これちょっと見てよ」
「なんだよ」
「いいから見てよ、これあんたの学校でしょ」
母の指すテレビからはニュースが流れていた。
『今日午後七時頃、県立東高校屋上から飛び降り自殺がありました…』
卓也は一瞬耳を疑った。しかしさらに驚くべきことが卓也を襲った。
『…亡くなった生徒は、佐伯静江さんとみられており…』
佐伯静江は卓也と同じクラスの生徒だった。
頭もよく美人であったので学校中の憧れの的であった。
そんな佐伯が自殺した。卓也の頭は混乱していた。なにがあったんだろう?考えても考えても答えなどでなかった。
テレビでは佐伯の遺書の話をしていた。それによると、
(退屈な世界にさようなら。一緒にいこうね)
と書かれていたらしい。
これをみて卓也の体に衝撃が走った。
佐伯は自分と同じ考えを持っていた。
佐伯に少し憧れていた卓也は彼女に近づけた気がしてたまらなく興奮した。
それと同時にもっと近づきたい衝動に駆られた。
佐伯は自分が思いもしなかった方法でこのつまらない日常を抜け出した。
ならば自分がとる手段も一つしかない。そう考えた卓也はふと、遺書の最後のフレーズが気になった。
一緒にいこうね。このフレーズは?
しかし、すぐに卓也の頭の中に答えが浮かんだ。
「これは俺を誘ってるんだ!」
つい喜びのあまり声がでた。佐伯静江は俺を誘っている。卓也は一段と彼女に近づけた気がした。