第5話:目覚めた騎士!
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本作はR15対象の[異世界ファンタジー]です。
短いお話ですが、お楽しみいただければ幸いです。
その時だった。 僕たちの目の前で倒れていた銀鎧の騎士の鼻が、ピクンと動いた。
焼き上がった『べにはるか』を小さくちぎり、僕は騎士の口に含ませた。 だが、彼女には自力で咀嚼する力すら残っていない。
(……やむを得ん。ここで一号顧客を失うのは、我が社の損失だ)
僕は躊躇なく、残りの芋を自分の口に放り込んだ。 十分に噛み砕き、蜜と混ざり合ってペースト状になった黄金色の塊。それを、彼女の唇へと口移しで流し込む。
「はぁっ!? ツトム、あんた何してんのよ!! 過剰サービスが過ぎるでしょ、この不潔社長!」
ルカが背後で騒いでいるが、無視だ。これはあくまで『救命措置』である。
すると、彼女の身体がにわかに黄金色に輝き始めた。 ルカの魔力を受けて育った『べにはるか』は、もはや食材を超えた高濃度エネルギー体と化していたらしい。みるみる生気が戻り、彼女の瞼が跳ね上がった。
「……っ、くっ、殺せ!」
開口一番、それか。 「いや、殺さない。僕はただの農業経営者だ」
「しかし貴様! 私に……私に、何をした……っ!」
彼女は僕を睨みつけながらも、その顔を林檎のように赤く染めている。 唇に残る感触と、鼻に抜ける異常なまでの甘い香り。彼女の理性は、屈辱と「美味しすぎる」という本能の間で激しく揺れ動いているようだ。
「応急処置だ。君の血糖値が危険なレベルだったからな。……それより、味はどうだ? 我が社の看板商品、自信作なんだが」
僕はスーツの襟を正し、平然と「営業」を仕掛けた。
「……っ、殺せと言っているのだ! 乙女の純潔を、このような、よくわからぬ……甘美な泥の塊で汚すなど……っ」
彼女は唇を震わせながら、なおも僕を鋭く睨む。だが、その瞳は潤み、頬は緩みきっていた。 口の中に残る『べにはるか』の圧倒的な糖度が、彼女の理性を粉砕しているのは明白だ。
「……甘い。何なのだ、これは。私は王宮の晩餐会で最高級の蜂蜜菓子を食したこともあるが、これほどまでに濃厚で、温かく、心を蕩けさせる味は知らないぞ……」
「それは光栄だ。これは**『ベニ・ハルーカ』**。僕と、助手のルカで作り上げた至高の逸品だ」
僕はあえてルカの正体を伏せ、簡潔に紹介した。 「女神」などと名乗れば、宗教上のトラブルや権力闘争に巻き込まれるリスクがある。今は「優秀なスタッフ」として扱っておくのが正解だ。
「ちょっとツトム! 私をただの『助手』だなんて、格下げしすぎじゃない!? これでも私がいなきゃ……」
「しっ、静かにしろ。……それで、ベニ・ハルーカの味はどうだ、騎士殿」
僕が問いかけると、彼女はハッとしたように姿勢を正そうとしたが、またすぐに力なく肩を落とした。
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