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39歳の平凡な中小企業(さつまいも製造販売)の社長!農業スキルで異世界無双!(1000PV越えありがとうございます)  作者: 一年目の平凡な中小企業の社長


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第35話:ハルとの甘い時間

「楽しんでるようで、よかったでありんす」


 ハルはそう微笑むと、隣に座るツトムに熱い体温を預けるようにペタペタと触れ始めた。


「わっちは……ツトムが好きでありんす。わっちのことは、好きにしておくんなんし」


 ふわりと、抗いがたい香りに包まれながらハルが抱きついてくる。

 いつもなら背後に「冷気」を感じるはずだが、今は3人の規則正しい寝息しか聞こえない。


「ハルさん……」


「ハル、と呼んでおくんなんし」


 一瞬にして枯れ果てた森を救い、自分に命を吹き込んでくれたツトムに、ハルは完全にメロメロだった。


「ツトム……お願いでありんす。ずっとこの森にいておくんなんし……」


 潤んだ瞳で見つめられ、ツトムの心は激しく揺れた。


(正直、昼間に言われるより、この静寂の中で言われる方が艶やかすぎて……厳しい!)


 だが、ツトムはハルの柔らかな肩を優しく押し返し、月明かりの下で儚げに微笑んだ。


「ハル。僕は……魔王のせいで困っている人たちを、飢餓に苦しむ人たちを救わなきゃいけないんだ。だから、一箇所に留まることはできない」


「……っ。ならば、わっちも魔王討伐、一肌脱ぐでありんす!」


「ハル、気持ちは嬉しいよ。でも、この森には君が必要なんだ。せっかく緑が芽吹き始めた今、族長がいなくなったら、また誰かが悲しむことになるかもしれない」


 ツトムの眼差しは、ハル個人への愛以上に、この森の未来を、そして世界を見つめていた。


「ツトム……」


 ハルは再び瞳を潤ませたが、今度はその顔を少し赤らめ、幸福そうに目を細めた。


「ツトムは……自分の欲望よりも、わっちの森を、そして世界を守ると言い退けた。わっちの誘惑にも屈しない、素晴らしい勇者様でありんすな……。本当に、わっち好みでありんす」


 そう言って、ハルはツトムの肩にそっと頭を乗せ、夜が明けるまでその温もりを噛み締めていた。


「……ずっと、ずっと、この時間が終わらなければ、いいんでありんす」


 ポツリと、夜の静寂に溶けるような声でハルが呟いた。 その願いは、朝が来れば自分が「族長」に戻り、彼が「勇者」として旅立つことを知っているからこその、儚くも切ない独白だった。

 ツトムはその言葉を否定することも、安易な約束をすることもできなかったが、ただ静かに、彼女が眠りにつくまでその肩を貸し続けた。

 やがて東の空が白み始めると、足元で眠っていた3人が「ううーん……」と声を漏らしながら身悶えし始める。 ハルは名残惜しそうにツトムの肩から離れると、いつもの「族長」としての艶やかな微笑みを浮かべた。


「おんや。主の仲間たちが、お目覚めのようでありんすな」


「とりあえず、ドワーフの街に馬車を返して、そのまま王都へ向かおう」


 ツトムの提案に、アイリスが不安げに眉を寄せた。


「だがツトム殿、あの迷いの森だ。案内人がいなければ、また同じ場所をグルグル回ることになるのではないだろうか?」


「そうだな。ハルに頼んで、誰か道に詳しい案内役をつけてもらおう」


 ツトムはハルのもとへ向かい、事情を説明した。


「ハル、エルフの森の結界を抜けるために、案内役を一人貸してくれないか?」


「それならば、わっちがその役を引き受けるでありんす」


「えっ? いや、族長の君がそんなに長く森を離れても大丈夫なのか?」


 ツトムの心配に対し、ハルは花の咲くような眩しい笑顔を向けた。


「案ずることはありんせん。わっちは、たった今……族長を辞めてきたのでありんす!」


「……は?」


「以前わっちのところに案内をした義理の妹を、わっちの代わりに新しい族長に据えてきんした。これでわっちは自由の身。主と一緒に、魔王討伐へ行けるのでありんす!」


 あまりにも潔すぎる、というか、あまりにも極端なハルの決断に、ツトムは言葉を失った。


「そ、そういう感じで大丈夫なものなのか……?」


「大丈夫でありんす! さあツトム、これからもずっと一緒でありんすね!」


 ハルの屈託のない、それでいて逃げ場を許さない満面の笑みを前に、ツトムの脳裏には「あの3人」の般若のような形相が浮かんでいた。


(困った……。3人がどんな反応をするか、想像しただけで胃が痛い……)


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