第34話:エルフの森で祝賀会
そんなツトムの背中に、ハルがふわりと寄り添った。
「ツトム、考え込みすぎるのは毒でありんす。……今夜は、わっちの館にお泊まりしておくんなんし」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、三人の鋭い声が飛んできた。
「ダメよ! もう作業は終わったんだから、帰るわよ!」
「そうだ、族長殿にこれ以上の負担をかけるわけにはいかん!」
「さっさと帰って、王都デートの準備をするぞ!」
口々に断る三人に、ツトムは苦笑いして嗜める。
「おいおい、みんな。族長が直々に誘ってくれているのに、易々と断るなんて失礼だろ」
「ツーーーートーーーーーーム!!!!」
ルカが烈火のごとく怒ろうとした、その時。 ハルが扇で口元を隠しながら、艶然と微笑んだ。
「わっちに免じて、どうか。森の復興を祝う、美味しいお料理もお酒も用意してありんすよ?」
「……。た、確かに、そういえば今日はお昼から何も食べてなかったわね」
「食事……か。現地の伝統料理を調査するのも、勇者パーティの務めかもしれん」
「……酒、か。エルフの古酒には興味があるな」
「ご飯とお酒くらいなら、ね……」
と、三人はあっさりと矛を収めた。
「ははは、決まりだな。では、お言葉に甘えて食事をお呼ばれしましょう」
ツトムの言葉に、ハルは「嬉しいでありんす」と目を細める。こうして、エルフの森での賑やかな、そして少しばかり危険な香りのする宴が幕を開けることになった。
エルフの伝統料理は、瑞々しい野菜や果実をふんだんに使ったヘルシーなものだった。
(まるで現代のヴィーガン料理だな……)
ツトムは感心しながら、そこに先ほど収穫したベニ・ハルーカを添え、彩りを加えていく。
「これ、王都でお店を出したら女性に大人気になりそうだな」
「……かなり美味しいわ、これ」
ルカが夢中で口を動かし、グライザもエルフ特製の古酒を煽る。
「この酒も、驚くほど美味いぞ……」
「……しかし、ツトム殿の隣に、なぜかハル殿がぴったりと座っているのが非常に気になるのだが……」
アイリスがボソリと零すと、ルカがなだめるように耳打ちした。
「アイリス、我慢よ! 私たちは一緒に帰るけど、ハルは族長なんだから森を離れられないのよ。勝負は見えてるわ!」
「そうだな……。だが、なぜだろうな。理屈ではわかっているのだが、どうにも解せない」
「俺も、なんだか胸のあたりがざわつくが……まあいい、酒を飲んで忘れちまおう」
宴が深まるにつれ、3人はドワーフの街からの疲れと古酒の回りの早さに、いつしか心地よい眠りに落ちていった。




