第1話
・卓也はいい加減うんざりしていた。
いつもと同じように学校に行きいつもと同じ授業を受ける。
そんな毎日に飽き飽きしていた。
何か刺激的なことがおきないか、いっそこの世界など滅んでしまえばいいのに、そんなことさえ考えていた。
「帰ろーぜ、卓也」
聞き慣れた声がして、教室の入り口に目をやるとそこに友人の明雄がたっていた。
卓也と明雄は違うクラスではあるが幼なじみで幼稚園からの付き合いだった。
卓也は小さく頷くと教室を後にした。
帰り道で卓也と明雄はとりとめのない話をしていた。
そうしているうちにふと昼間の思いが頭をよぎった。
卓也は明雄もまた自分と同じ考えなのか知りたくなった。
そこでずばりきいてみることにした。
「なあ、最近おもしろいことないよな?」
返ってきたのは意外な答えだった。
「そんなこともないけどな。結構楽しいよ毎日」
卓也は驚いた。同調してくれるのではと少しばかり期待していたのに。
「そっかー。それなら別にいいんだけど」
「卓也はなんかつまらないことあるの?」
明雄の返事に一瞬本心を答えそうになったが平静をよそおって言った。
「いや別になんでもないよ」
「そお。じゃあ俺こっちだから、また明日な」
明雄と別れ一人家路に着く卓也。「俺は独りぼっちなのかな…」
卓也は自分と同じ考えを持っている人がたくさんいると思っていた。
しかし、明雄との会話でその考えを改めた。
「ただいま」
返事はない。
この時間は母も外出しており一人である。
家に着くとやることもなく部屋のベッドに寝転んだ。