第30話:向かうぞ!エルフの森!!
ドワーフの街で、オートカルチの導入に向けた打ち合わせをしていたツトムたちの元に、王からの使者が駆け込んできた。
「勇者様! 陛下より伝言です。この街の東にある『エルフの森』……その自治領からも、ベニ・ハルーカに強い興味を持たれたようで、ぜひ勇者殿を招きたいとの要請が届いております!」
その瞬間、ツトムの背後で3人の女性たちの温度が、氷点下まで下がったのを肌で感じた。
(エルフ……! またこれ以上、女の仲間が増えるのではないか……!?)
3人の脳裏には、新たな「美女エルフ」がツトムに寄り添う不穏な未来予想図が浮かんでいた。
「ツトム! エルフの森なんて、どうしても行かなきゃいけないのかしら?」
ルカがツトムの袖を掴み、上目遣いで、しかし目は笑わずに問いかける。
「要請を受けたのだから、行くしかないんじゃないか? 飢えに困っているのなら放っておけないしな」
ツトムが真っ当な正論を返すと、グライザが溜息混じりに肩をすくめた。
「……まあ、いいんじゃないか。サッと行って、パッと救って、ソッコーで帰ってくれば。居座る必要なんてないしな」
「そうだ! 困っている民がいるなら助けるのが騎士の道! ……だが、ツトム殿。用が済んだらすぐに出発だぞ? よいな!」
アイリスも必死に同意するが、3人とも内心は穏やかではない。 あわよくば「トランス(転移魔法)」で一瞬で済ませたいところだったが、エルフの街はまだ誰も訪れたことがない未踏の地。ルカの魔法は、一度行った場所にしか飛べないのだ。
「仕方ない、今回は馬車で行こう。ドワーフの街で丈夫なやつを借りてくるよ」
馬車が揺れるたび、3人の女性たちによるツトムへの「詰問」が繰り返されていた。
「ねえ、ツトム……。単刀直入に聞くけど、耳の長い女の人って好きなの?」
ルカがジト目で覗き込んでくる。
「いや、耳の長い人なんて会ったことがないから、想像もつかないな」
「エルフは長寿だから、ツトム殿よりずっと年上かもしれんぞ? ツトム殿は、年上が好きなのか……!?」
アイリスも身を乗り出して加勢するが、そこにグライザが冷静に(そして残酷に)火に油を注いだ。
「……だが、エルフは精霊の加護で土壌を調べたり、草木を芽吹かせたりできるという。ツトムの魔法と性質が似ているから、案外、話が合うかもしれないな」
「「なっ……!?」」
ルカとアイリスが戦慄する。性格の不一致どころか、一番の武器である「農業」で意気投合されるのが、彼女たちにとって最大の脅威だったのだ。
そんな騒ぎをよそに、ツトムは窓の外をじっと眺めていた。
「……おかしいな。さっきから同じ場所をグルグルと回っているような気がするんだが」
ツトムがそう呟いた瞬間、馬車がいきなり急停止した。




