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素敵なダンジョン

作者: 山田裕子
掲載日:2026/08/27

俺たちの町のそばにダンジョンが突然できた。

ダンジョンのできる仕組みや理屈は俺にはわからない。

わかっているのは、ダンジョンは稼げるということだ。

俺はやっと中堅どころのC級冒険者だ。

しかも仲間との折り合いが悪く、今はソロで活動している。

あまり難易度が高いと、一人ではどうしようもない。

といってレベルの低いダンジョンでは、ろくな獲物がいない。

今度できたダンジョンは、ちょうどよい難易度で、まずまずの魔物がいるらしい。


とりあえずダンジョンまで行ってみよう。

ダンジョンに着くと、入り口に『スタンプカード』と『ダンジョンマップ』が置いてある。

こんなの初めてだ。

なになに、『魔物を倒してお宝をゲットしよう!一階層踏破するごとにスタンプが一個もらえます。三十個貯まれば、素敵なお宝がもらえます。頑張って最下層を目指そう!』

と書いてある。

ずいぶんフレンドリーなダンジョンだ。

マップも親切だ。

三十階層まであるようだ。

だからスタンプカードが三十個なのかな?

罠や宝箱、セーフティーゾーンまで詳しく載っている。

至れり尽くせりだ。

信用していいのかな?


序盤は弱い魔物ばかりだ。

俺は剣士だが、少し魔法も使える。

だからソロでもなんとかなった。

スライム、これは剣で核を貫けばおしまいだ。

ドロップするお宝もまずない。

ゴブリン、コボルトは、囲まれなければ大丈夫だ。

ダンジョンの狭い通路なら、問題なく倒せる。

剣で一撃だ。

こいつらは、ごくまれにアイテムをドロップすることがある。

大したものではないけど、一応拾っておく。


十階から先の中盤では、オーク、オーガ、トロールなど力が強い魔物が出てきた。

今までのように一撃では倒せない。


「ハッ!」


相手の動きを見て攻撃を避けながら、隙を狙う。

剣だけでなく、相手の動きを遅くする魔法を使ったりしながら、倒していった。

ソロだといろいろ工夫しないと勝てない。

だがこの辺りまで来ると、ちょっといいアイテムが手に入ることもあった。

なかなかいいダンジョンだと思いながら、進んでいく。


セーフティーゾーンがあるのもありがたかった。

俺みたいなソロだと、回復は重要だ。

入り口でもらったマップには本当に助けられた。


さらに先に進むと、リザードマンやミノタウロスが出てきた。

奴らは手ごわい。


「ザシュッ。」


肉を切る音がする。

油断するとこちらがやられる。

やっと最下層近くの敵を倒せた。

そろそろ終盤だ。

回復はしているが、こちらも手傷を負っている。

しかし最後のお宝だ。

あと少し頑張ろう。


最後のダンジョンマスターがいる部屋に入る。

扉の閉まる音がした。

ここからは、ダンジョンマスターを倒さねば出られないのだろう。


「よく来た、剣士よ。

私を倒してみるがよい!」


ダンジョンマスターは、こちらに向かって火炎の魔法を放った。

俺は横に飛んで、それを避ける。

こちらも相手の動きを鈍くする魔法をかけ、剣を突き出す。


「ガキーン!」


ついにダンジョンマスターの剣が弾かれ、俺は奴の首に剣を突き付けた。


「私の負けだ。」


そうダンジョンマスターが言うと、まばゆい光があたりを覆い、何か鎧のようなものが俺の体を包んでいた。

さっきまでダンジョンマスターが付けていた鎧だ。


「本当にありがとう!

これでダンジョンから解放される!」


「え?どういうこと?」


「ダンジョンマスターを倒したものが次のダンジョンマスターだ。

君は、誰か倒してくれるものが来るまで、ここでダンジョンマスターをすることになる。

わざと負けようとしても、ダメだ。

それでは、交代されない。

そのダンジョンマスターの鎧が脱げるのは、正々堂々と戦って負けた時だ。」


「じゃあ俺、代わりが来るまでここに居なくちゃならないわけ?」


「そういうことになるね。

でもこのダンジョンは人気らしいから、すぐに次の奴が来ると思うよ。

私もマップを用意したり、スタンプカードを作ったり工夫したから、

君も客寄せの工夫をするといい。」


そう言うと、元ダンジョンマスターは、嬉しそうに部屋を出て行った。


それからの俺は、早く次のダンジョンマスター候補が現れるよう、ものすごく工夫した。

前任者の用意したマップやスタンプカードはもちろん、セーフティーゾーンで回復薬と交換できるクーポンも用意した。

魔物もいろいろなアイテムを落とすようにした。

マップが読めないやつのために、『最下層はこちら』とか、『セーフティーゾーンあります。』なんて標識まで用意した。

せっかくたどり着いても、弱くては意味がないので、レベルアップするように、魔物との遭遇をコントロールしたりもした。


しかしこんな俺の努力もむなしく、まだ最下層には誰も来ない。

このダンジョンは、初心者でも楽しめる素敵なダンジョンなんだそうだ。

探索者たちがそう言っていた。

最下層まで行かなくとも、途中で十分稼げるので、人気だとのことだ。

俺は今、最下層での武闘大会を検討中である。


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