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39歳の平凡な中小企業(さつまいも製造販売)の社長!農業スキルで異世界無双!(1000PV越えありがとうございます)  作者: 一年目の平凡な中小企業の社長


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第7話:ジミーナ村

 アイリスの先導で森を抜け、緩やかな下り坂の街道へと出た。 だが、そこで目にしたのは、僕の想像以上に「冷え切った」市場の光景だった。

 街道の脇、ひしゃげた荷車のそばに、一人の男が力なく座り込んでいる。 身なりからして行商人だろうが、その顔は土色で、目は生気を失っていた。


「……ひどいな。アイリス、一度足を止めるぞ」


「ツトム殿、彼はもう……」


「死なせはしない。貴重な『物流の専門家(行商人)』をここで見殺しにするのは、我が社の損失だ」


 僕は倒れた男の前に膝を突き、ルカに目配せをした。


「ルカ、魔力供給だ。緊急のサンプル配布デモンストレーションを行う」


「了解! ツトム、大盤振る舞いね!」


 僕は街道沿いの痩せた土に手をかざした。


「土魔法――『カルチ(耕起)』『リージング(畝立て)』『マルチング(黒ビニール)』!」


 一瞬で出現した完璧な畝から、『グロウ(超急速成長)』によって丸々と太った『ベニ・ハルーカ』を掘り起こす。 アイリスが驚く間もなく、ルカの『ウォーター』と『ファイア』が即席の調理ラインを完成させた。


「おい、これを食べろ。サンプルだから無料だぞ。」


 焼き上がった黄金色の芋を、行商人の口に運ぶ。 男は震える手でそれを受け取ると、むさぼるように食らいついた。


「……っ!? あ、甘い……! なんだ、この……熱い活力は……。腹の底から、力が湧いてくる……!」


 男の瞳に、みるみるうちに光が戻っていく。 それを見ていた他の避難民たちも、ふらふらとこちらへ吸い寄せられてきた。


「よし、全員に配るぞ。ただし、忘れるな。この芋の名は『ベニ・ハルーカ』。僕たちはこれから先にあるジミーナ村で、この『奇跡』を量産する予定だ。……クチコミ、頼んだぞ」


 飢えた人々から上がる、涙ながらの感謝の声。 それを背中で聞き流しながら、僕は再び歩き出した。


「ツトム殿……貴殿は、本当に不思議な男だ。慈悲深いのか、それとも強欲なのか……」


経営者プロは、どちらか一方だけでは務まらないんだよ、アイリス」


 僕はスーツの襟を正し、遠くに見える小さな集落――ジミーナ村を見据えた。 あそこが、僕の「異世界さつまいも帝国」の、創業本部になる場所だ。


「……ここがジミーナ村か」


 街道で助けた行商人の男に案内され、僕たちはようやく目的地に辿り着いた。 だが、迎えてくれた村長は、希望に満ちた顔とは程遠い、沈痛な面持ちで僕たちを村外れの広大な空き地へと案内した。


「ツトム様……お話は伺いました。ですが、この土地は『不作の地』と呼ばれておりましてな。何を持ち込んでも、芽吹くことさえ叶わぬ呪われた土地なのです」


 アイリスが心配そうに地面を見つめる中、僕はしゃがみ込み、一握りの土を手に取った。 指先で転がし、軽く舌に乗せる。


「……なるほど。呪いなどではない。ただの極端なアルカリ土壌だな。石灰質が多すぎるのか、あるいは……。どちらにせよ、これでは窒素やリン酸の吸収が阻害される。芋が育たないのは道理だ」


「アル……カリ……?」


村長がポカンと口を開ける。


アイリスもルカも「何を言っているの?」という顔だ。


「さつまいも――『ベニ・ハルーカ』が好むのは、弱酸性土壌だ。……ルカ、魔力供給を最大フルレンジで頼む。土壌の組成パラメータを書き換えるぞ」


 僕は地面に両手を突き、体内の魔力を『営農管理』へと流し込んだ。


「土魔法――『ソイル・リバリュー(土壌改良)』! 陽イオン交換容量を調整、pH値を酸性側へシフトしろ!」


 僕の手の下から、黄金色の光が地中深くへと浸透していく。 白っぽくパサついていた不毛の土が、見る間に水分を湛え、しっとりとした深い黒褐色の「黒土」へと変質していった。


「な、なんということだ……。不毛の地が、一瞬でこれほどまでに命を感じさせる色に……!」


村長が腰を抜かし、震える手で土に触れる。


「アイリス、ルカ。……下準備は終わった。ここからが本番だ」

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