素敵なダンジョン
俺たちの町のそばにダンジョンが突然できた。
ダンジョンのできる仕組みや理屈は俺にはわからない。
わかっているのは、ダンジョンは稼げるということだ。
俺はやっと中堅どころのC級冒険者だ。
しかも仲間との折り合いが悪く、今はソロで活動している。
あまり難易度が高いと、一人ではどうしようもない。
といってレベルの低いダンジョンでは、ろくな獲物がいない。
今度できたダンジョンは、ちょうどよい難易度で、まずまずの魔物がいるらしい。
とりあえずダンジョンまで行ってみよう。
ダンジョンに着くと、入り口に『スタンプカード』と『ダンジョンマップ』が置いてある。
こんなの初めてだ。
なになに、『魔物を倒してお宝をゲットしよう!一階層踏破するごとにスタンプが一個もらえます。三十個貯まれば、素敵なお宝がもらえます。頑張って最下層を目指そう!』
と書いてある。
ずいぶんフレンドリーなダンジョンだ。
マップも親切だ。
三十階層まであるようだ。
だからスタンプカードが三十個なのかな?
罠や宝箱、セーフティーゾーンまで詳しく載っている。
至れり尽くせりだ。
信用していいのかな?
序盤は弱い魔物ばかりだ。
俺は剣士だが、少し魔法も使える。
だからソロでもなんとかなった。
スライム、これは剣で核を貫けばおしまいだ。
ドロップするお宝もまずない。
ゴブリン、コボルトは、囲まれなければ大丈夫だ。
ダンジョンの狭い通路なら、問題なく倒せる。
剣で一撃だ。
こいつらは、ごくまれにアイテムをドロップすることがある。
大したものではないけど、一応拾っておく。
十階から先の中盤では、オーク、オーガ、トロールなど力が強い魔物が出てきた。
今までのように一撃では倒せない。
「ハッ!」
相手の動きを見て攻撃を避けながら、隙を狙う。
剣だけでなく、相手の動きを遅くする魔法を使ったりしながら、倒していった。
ソロだといろいろ工夫しないと勝てない。
だがこの辺りまで来ると、ちょっといいアイテムが手に入ることもあった。
なかなかいいダンジョンだと思いながら、進んでいく。
セーフティーゾーンがあるのもありがたかった。
俺みたいなソロだと、回復は重要だ。
入り口でもらったマップには本当に助けられた。
さらに先に進むと、リザードマンやミノタウロスが出てきた。
奴らは手ごわい。
「ザシュッ。」
肉を切る音がする。
油断するとこちらがやられる。
やっと最下層近くの敵を倒せた。
そろそろ終盤だ。
回復はしているが、こちらも手傷を負っている。
しかし最後のお宝だ。
あと少し頑張ろう。
最後のダンジョンマスターがいる部屋に入る。
扉の閉まる音がした。
ここからは、ダンジョンマスターを倒さねば出られないのだろう。
「よく来た、剣士よ。
私を倒してみるがよい!」
ダンジョンマスターは、こちらに向かって火炎の魔法を放った。
俺は横に飛んで、それを避ける。
こちらも相手の動きを鈍くする魔法をかけ、剣を突き出す。
「ガキーン!」
ついにダンジョンマスターの剣が弾かれ、俺は奴の首に剣を突き付けた。
「私の負けだ。」
そうダンジョンマスターが言うと、まばゆい光があたりを覆い、何か鎧のようなものが俺の体を包んでいた。
さっきまでダンジョンマスターが付けていた鎧だ。
「本当にありがとう!
これでダンジョンから解放される!」
「え?どういうこと?」
「ダンジョンマスターを倒したものが次のダンジョンマスターだ。
君は、誰か倒してくれるものが来るまで、ここでダンジョンマスターをすることになる。
わざと負けようとしても、ダメだ。
それでは、交代されない。
そのダンジョンマスターの鎧が脱げるのは、正々堂々と戦って負けた時だ。」
「じゃあ俺、代わりが来るまでここに居なくちゃならないわけ?」
「そういうことになるね。
でもこのダンジョンは人気らしいから、すぐに次の奴が来ると思うよ。
私もマップを用意したり、スタンプカードを作ったり工夫したから、
君も客寄せの工夫をするといい。」
そう言うと、元ダンジョンマスターは、嬉しそうに部屋を出て行った。
それからの俺は、早く次のダンジョンマスター候補が現れるよう、ものすごく工夫した。
前任者の用意したマップやスタンプカードはもちろん、セーフティーゾーンで回復薬と交換できるクーポンも用意した。
魔物もいろいろなアイテムを落とすようにした。
マップが読めないやつのために、『最下層はこちら』とか、『セーフティーゾーンあります。』なんて標識まで用意した。
せっかくたどり着いても、弱くては意味がないので、レベルアップするように、魔物との遭遇をコントロールしたりもした。
しかしこんな俺の努力もむなしく、まだ最下層には誰も来ない。
このダンジョンは、初心者でも楽しめる素敵なダンジョンなんだそうだ。
探索者たちがそう言っていた。
最下層まで行かなくとも、途中で十分稼げるので、人気だとのことだ。
俺は今、最下層での武闘大会を検討中である。




